“怠け者”の革靴に、モダンな機能性を

長く続いたスニーカーブームの次に、いま再び注目を集めているのが、正統的な佇まいを持つ革靴だ。その中でも特に人気を博しているのが「ローファー」である。

そもそも「ローファー（loafer）」とは、英語で“無精者”“怠け者”を意味する言葉。靴紐を結ばず、容易に脱ぎ履きできることからこの名が付いたといわれている。『男の服飾事典』（婦人画報社）によれば、ファッション史に初めて登場したのは1920年代。英国で一種の室内履きとして考案されたのが始まりで、やがて流行に敏感なロンドンの紳士たちがカジュアルシューズとして愛用。1930年代にはアメリカへ、さらに1940年代には全米へとそのブームが広がったと記されている。

そんな長い歴史を持つローファーが、いま新たな進化を遂げている。クラシックなデザインを踏襲しながらも、アッパー素材やソールに機能性を取り入れた“ローファースニーカー”と呼ばれるモデルが登場したのだ。「スニーカーローファー」や「スポーツローファー」とも呼ばれ、中には「スノーファー」や「スニーファー」といった造語で紹介されることもある。クラシックな雰囲気を保ちながらも履きやすく、カジュアルにもドレスにも対応できる。まさに時代のニーズに合致した、新世代のローファーである。

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即完売が示した、新カテゴリーの可能性

この“ローファースニーカー”というカテゴリーの先駆けとして挙げられるのが、ニューバランスの「1906L」だ。初登場は JUNYA WATANABE MAN の2024年秋冬パリコレクションのランウェイ。発表直後から大きな話題を呼び、発売と同時に即完売。その後、同年9月に正式なインラインモデルとしてリリースされたが、抽選販売となるほどの人気で、現在も入手困難な状況が続いている。

「1906L」というモデル名を見てピンとくる人は、かなりのニューバランス通だろう。「1906」は、同社がアメリカ・ボストンで創業した年に由来する。もともと扁平足やアーチサポートを補正する矯正靴メーカーとしてスタートしたニューバランス。その創業年を冠した「1906」は、2009年に本格的なパフォーマンスランニングシューズとして登場した。ハニカム状のメッシュアッパー、反発性と衝撃吸収性を兼ね備えた「N-ergy（エナジー）」、着地時の衝撃を緩和する「ABZORB（アブゾーブ）」など、当時の最新技術が結集していた。

その後「1906」は一度生産終了となるが、13年後の2022年に“再構築”を意味する“R”を冠して「1906R」として復活。2000年代を象徴するスニーカーとして人気を博し、数々の派生モデルを生み出してきた。

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名作「1906」を昇華させた、ローファーの進化形

今回紹介する「1906L」は、その派生モデルにあたる。アッパーデザインは「1906」をベースにしつつ、シューレースを廃してローファースタイルに仕上げている。複雑にカットされたサイドのオーバーレイデザインには、オリジナル「1906」の意匠が息づいており、シリーズの新たな可能性を示す一足と言えるだろう。

そして2025年11月には、アッパーに艶やかなクロコダイル型押しレザーを採用した最新モデルが登場予定だ。ソールを含めたオールブラックのデザインは、これまで以上に洗練された印象を放ち、大人の足元を一層引き締める。テーラードアイテムとも好相性で、ドレスアップにも対応できるローファースニーカーと断言できる。正統と機能の融合———「1906L」は、まさに現代にふさわしい“名品ローファー”ではないか。

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