ハイブリッド化した新型メルセデス・ベンツCLA、雪上ドライブでも驚異の走破性【試乗記】

  • 文:小川フミオ
  • 写真:Mercedes-Benz
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クルマのおもしろさというのは、微妙なデザインの差異にある。

たとえば、メルセデス・ベンツだとCLA。Cクラスとだいたい同じボディディメンションで、CLAのほうが少しコンパクト(Cクラスが全長4785mmで現行CLAは4685mm)。

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1.5リッターでもターボと電気モーターを利用して力不足感はまったくなし。写真:筆者

2025年にフルモデルチェンジし、まずピュアEVの「with EQ Technology」が登場し、11月終わりにハイブリッド版が追加。さっそくテストドライブの機会があった。

新しくなったCLAでも、Cクラスとの最大の違いはスタイル。その魅力は変わっていない。

CLAを理解するのに車名を紐解くのも一興だ。CLとはメルセデスにおけるクーペボディ、Aはラインナップ中もっともコンパクトと、それぞれ意味がある。

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周辺ではスキーリゾートとして人気の高いホーホグルグルにて。写真:筆者

ちょっと歴史をおさらいすると、1996年に「CL」というクーペシリーズが新設されたのがはじまりだ。

当初は、2ドアで前席中心のスタイルを意味していた。そののち2005年に「CLS」が発表されて成功。あたらしいセグメントが確立したのだった。

CLSは前後長が比較みじかいルーフ(実際には円弧をえがくような斬新なデザイン)と、4枚ドアの組合せが画期的だった。

普段、前席中心の使い方をしているなら、クーペでも十分。むしろスタイリッシュ。加えて、4ドアだと実用上の利点がいろいろあげられる。

ドアの前後長が短いため、狭い場所での乗り降りが楽。ボディ剛性は高くなるし、買い物など荷物の積み下ろしが容易だし、いざというとき後席の使い勝手がよい、といった具合。

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オプションのスーパースクリーンを装着するとダッシュボードはほぼ全面がモニターになる。

私が乗ったのは、新開発の1.5リッターエンジンを使ったハイブリッド「CLA220 4MATIC」と「CLA200 4MATIC」。EV版の「with EQ Technology」とプラットフォームを共用するのが、新世代の特徴だ。

せっかくなので、パワートレインを収めるスペースは極力コンパクトにして、その分、キャビンを広めにとった設計である。

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室内は期待以上に広々としていて後席の居心地も良好。

「エンジンは小さめのベイに収まることが重要でした」とは、現地で話を聞いた開発担当者の言。実物を見ると、たしかにコンパクトだ。

新しさはサイズだけではない。ターボチャージャーを備え、さらにマイルドハイブリッド化されている。

メルセデス・ベンツのマイルドハイブリッドというと、従来、ISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)やBSG(ベルトドリブンスタータージェネレーター)が知られている。

今回のエンジンはモーターを内部に入れた。そこでモーターだけの走行が可能になったのだ。低負荷時はエンジンをクラッチで切り離し、燃費をかせぐ。

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雪に覆われた峠道でも安定感はかなりのものだった。

私がこのハイブリッドCLAに乗ったのは、オーストリア・インスブルックから、スノーリゾートのホッホグルグルまで。

最高出力120kWのCLA200でも十分、力があり、山岳地帯に入ってからの登坂路できびしいと感じたこともなかった。140kWのCLA220は、1.5リッターとは思えないパワフルさを感じさせる。

モーターだけの走行は、アクセルペダルの踏み込み量をそうとう控えめにしなくてはならず、一般道では慣れが必要。しかし、高速道路では恩恵にあずかれる。

ホーホグルグルでは、新型GLBのお披露目が行われたので、新世代のCLAでもってそこへ出かけたかたちになった。

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メルセデス・ベンツの全輪駆動システム、4MATICはよい働きをしてくれる。

と、当初は思っていたのだが、実は雪山でのドライブは、メーカーが企図していたこと。CLA220 4MATICの全輪駆動システムの性能ぶりを体験させてくれようというのだった。

ルートも用意されていた。オーストリアのホーホグルグルからイタリアとの国境があるティンメルスヨッホ峠まで。

真冬で通行しようという車両もないので一時的な貸し切りとし、雪上ドライブのために使わせてくれた。

ここは、オーストリアにルーツを持つポルシェの広報誌に「最も美しい峠道のひとつ」なんて書かれているほどなのだが、私が走ったときはほぼ真っ白。 

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ティンメルスヨッホ峠は低い気温に加え強風に見舞われたが、走行に支障をきたすことはなかった。写真:筆者

雪雲の切れ間から時おり青空が見えるが、かなりの強風で一瞬明るくなっても、次の瞬間は吹雪という具合。車内の外気温度計はマイナス12度の表示だった。

4AMTICシステムを備えたCLAでは、なんの不安も感じさせず、その道を走っていける。

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標識の向こうがイタリアになるティンメルスヨッホ峠にて(右にあるのは展望台のもよう)。

ガードレールもなく、下は崖の積雪路なんてところを時速100km以上で走るようメルセデスのインストラクターから指示が出る。そのあとはブレーキ。車両の挙動に不安定さはない。

普段使いもよさそうだ。メルセデス・ベンツでは新型CLAをして「エフォートレス」、つまり快適でかつ安全装備が充実で、多くのクルマを任せておける信頼性をうたう。

快適装備の代表的なものが、ダッシュボード全体が1枚のモニターになったような「スーパースクリーン」(オプション)。 

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助手席のモニターでYouTubeにアクセスしてお約束の「Autobahn」(クラフトワーク)をたのしんだ。写真:筆者

ドライバーとしては聴き取りのよい音声コマンドとともに使い勝手のよさを評価できる。助手席の乗員になったときは、退屈なアウトバーンでもYouTubeを観るなどできるので重宝した。

日本での発売は2026年中というが、詳細は未定。

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オーストリアの山岳地帯では降雪。写真:筆者

メルセデス・ベンツ CLA 220 4MATIC

全長×全幅×全高:4723×1855×1468mm
ホイールベース:2790mm
1499cc 直列4気筒マイルドハイブリッド 全輪駆動
システム最高出力:155kW
システム最大トルク:380Nm
0-100km/h加速:7.1秒
価格:未定
www.mercedes-benz.co.jp

小川フミオ

モータージャーナリスト

自動車を中心に活躍するジャーナリスト/ライター。自動車誌やグルメ誌の編集長を務めた後、フリーランスとして活動。新車の試乗記をはじめ、グルメ、ホテル、人物インタビューなど、多岐にわたるジャンルの記事を独自の視点で執筆し、雑誌やウェブメディアを中心に寄稿している。

小川フミオ

モータージャーナリスト

自動車を中心に活躍するジャーナリスト/ライター。自動車誌やグルメ誌の編集長を務めた後、フリーランスとして活動。新車の試乗記をはじめ、グルメ、ホテル、人物インタビューなど、多岐にわたるジャンルの記事を独自の視点で執筆し、雑誌やウェブメディアを中心に寄稿している。