人気店「ゴールド バー アット エディション」の次世代バーテンダーに聞いた、本日の一杯とカクテル文化の魅力

  • 写真:河内 彩
  • 文:Pen編集部
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岸田茉利奈(きしだ・まりな)●1995年神奈川県生まれ。カフェやバーでのアルバイトを経験したのち、西麻布の名店「Bar Amber」でバーテンダーとして研鑽を積む。その後、ゴールド バー アット エディションのバーテンダーに就任。2025年ディアジオ ワールド クラスにて、史上最年少での栄冠を獲得。

注目の若手バーテンダーと、いまおさえておきたい話題のバーを紹介。今回は、昨年7月に行われた「DIAGEO JAPAN WORLD CLASS(ディアジオ ジャパン ワールドクラス)」で、バーテンダー歴5年にして、史上最年少で日本一の座を勝ち取った岸田茉利奈をピックアップ。2023年の開業初年度から、アジア最高のバーアワード「Asia's 50 Best Bars」に3年連続拡大版リストに選出されている「Gold Bar at EDITION(ゴールド バー アット エディション)」のカウンターに立つ彼女が考える、バーカルチャーの魅力とは。

カクテルは記憶の器。時空を超えて人の想いを伝えたい

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1860年代から禁酒法時代以前にかけて、アメリカでクラシックカクテルが黄金期を迎えた時代にインスパイアされた「ゴールド バー アット エディション」。ゴールドと黒を基調とし、ひときわ輝くカウンターはラグジュアリーながらどこか隠れ家的な当時の酒場を彷彿とさせる。

「ゴールド バー アット エディション(以下ゴールド バー)は、アメリカのカクテル黄金期 『ゴールデンエイジ』をテーマにしています。この時代にゴールドラッシュが起こって、世界中から多くの人がアメリカに押し寄せました。そして労働者たちが採掘場でお酒を嗜んで、たくさんのカクテル生まれたりして。お酒と歴史って、切っても切り離せない関係ですよね」

ゴールド バーでは、古き良きクラシックカクテルやスタイルに着想を得ながら、日本の素材を活かした独創的なドリンクを提供している。なかでも岸田は、バーが大切にしているクラシックカクテルとその歴史に対して特別な想いを抱いている。

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同バーのシグニチャーカクテル「東京ブルーベリーフィズ」は、海外ゲストからの人気高い一杯。カクテルにはすべて東京産の材料を使用している。アールグレイをウォッカに漬け込み、甘酒とブルージャムを合わせた香り高く優しい飲み心地は、誰もが飲みやすいリフレッシングスタイルに仕上がっている。

「私が憧れの人は、1900年代初頭に活躍した女性のバーテンダー、エイダ・コールマンさん。ロンドンのサヴォイホテルのアメリカンバーでヘッドバータンダーを務めた、女性バーテンダーの先駆けです。彼女が生み出した有名なカクテル『ハンキーパンキー』は、喜劇役者チャールズ・ホートリーに『疲れた、なにかかシャキッとするものを』とリクエストされて即興でつくったもの。そんなカウンターでの何気ないやりとりから生まれた一杯が、現代のクラシックカクテルの教科書に載っているのは、すごいことですよね。当時の人の想いや繋がりを再現できるカクテルは、まさに記憶の器。だから私はクラシックカクテルに惹かれてしまうんだと思います」

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自作のカクテル百科事典をつくっていた幼少期

2511_221-a.jpgインタビュー中も、スマートフォンに保存された自作のカクテル辞典を見せてくれた岸田。バー業界における歴史的人物や出来事をスラスラと答えていた。

日々の研鑽は怠らない。「コンペ参加と資格取得を毎年自分に課している」という彼女は、5年というキャリアの中でWCCウイスキーエキスパート、JSAソムリエ、WSET SAKE Lv.2など、酒に関するさまざまな難関資格を持つかなりの勉強家だ。その原点について尋ねると、「子どもの頃から飲めないのにずっとカクテルについて調べていた」と笑う。

「日本の80〜90年代のカクテルはリキュール文化が盛んで、カラフルなものが多く、どれもかわいかった。小さい女の子が宝石やリップとかキラキラしたものに憧れるのと同じ感覚で、ガラケーで撮ったお酒の写真をコレクションして毎日眺めていました。大学生になり、お酒が飲める年齢になった頃、偶然深夜にバーテンダーのドラマを観て、『自分が集めていた“好き”がつながる職業はこれだ』と気づきましたね」

そんなカクテル愛に溢れた岸田だが、大学卒業後は大学の職員として就職。バーテンダーへと導かれたきっかけは、コーヒーだったという。

「当時、一番の趣味はカフェ巡りだったんですが、そこを極めていくと結局、カクテルに辿り着いたんですよね(笑)。コーヒーにグラッパを入れたらカフェコレット、ウイスキーを入れたらアイリッシュコーヒーみたいに、どんどん知りたくなってきてしまって。バーには緊張して簡単に行けないと思っていたので、いろいろなカフェバーに通っているうちにどんどん沼にハマっていきました」

次第にバー巡りへと発展したそうだが、自宅でもカクテルをつくるほどに熱中した。その後、コーヒーを本格的に学ぼうと、カフェでバリスタとしてのキャリアをスタート。その一方で、「Bar LIBRE」(東京・池袋)の清崎雄二郎が主催する勉強会に参加するなど精力的に活動し、短期間で技を磨き上げてきた。

「朝11時に池袋界隈のバーテンダーで集まって、いままで本では知ってたけれども、実際につくることができなかったものを一通り教えていただきました。 そこで知り合った方に、現在は新宿の名店『Ben Fiddich』の鹿山博康がオーナーバーテンダーを務める西麻布にある『Bar Amber』を紹介してもらい、晴れてバーテンダーになることができました」

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本日の一杯「Stay Gold」

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「Stay Gold(ステイゴールド)」は、テキーラで樽熟成したシャルドネのような味わいを再現。ベースとなる「ドン・フリオ1942」が持つバニラやキャラメルのような香りに、コーヒーとパイナップルが甘く香ばしく重なり、青リンゴのような香りを持つ芋焼酎「彩響」がアガベの青さを引き立てる。

そんな彼女のとっておきの一杯が、25年の「ディアジオ ジャパン ワールドクラス」のジャパンファイナルで優勝した際につくった「Stay Gold(ステイゴールド)」だ。

「これまで勉強してきたコーヒーの知識に加えて、彩響(あやひびき)という鹿児島の芋焼酎を使っています。国酒に対する想いを込めているのです」

ベースとなる「ドン・フリオ 1942」は、ドン・フリオの創始者、フリオ・ゴンザレスが初めて蒸留所を設立した“1942年”が名前の由来。岸田自身が「キャリアの集大成」と語るこのカクテルからは、これまでの彼女の歴史、そして未来への想いが込められている。

岸田がいま最も力をいれているのは、「土地固有の素材や、そこで生活する人たちの魅力」を伝えていくことだという。

「日本全国各地の魅力に着目した活動を広げていきたい。ディアジオワールドクラスを経て、ありがたいことに全国各地で仕事をさせていただく機会が増えました。そこで感じるのはその土地固有の素材やそこで生活する人たちの魅力。全国のバーテンダーと一緒に、イベント開催やカクテルブックの制作など、いろいろなかたちで輪を広げ、日本のバー業界全体を盛り上げていきたいです」

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これからバーを愉しみたい人へメッセージ

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「遊び心を大切にしている」というゴールド バーでは、ブラックライトを使用したメニューを用いたり、見た目にも楽しさを取り込むメニューも多い。岸田は「20代、30代のお客様にもお薦めです」と語る。

日本各地の素材の魅力とともに、自身の経験を踏まえて、より広い世代にバー文化を愉しんでもらいたいと語る岸田。ビギナーに向けてメッセージを聞いてみた。

「まずは手始めに、近所のバーから行ってみてください。 そこで知り合ったバーテンダーさんから数珠つなぎに、いろいろな場所のバーに行って、飲んで、食べて、その地域の魅力を知ってもらいたいです。カクテルやバーテンダーとの会話を通じて、少しでもこの世界に興味を持ってもらえたらいいなと思っています」

Gold Bar at EDITION

東京都港区虎ノ門4丁目1−1 東京エディション虎ノ門 1階
www.goldbaratedition.com