こんなスタイリッシュなクルマが出るなんて! そう驚かされたのが、2025年9月にアウディがお披露目した「コンセプトC」だ。

「もちろん発売するし、そのあとアウディ全体のデザインも、同じデザイン言語を使ってなされていきます」
そう答えてくれたのは、アウディ本社の取締役会メンバーで、セールス&マーケティングを統括するマルコ・シューベルト氏だ。2026年1月に来日した彼に、銀座7丁目にある「アウディシティ銀座」で話を聞いた。
昨今のアウディは、このコンセプトCとともに、26年からF1に参戦するとは驚かされた。トピックス満載なのでいい機会だった。
「純粋な形態、精緻さ、堅固さを兼ね備えたアスレチック・ミニマリズムを体現しています」とは、アウディがホームページで、コンセプトCのデザインを表現した文言だ。
手掛けたのは、アウディのチーフクリエイティブオフィサーであるマッシモ・フラチェッラ氏のチーム。

2024年にアウディに移籍する前は、ランドローバーで、当時のチーフクリエイティブオフィサー、ジェリー・マッガバン氏と「リダクショニズム」なるデザインテーマを確立。
要素をできるだけ削ぎ落とした手法で、現行レンジローバーシリーズやランドローバーシリーズを手掛け、業界で高い評価を受けてきたのがフラチェッラ氏なのだ。
戦前のグランプリマシン「タイプC」(1936年)や、第3世代「A6」(2004年)にインスパイアとされるコンセプトC。

ボディは格納式タルガトップ(ルーフの中央部分だけが開くスタイル)を持つ2ドアで、「アウディのレガシーを解釈し、先進的なテクノロジーを統合します」とプレスリリースで解説されている。
アウディがスポーツクーペ「TT」のプロトタイプを、1995年に発表したときと近い驚きを、私はミラノの発表会場でコンセプトCに接して、強く感じたのだった。

「いま、世界各地でユーザー向けのデザインクリニック(車両を見せてフィードバックを集める社内用の催し)をやっていまして、結果は社内と同様、上々です」
シューベルト氏は、コンセプトCから始まるという、新しいジェネレーションが市場にもたらすよい影響を期待しているようだ。
「コンセプトCの発売は2027年を予定していて、もちろんそれまでに多くのエキサイティングな新型車を発売していきます」
25年には、BEV(バッテリー駆動EV)の「A6 e-tron」をはじめ、「A5」と「Q5」というICE(エンジン車)のフルモデルチェンジも日本に導入されている。
「私たちは、日本市場に合うコンパクトモデルも計画していますし、ハイブリッドモデルにも力を入れてます」
成功のカギは多様性にある、とシューベルト氏は強調する。
ただし……これは私見だが、日本におけるアウディにいま必要なのは、より強固なイメージかもしれない。それを述べると、シューベルト氏は「まったくそのとおりです」とうなづいた。
「技術による先進、というスローガンの重要性は、いまもこれからも変わりません。そのよい例が、3月にスタートするフォーミュラ1レースへの参戦です」
アウディは、スイスに本拠地を置くザウバーというチームを買収し、「アウディ・レボリュートF1チーム」を結成。「R26」と名付けたマシンを走らせるのだ。

「F1活動から得られるものは多いのです。ひとつはもちろん、技術的フィードバック。同時にアウディのイメージへの貢献度はかなり期待できます」
26年シーズンからF1はレギュレーションが変更され、MGU-K(運動エネルギー回生システム)というバッテリーを使うシステムの出力は120kwから350kwに引き上げられる。
「私たちが手掛けているプラグインハイブリッド車ならびにBEVのe-tronのイメージアップにつながります」とシューベルト氏。

「F1はいま世界的に人気が高く、若年層や女性層も関心を持っているので、そこでアウディのプレゼンスを上げることが重要です」
アウディのR26の戦闘力が高ければ、「技術による先進」を掲げるアウディのブランドイメージが上がり、それがセールスによい結果をもたらす、という戦略的ロジックなのだろう。
かつてアウディは、1980年に画期的な全輪駆動技術を採用した「クワトロ」を発表し、世界ラリー選手権で圧倒的な性能ぶりを見せつけ、それがブランドイメージに大きく起用した実績を持つ。

「レースは技術の実験室である」なる創業者アウグスト・ホルヒの言をいまも大切にするというアウディ。
1999年に初参戦したルマン24時間レースでは、その後13年の間に5度にわたって、1位、2位、3位を独占してフィニッシュ。驚くべき成績を残したのも記憶に新しい。
F1でも同様のことを期待したい、とシューベルト氏は語る。そこに期待しよう。
















