【異形の航空機】縁取りだけの翼で空を飛ぶ。実験機「X-65」をボーイング系米企業が開発中

  • 文:青葉やまと
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Shutterstock ※画像はイメージです

米ウェストバージニア州ブリッジポートの航空機製造施設で、珍しい形状の実験航空機「X-65」が製造中だ。翼の翼面部分が存在せず、縁取りだけの構造になっている。

一線を画すダイヤモンド状の翼

X-65はDARPA(米国防高等研究計画局)が開発プロジェクトを主導している。翼面上に可動部品がほぼなく、代わりにノズルから空気を噴射することで操舵する革新的な設計だ。

本機の最大の特徴は、その独特なダイヤモンド形状の翼だ。直線的なエッジと鋭い角度で構成されるこの翼は、従来の航空機とは一線を画する外観で目を惹く。

米技術解説誌のインタレスティング・エンジニアリングによると、CRANE(Control of Revolutionary Aircraft with Novel Effectors:革新エフェクターによる独創的航空機制御)プログラムのテストに「最適な実験機」として、この形状が選ばれた。

現在は胴体部の組み立てが進んでおり、さらに今後、特徴的な設計の翼部分の取り付け段階に移る。

14のノズルが生み出す「見えない操縦面」

ダイヤモンド翼が選ばれた理由は、AFC(Active Flow Control)システムとの相性にある。翼の直線的なエッジと鋭角な後退角により、翼面全体に多様な気流パターンを生成できる。また、ダイヤモンドの形状はスムーズに気流を分離しやすい。

AFCシステムはこの気流分離効果を利用し、空気の流れを調整・活用する。14のノズルから噴射される空気ジェットが乱れた気流を制御し、航空機を意図通りに操縦するための「仮想操縦面」を作り出す。

操縦面とは、航空機の姿勢や飛行方向を制御するために使用される可動式の翼面を指す。エルロン(ロール制御)、エレベーター(ピッチ制御)、ラダー(ヨー制御)、フラップ(揚力増加)、スラット(失速防止)などがある。X-65はこうした従来式の操縦面を廃止し、各部に配置されたノズルから空気を噴射することで、仮想的な操縦面を作り出す。

操縦面を仮想化した理由は

なぜ新方式が求められたのか。テックメディアのニューアトラスは、従来の操縦面には致命的な弱点があったと指摘する。

機械式の操縦面は複雑なシステムや制御装置、構造部材が必要となる。重量や複雑性、コストの観点からデメリットが生じる。さらに、隙間やヒンジ、そして可動面自体が生み出す抵抗により、航空機の飛行効率が低下してしまう。

X-65はこれらの問題をAFCシステムで解決する。例えば対になったノズルのうち、片側を作動させればロールを誘導できる。後方のダウンウォッシュを変えればピッチを制御、垂直面の流れを操作すればヨーを制御できるといった具合だ。

DARPAは従来の操縦面を「補助輪」と表現し、安全上の観点から残している。初期段階の飛行ではこうした補助装置付きで性能のベースラインを測定し、その後AFCシステムでの飛行に移行する計画だ。

2027年後半の初飛行で「航空技術の新たな章」へ

X-65の開発は技術的課題が生じたことで当初予定から遅れているものの、ボーイング子会社のオーロラ・フライト・サイエンシズの施設で着実に組み立てが進んでいる。インタレスティング・エンジニアリング誌によると、初飛行は2027年後半になる予定だ。

同社のラリー・ウィルシング副社長は「アクティブフロー制御の能力を実飛行で実証することを楽しみにしている」と意欲を示す。

X-65は「航空機の飛行方法を再考する重要なステップ」であり、「航空技術の新たな章を開く可能性がある」とインタレスティング・エンジニアリング誌は見る。成功すれば、現在よりも軽量で効率的、そしてステルス性の高い航空機設計への道筋が付くと期待されている。

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