「おはようございます、お世話になります。おはようございます!」
並んで出迎えるスタッフ全員に対して、きっちりと頭を下げつつ、軽快に挨拶をしながら撮影現場に現れた。その姿はまさに芸人・西野亮廣。童話作家、映画の製作総指揮、経営者など、多くの肩書を持っているのは、周知の通り。
「毎朝、6時くらいに起きて、『西野さんの朝礼』という名目で音声メディアで話した後、オンラインサロンで2000文字くらいの原稿を書きます。あと10年くらい続けている、サイン本の注文を取って、書いて、送る作業もする。で、ジョギングに行って、夜中の3〜4時まで、ずっと作業をして、また朝が来る。海外とのミーティングもあるので、日によって作業内容は違いますけど……。いまは、週に2〜3本の講演会と、原稿の締め切りに追われていますね。プライベートの時間はないです」
ショートスリーパーで「日中も全く眠くならない」という彼のクリエイションのポリシーは、人跡未踏の地に繰り出すこと。そのひとつが3月に公開となる、製作総指揮・原作・脚本を務めたアニメーション映画『えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』の鑑賞チケットの手売り。座右の銘が「凡事徹底」という、彼らしい発想だ。
「どうせやるなら、人類が誕生してから、チケットをいちばん手売りした人間になろうと思ったんです。どんな離島でも、買ってくれるなら、僕ひとりで行っています。一般宅にお邪魔して、リビングに上がって、記念写真を撮って(笑)。このほうが、自分でSNSを使って拡散していくよりも、確実に映画の宣伝になります。その場にいた人は全員、僕が手売りに来たことをアップしてくれますしね。もう1年間くらい続けています。いま(取材時の1月末現在)、10万7000枚くらい、手売りしています」
絵本、映画、ミュージカルと、彼がリリースするエンターテインメントは一見すると、ひどく楽しそうだ。ただ、その向こうには常にバジェットとの闘いがある。
「25歳くらいの時から、絵本を描き始めて、3冊も出させてもらったんですけど、全然売れなかった。その時に単につくるだけではなくて、ちゃんと売れるところまで、作者として責任を持とうと思ったんです。子育てにたとえるのなら、出産して、育児放棄をしない」
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企画のために先陣を切って、営業をするリーダーでありたい
いまから約20年前の彼が考えあぐねた結果、たどり着いたのがクラウドファンディングだった。
「いまよりも大きなことをしようと思っても、その活動を止めていたのは、やはり予算でした。当時珍しかったクラウドファンディングをして、ニューヨークで個展を成功させました。その際に自分で予算を集めたら、どこかにおうかがいを立てることもない、なんなら企画書も書かずに、やりたいことができると知りました」
西野が『えんとつ町のプペル』シリーズで手掛けているのは、アニメーション。かつては自身も出演経験のある、実写作品に興味はないのかと尋ねてみる。
「よくその話にはなるんですけど……実写は博打性が高いじゃないですか。アニメならグッズにしたり、公開終了後の運用ができるんですよ。僕は『君の名は。』が大好きなんですけど。あの場所が聖地巡礼になる予測があるとしたら、僕なら土地の不動産を押さえます。それなら後々、お金が入ってくるじゃないですか。僕も会社を経営していて、20歳年下のスタッフもいます。彼らに運用のルートまで用意して、経営のバトンを渡さないと、会社を売却することになる。だから実写化につながる運用の道を見つけたら、動きます」
彼の目標に対する設計は、どこまでも長く、緻密だ。
「将来的には、建物が好きなので、劇場や美術館を建てたいんです。サグラダ・ファミリアやパリの街並みを見ていると、スケールが大きすぎて悔しくなりませんか?僕は勝ちたいと思うんです。ナポレオンもそうだけど、でかいものをつくっている人や風景を、見て見ぬふりをしたくないです」
インタビュー中も、終始笑顔を絶やさず、ユーモアある笑いとサービス精神で私たちを楽しませてくれた。常に謙虚な姿勢でありながら、成功者であり、戦略者であり続ける西野。次は私たちになにを魅せてくれるのか。
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WORKS
映画『えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』

日本アカデミー賞を受賞したシリーズの最新作。少年ルビッチが、大切な友達のプペルに再会するまでの物語。自身の相方の梶原雄太が心を壊した時、帰ると信じて待つことを決めた自叙伝でもあるという。3月27日公開。
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著書『北極星 僕たちはどう働くか』
次々に世間の常識を覆す、ヒットメーカー西野亮廣による最新ビジネス書。金、心、集客、販売など現代社会を生き抜かなければならない全社会人に捧げる基本が、この一冊に集結。
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絵本『えんとつ町のプペル』
童話作家にしのあきひろによる、映画の原作となった絵本。クラウドファンディングで制作費を集め、33人のクリエイターと分業制でつくりあげたことで話題となった。フランスほか、世界12カ国で販売。







