ベースモデルに対してBEVシステムを強化し、空力性能・動力性能・操縦安定性を高めた特別仕様車。
世界で最初のクロスオーバーSUVはトヨタの「RAV4」だった。当時、ラダーフレームが常識だったSUVにモノコック構造を持ち込んで、剛性とオンロードの機動性を両立させた。あれは自動車史に残るビッグバンだったと思う。その進化の延長線上にあるのが、EVによるクロスオーバーSUV、レクサス「RZ600e」だ。話題のヨーク型ステアリングとステアバイワイヤの組み合わせに触れた瞬間、「『攻殻機動隊』の世界、来たな」と思った。
なぜ『攻殻』なのか。ドライバーの意思を伝える行為を、極限まで研ぎ澄まそうとしているから。ステアバイワイヤは、ハンドルと前輪が物理的につながっていない仕組み。入力は電気信号に変換されて、モーターが操舵する。そのためロック・トゥ・ロックの回転数も自在に設計できる。「RZ600e」は最大約1.8回転。相当にクイックなのね。
もうこれ、完全にコントローラーですよ。ヨーク形状によって視界が大きく開放されて、少し切り込むだけで車体がスッと応答する。前輪と物理的に切り離されているのに、路面の気配はフレームを通して届く。この「切れているのに届く」感覚のリアリティが、脳に直接触れてくるんだ。
さざ波のようにラインがゆれるドアパネルライト。
普段乗りで、その完成度はさらに明確になる。足元の剛性感は高いのにダンパーは硬さを主張しない。首都高のつなぎ目も入力を受け止めながら、車体の芯だけがしっとり通過していく。回生制御も自然で、アクセルとブレーキの踏み替えがどんどん減り、やがて大きな操作そのものが不要になってくる。操作が意志へと還元される、その速度が異様に速い。
プレイステーション世代なら「ステアリングはもはや回さなくていい」と感じるはず。掌で軽く押し引きするだけで向きが変わるほうが、自然に思える。そのほうが脳からの伝達が速いし、繊細な情報だって直接届けられる。そして気がつけば、物理操作よりも神経接続でクルマを動かしたくなる。これは比喩じゃない。「もっと速く」と脳が要求してくるんだ。
峠に持ち込むと、この感覚がさらに鮮明になる。車重は2トンを超えるけど、自重を正確に乗せながらナローなコーナーをターンする。舵角はギリギリのところでピーキーさを抑えて、操作に自然と寄り添ってくる。
クイックなのに懐が深くて、「もはや義体?」ぐらいの制御の巧さが、このクルマのサイズ感をどこかへ消し去ってしまう。仮想変速のMモードも面白い。F1のように指1本で変速しつつ、ドライサンプV8を思わせる音を伴いながら、速度を「高める」のではなく「整える」感覚のためにある。
リアには目を惹く2段構造のカーボンリアウィングを装備。
クロスオーバーは、オールラウンダーとして人間の生活速度に最適化されてきた。ヨーク型とステアバイワイヤの組み合わせはテスラが先行したが、RZシリーズはそこに路面との対話と電子制御の熟成を加えて、操作が意志へと還元される感覚を初めて完成形として提示したモデルだと思う。
出遅れて見えたレクサスのEV化だけど、意志だけで機械が応答する関係が成立する瞬間を待っていただけなのかも。気がつけば『攻殻機動隊』の世界は、もう現実の操舵感にあったんだ。
レクサス RZ600e F スポーツ パフォーマンス
全長×全幅×全高:4,860×1,965×1,615㎜
モーター:交流同期電動機/永久磁石式
システム最大トルク:536Nm
走行距離:525km(WLTCモード)
駆動方式:AWD(四輪駆動)
車両価格:¥12,440,000
レクサスインフォメーションデスク
https://lexus.jp




