「なぜハチミツ?」 あのランボルギーニが養蜂場を持つ理由、スーパーカーと同じくこだわるは“性能”

  • 文:小川フミオ
  • 写真:Automobili Lamborghini
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このハチミツ、どんな味がするんだろう。クルマ好きはもちろん、それほどでもないひとも、ぜったい興味を惹かれるだろう。なにしろ、ランボルギーニ製のハチミツだ。

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エチケットにランボルギーニのエンブレムがついたハチミツ

ランボルギーニでは年間に430キロほどのハチミツを生産。本社に隣接した「ランボルギーニ・パーク」に設けられた養蜂場から届けられる。

ハチミツをつくる企業は意外に多い。たとえば、半導体企業のTSMC(台積電)は台湾でハチミツをつくっているし、ロールス・ロイスも英国本社の敷地内に養蜂場を持つ。 

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ランボルギーニパーク内の養蜂所

 「なぜハチミツ?」というと、ミツバチは花粉源植物が豊富にあるところでしか巣をつくらない。つまり、ミツバチは、その土地の生態系回復のシンボルなのだ。

ランボルギーニでも同様。サステナビリティ活動の証明といえるのが、瓶に勇ましい雄牛のマークがついたハチミツなのだ。

ランボルギーニといえば、“超”が付くほどの性能と、卓越したデザインのプロダクトで知られている。そこにあって、輝くばかりの製品の背景には、どんな物語があるのか。興味深いではないか。

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本社に隣接してつくられたランボルギーニパークはサステナブル活動の象徴ともいえるもの。

ランボルギーニ・パークは、2010年に企業活動と環境への負荷との関係を探るために開設された施設だ。

「私たちは成長したいし、より大きな存在のランボルギーニをつくっていきたい。しかし同時に、生産が地域や街に与える影響は、常に削減していかなければならない。私たちはこの周辺に暮らしている人間でもあるので、それが重要だと信じています」

そう語るのは、アウトモービリ・ランボルギーニ本社で、最高製造責任者を務めるラニエリ・ニッコリ氏。2025年12月にインタビューで、同社の活動について答えてくれた。

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アウトモービリ・ランボルギーニで最高製造責任者を務めるラニエリ・ニッコリ氏。

「ランボルギーニ・パークでは、7ヘクタールの敷地に1万本を超えるオークなどの樹木を植樹し、ボルツァーノ大学やミュンヘンの大学と連携した科学プロジェクトにもなっています」

この公園は地域コミュニティに開かれており、運動したり走ったりできる場所として、誰でも利用できる、とニッコリ氏。

「私たちは、サステナビリティに関する取り組みを2009年に始め、2014年にカーボンニュートラルを達成しました。いまは10年を超えました」

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プラグインハイブリッド化されたV8を搭載するウルスSE。

最高出力747kW(1015ps)の「レヴエルト」をはじめ、677kWの「テメラリオ」、そしてスーパーSUVを標榜する「ウルス(SE)」をラインナップするランボルギーニ。

新しいモデルは、常に前のモデルを超える性能を有する。おもしろいのは、この「性能」とは、パワーであり最高速であり、同時に環境性能を意味していることだ。

「私たちは将来に向け、工場を拡張していく計画があります。製品面でも、新しいモデルを今後投入します。生産能力を拡大しながら、CO₂を含む排出全体をさらに削減する。これが来年以降の最大のチャレンジです」

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23年に米国のイベントで公開されたプロトタイプ、ランサドールは第4のモデルの方向性を示唆している。

新しいモデルとは、「ウルトラGT」とランボルギーニのステファン・ウインケルマンCEOが呼ぶ2プラス2GT。

2023年に「ランサドール」の名で発表された時点では「28年の登場」とされたが、ニッコリ氏は「27年に出します」とした。

注目点は、ちょっと小型サイズのクロスオーバー型車型になりそうなことと、BEV(バッテリー駆動EV)であること。

「そこに大きなマーケットがあると考えています」と、技術を統括するロウベン・モア氏はかつて私にそう語った。

「(市場のためには)エンジン車、プラグインハイブリッド車、そしてBEVまで生産できるようにしておく必要があります」 

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レヴエルトは6.5リッター12気筒にプラグインハイブリッドシステムを組み合わせた全輪駆動のスポーツモデル。

ニッコリ氏は、車型とともに、ドライブトレイン多様化の重要性を認める。実際、現在のランボルギーニは、エンジン車のウルスに加え、レヴエルト、テメラリオ、ウルスSEはプラグインハイブリッドだ。

「それを別々の場所でつくるのでなく、同じ工場で、同じラインで流して生産するフレキシビリティが(コスト面でも)重要です」

ランボルギーニの顧客は、ほかの超プレミアムブランドと同様、カスタム化を要求する。世界に2台同じランボルギーニは存在しない、などと言われる所以だ。

とはいっても、1980年代までの手作り生産では、年産1万台超のオーダーには対応できないし、品質管理がむずかしくなるのも事実。

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ランボルギーニは熟練工の技術と最新のロボットとを組み合わせた生産方式を採用。

そこで同社では「マニファットゥーラ・ランボルギーニ」なる独自の生産コンセプトを導入している。簡単にいうと、熟練職人の技術と、高効率の生産方式を合わせたもの。

「全面的に生産ラインを自動化することはないと考えています。マニファットゥーラ・ランボルギーニは、常に人の手によるクルマづくりを中心とした考え方です。自動化やデジタル化は、作業者がより良い仕事をするための支援として導入します」 

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素材も色も仕上げも多岐にわたるシートなどの仕上げは熟達した技術が必要とされる。

私も生産ラインを見学させてもらったが、人の手で行う部分が多かったのが印象に残った。

丁寧にレザーの傷をチェックしたり、あるいは手のこんだ刺繍を行うのは、熟練した人に任されている。

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あらゆるカスタマイゼーションに対応するのがプレミアムブランドの使命とか。

たしかに、超プレミアムブランドの生産を観ていると、熟練工の技術に頼る工程が多いのに驚かされることがある。

ロールス・ロイスの人気オプション「スターライトヘッドライナー」を思い出した。天井に星空をつくるため、1000本以上の細い光ファイバーを天井に貼るレザーの孔に通していくのも、人間による作業だ。

車両のプレミアム度が増すほど、熟練した人の手が必要になる。 

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しろうとでは分からない小さな傷も漏らさずチェックする職人技がいたるところで見られる(写真はシート用レザーのチェック風景)。

「手作業が多いほどばらつきも増えるため、訓練や検査などで品質を担保する必要があり、その点ではチャレンジでもあります。そこまでやるのは、お客様が“夢”を買い、満足していただくことがすべてだからです」

プレミアムブランドに求められているものは、環境適合性からカスタマイゼーションまで、幅広い。現在はAIの活用も課題だという。ニッコリ氏の仕事は、ここで終わりということがないのだ。

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左から、デザイン責任者のミウチャ・ボルカート氏、ラニエリ・ニッコリ氏、CEOのステファン・ウインケルマン氏、技術統括のロウベン・モア氏。

そうそう、冒頭のハチミツについて書き忘れたことがありました。販売はしていなくて、従業員にクリスマスプレゼントとして配られるそうだ。うらやましい気がする。

ランボルギーニ

www.lamborghini.com

小川フミオ

モータージャーナリスト

自動車を中心に活躍するジャーナリスト/ライター。自動車誌やグルメ誌の編集長を務めた後、フリーランスとして活動。新車の試乗記をはじめ、グルメ、ホテル、人物インタビューなど、多岐にわたるジャンルの記事を独自の視点で執筆し、雑誌やウェブメディアを中心に寄稿している。

小川フミオ

モータージャーナリスト

自動車を中心に活躍するジャーナリスト/ライター。自動車誌やグルメ誌の編集長を務めた後、フリーランスとして活動。新車の試乗記をはじめ、グルメ、ホテル、人物インタビューなど、多岐にわたるジャンルの記事を独自の視点で執筆し、雑誌やウェブメディアを中心に寄稿している。