【53年分のユーミンの歌声が結集】 松任谷由実40枚目のアルバムがついに発売! 2022年NHK紅白歌合戦での挑戦を経て辿り着いた先とは

  • 文:Pen編集部
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今回16年ぶりの視聴会を実施したというユーミン。

ユーミンこと、松任谷由実40枚目のアルバムとなる『Wormhole / Yumi AraI』が11月18日にリリースされる。発売に先駆け、109シネマズプレミアム新宿にてPREMIUM試聴会&トークライブが行われた。

アルバムタイトルの「Wormhole (ワームホール)」とは、異なる時空や多次元をつなぐトンネルの意。そのコンセプトを表現するため、今作ではクロノレコーディングシステムと名付けられた独自の制作手法を導入。荒井由実時代から松任谷由実時代に及ぶ膨大なボーカルトラックを当時のマルチテープから抽出し、それを音声合成ソフト「Synthesizer V」にラーニングさせることで、第三のユーミン声を生成した。

ユーミンといえば、過去にもデビュー50周年を迎えた2022年に「NHK紅白歌合戦」で、最新のAI技術で蘇ったAI荒井由実と「Call me back」を披露。当時も大きな話題を呼んだ。あれから3年。再びAIユーミンと向き合って、彼女はなにを感じ、なにを思ったのか。

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歌い手、作詞家、編曲家として、あらゆる自分の可能性を感じた

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試聴会にはユーミン、プロデューサーの松任谷正隆、ミックスエンジニアのGOH HOTODA、「Synthesizer V」を開発したプログラマーのKanru Huaが登壇した。 写真:上飯坂一(以下同)

本作を携えたライブツアーに向けて準備中だという彼女。アルバムの楽曲制作について、尋ねられると「ライブツアーに向けて、このアルバムの楽曲たちを肉体に落とし込むのに、先日までどうしたらいいんだろう? という状態だったんですけど。 ようやく数日前にストーンっと体に入りまして。AIと共生できたという手応えがありました」とニッコリと笑った。

ソロアーティストとしてデビューするまで、作曲家志望であったユーミン。AIを用いたアルバムに制作過程について尋ねられると「今回は、“誰が歌うのか”ということを取っ払って制作しました。 まず作曲家として自由につくってみたのですが、初期衝動をすごく感じて! 長い間やってきて、初期衝動が起こるっていうのは、自分でもすごいことだなって思ってます」 と興奮気味に語った。

今回AIを使用しているのはボーカルのみだが、作詞において、AI(ChatGPT)の可能性を試したという。

「収録曲の『岩礁のきらめき』の歌詞制作の過程においてChatGPTに『あなたは松任谷由実です』というコマンドを与えてつくってもらいました。しかし、まったく新鮮味がなくて。 創作っていうのは、やっぱり自分にとって『衝撃だな』思うことが、次のフレーズを持ってくるので。人の心を動かすのは人でしかできないという確信を得ました。これも私の見解なのだけれど、日本語って特に行間とか間とか…それが特に音律と一緒になったときに、その隙間にたくさん情報がある。自分がなくなってしまったら、飲み込まれてしまうんで。自分がしっかり強くあることが、AIと共生できるコツかな、と思いました」

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「フィジカルに落とし込むために体力づくりが欠かせない」とボイトレをはじめ、さまざまなトレーニングに励んでいるという。 

一方で「ハーモニーとかもボーカルの考え方っていうのは、本当にこれからまだまだあるなって感じがしました」 と、アレンジについては、より表現の幅が広がるのではないか、と大きな期待を抱いているようだ。

また、夫でありプロデューサーである松任谷正隆も、この制作を通して編曲について表現の可能性を感じていると熱く語った。「僕も同感。 今回やったようなプロセスは、ほかのアーティストもみんなやると思う。  いろんなものがコラージュできて、すごい勢いでこんなにも発展していくから。気軽に自分の声をラーニングさせることができるようになるだろうし、そういうソフトにも発展していくだろうし。誰もが音楽の可能性を広げられると思う」

アルバム発売後、間も無くライブツアーがスタート。楽曲にとどまらず表現の概念を一新し、ますます進化がとまらないユーミンの最新楽曲とパフォーマンスが楽しみだ。

松任谷由実『Wormhole / Yumi AraI』

www.yuming-wormhole.jp