ともに1992年生まれの佐々木隆史と町田和樹の芸人コンビ·エバース。昨年は『NHK新人お笑い大賞』で優勝、『Mー1グランプリ』で4位という好成績を収め、『第46回ABCお笑いグランプリ2025』で王者に輝いた。いまや実力も人気も兼ね備えた彼らだが、ここまでの歩みは順風満帆ではなかった。結成は 2016年。そのキャリアは吉本興業の養成所「NSC」に入るところからスタートするのだが……。
「僕らそもそもNSCに全然行ってないんですよ。馴染めないし、ネタをやっても認められないし。それですねちゃって」と町田。佐々木も「卒業さえすれば劇場に所属してネタはできるので、だったら行かなくてもいいかと思ってたんですよね。でも卒業する時にめっちゃ怒られました」と振り返る。

NSCを不登校になった二人だが、卒業後どうにか劇場への所属が叶った。しかし、それはゴールではなくスタートに過ぎない。
「それまでテレビに出ている芸人さんしか見ていなかったので、NSCを卒業したあと、若手はまず劇場でネタをやり続けて、そこで結果を出したひと握りの人だけがテレビに出られるってことも知らなかったんです」と佐々木。
ネタをつくり、劇場の舞台に立ち、ひたすら漫才をする。それでも、芽が出ない日々は4年ほど続いた。挫折は感じなかったのか。
「本気でやってなかったので、挫折とも違うんですよ。本気でやれば面白いと思ってた。勘違いだったとしても、思い込みのおかげで続けられましたね」と町田。
コンビの主導権を握るのはネタづくりを担当する佐々木。町田を困らせたり追い詰めたりすることで笑いを生むネタに定評がある。
「5年目くらいで漫才の奥深さがわかってきたんです。と同時に、自分たちのスタイルも見えてきました」と、佐々木は振り返る。町田の人間くさい素の部分を活かすようになってから、格段にウケるようになったという。そんな町田の“いじられキャラ”は、いまや漫才を飛び出し、テレビやYouTubeでも、その魅力を発揮している。
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「虚構を入れる時は、過去ではなく未来の話をする」
そして結成から7年、全国放送の「M-1グランプリ2023」敗者復活戦に出場。ここで一気に注目を集める。劇場での人気も上がり観客の数が増えたことで、漫才のウケ方にも変化が出てきた。
「昔からやっていた漫才もウケるようになったんです。あの頃はウケなかったのに。あぁ、間違ってなかった、やっぱり面白い漫才はできていたんだ、って。それがすごくうれしかった」と佐々木。
エバースの漫才の特徴は、リアリティはあるけれどリアルではない、日常会話のようなやりとりだ。
「虚構を入れる時は、過去ではなく未来の話をします。『この前こんなことがあってさ』と過去の話にしてしまうと、それはただの嘘になっちゃう。でも『こういうのやりたいんだけど』みたいな感じで話を始めれば、嘘にはならない。実際、嘘のエピソードとして過去の話をしている時はウケなかったのが、未来の話にしたらウケるようになりました」と佐々木は語る。
活躍の場を広げるが、芸人の醍醐味はどんな時に感じるのか。
「面白いだけでお金がもらえるなんて最高。ようやく、そう思えるようになりました」と町田。
「自分が考えたことだけで身体さえあれば仕事になるというのはいい職業だなと思います」と佐々木。
結成10年目を迎えたいま、改めてお互いをどう見ているのか。
「町田は自分から動かない。絶対に自分から行動しないまま、まわりの環境が勝手によくなって、快適な人生を送ろうとしている男です。自我がないのかな(笑)」
「佐々木はネタをよく書くやつ。最近ますます、ネタ書き人間として極まってます。その言語化能力が自分に向かってこなきゃいいなと。的確なダメ出しとか、絶対にされたくないので……」
M-1王者のリアリティがリアルになる日が楽しみだ。
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PERSONAL QUESTIONS
いま会ってみたい人は?
イチローさん。芸人になってからすごいなと思った方はもちろんたくさんいますけど、子どもの頃、あのピュアな気持ちで憧れた人はやっぱりレベルが違うんですよね。(佐々木)
いま買いたいものは?
船が買いたいですね。車もバイクも道路を走るのは危険じゃないですか。海ならまだ。免許はないですけど、船に乗って貝を食べに行きたい。とにかく貝が好きなんで。(町田)
今年ハマったコンテンツは?
『No No Girls』。オーディション番組って、女性の方が純粋に歌やダンスが好きで頑張ってる気がする。ちゃんみなのアドバイスは芸人にとってもめっちゃタメになります。(佐々木)
日々のルーティンは?
家に帰ったら必ずクエン酸飲料を飲んで、疲れがとれると言われているパジャマを着て、快適な室温にして、大谷翔平と同じベッドで寝ます。効率いい回復にこだわっているので。(町田)
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PICK UP
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いま注⽬したい各界のクリエイターたちを紹介。新たな時代を切り拓くクリエイションと、その背景を紐解く。






