3万5200円は高くない! 入手して気づいたOn「Cloudmonster Hyper PAF」の凄さ

  • 写真・文:一史
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皆さん、覚悟はよろしいですか!?
いまからOnのネガキャンをしちゃいますよ!!
あ、いえ、この先にOnの大絶賛コメントを並べますので、最初にちょっとネガティブにしてバランスを取っておこうと思いまして……。
Onが描くアスリート世界と、自分好みのスニーカー世界にややズレがあるという話をするだけなのですけども。

メディアでスニーカー記事をよくつくっている者です。
ですが実はこれまでOnを所有したことがありませんでした。
というのも、主な仕事のフィールドがファッション界隈。
街履きでカッコいいか、服装の一部になるか、一日過ごして快適かどうか、といった観点でスニーカーを判断しています。

いま愛用している普段使いブランドは、サロモンとアシックス。
サロモンはトレイルランニング用、アシックスはロードランニング用で、ともに2,000〜10年代復刻系。
それぞれ数足を履き回している日常です。
これには仕事の事情も大きく絡んでいまして、サロモンとアシックスならファッション関係者にダサい人と思われないから。
現代における鉄板のお洒落ブランドなのです。
ブランドから試し履き用としてギフトでいただくこともあり、気持ちが引き締まります。
両者とも本当にいいシューズですから、ポジティブに宣伝したくなる存在です。

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ではOnはどうでしょうか?
とにかくいい評判をよく聞きます。
走りでも歩きでも最高に快適であると。
でも!
Onには街着と組ませやすいシューズがほとんどないんですよね。
スポーツウェアとの相性に特化しています。
街で見かけてもビジネスパーソンの通勤用、もしくはテック系好きな若い層という印象。
圧着技術やレーザーカットによるハイテクでロゴマークを目立たせたルックスは、東京的な大人ベーシック、古着などの温もりのある服に馴染みにくいのです。

さらにオン・ジャパンからメールで送られてくる配信ニュース情報もスポーツ選手のイベントだったり、ランニングシーンでのトピックだったり、ファッション性をアピールするものが皆無。
(今どき珍しくスポーツ特化の姿勢)
「ロエベとのコラボも前ディレクターのジョナサン・アンダーソンが私的に愛用していることから生まれた企画だったしなあ」との思いもあり、Onとは距離を感じてチェックが後回しになっていました。

そんな者がついにファーストOnをゲット!
ロゴマークが小さく街履きが似合うルックスを気に入り、Pen Onlineでニュース記事にしたシューズ。
その後発売日を迎えてほしい気持ちが高まり、試しに公式オンラインストアを見てみたら自分サイズが残っていてポチりました。

商品名は「Cloudmonster Hyper PAF」。
35,200円かぁ……。
Onのなかでも最高峰のお値段。
でも抵抗なく買ってしまったのは、最近のナイキの値段が高すぎて感覚がバグってたんでしょうね。
クラシックな復刻版のジョーダンシリーズが3万円するじゃないですか。
比べると履き心地がいい(はずの)Onにこの金額払ってもいいのでは、と。
(10年前ならそこそこ上質な革靴買えた価格ですけど)
「コーデを工夫しなくても洒落見えする黒白シューズは使い道が絶対にあるはず」と自分を納得させたことも購入を後押ししました。

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結果。
ヤバい。
凄すぎる。

初めて歩き回ったとき、つま先でぴょんぴょんと飛び跳ねてしまった。
ヒールで飛び跳ねても安定感がまったく同じ。
凄すぎる。

アッパーが目の詰まった滑らかな素材で、必要な箇所だけ通気性がいい粗い素材に切り替えた凝った構造。
シリコンプリントの滑り止めつき靴紐に至るまで、すべてが特別な高級感。
凄すぎる。

注目の韓国ブランド「PAF」とコラボして仕上げた、Onのロゴマークをミニマルにしたモードなルックス。
凄すぎる。

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入手して歩いてみるまで、このシャチのような黒白バイカラーのデザインが機能と人体工学に基づくものと気づきませんでした。
「Onにしては珍しくカッコよさ優先」と考えていて。

大きくカーブを描くつま先は、足を柔軟に曲げるためのもの。
タン中央のV字カットは、足首の曲げを妨げない工夫。
補強も含め必要な箇所に必要なパーツを取り付け、一切の無駄を感じさせません。
前足のミッドソールの白部分は、黒部分と異なるクッション素材。
単なる色替えではないんですね。

競技用ランニングシューズならアディダスの「アディゼロ」シリーズのスピード用1足、ジョギング用1足を所有しています。
アディダスの走りのフラッグシップですから、見事にハイテクな工夫に満ちています。
ただ美意識とは少し異なる、AIがつくったような実用主義の印象です。
もちろんスポーツ用は機能こそが正義。

一方でOnのこのシューズには、人間が真剣に向き合ってデザインしたと感じる体温があります。
製造工程は最新テクノロジーであっても、それ以前に細部まで徹底的に「これで正しいのか」と悩んだかのような……。
高機能のままに美しくラグジュアリーな満足度の高いシューズを生み出そうとする心意気が漂っているのです。

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インソールの通気確保の穴開きもS字カーブですね。
足裏の汗腺の多い箇所なのでしょうか?

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アウトソールには摩耗を防ぐ固めのゴムが貼られてます。
土踏まずの2箇所だけゴムがありません。
ここがめちゃめちゃ柔らかいのですが、耐久性は大丈夫かな?

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クッション力と反発力は評判通りの素晴らしさ。
適度に柔らかく、しっかりと足を包みます。
長く歩き続けてもその印象は変わりません。
自然な足運びに対応したシューズです。

ただ自分には柔らかすぎるインソールを、固いヒールサポートつきのTENTIAL社のものに交換しました。
足裏をぐにゃっと沈ませずに安定感を高めるためです。
厚底ふかふかのホカをめちゃめちゃ固いインソールに交換して「歩きやすくなった!」と喜んでる人間ですから、このバランスが自分好みということです。
大半の人はデフォルトで満足でしょう。

そしてこのシューズ、
On公式オンラインストアにまだ在庫があります。
ただし、
ここに紹介した黒白モデルは全サイズ完売。
残ってるのはグレーバージョン、白(ベージュ)バージョンの2色です。
白はほぼフルサイズ、グレーは26.5ccm以下ならありますが(25年10月21日現在)、ほしい人は早めにアクセスするほうがよさそうです。

ファッションブランドとの限定コラボ品はすぐ即完しそうなものですがなぜ残っているのしょう?
まず値段の高さがネックのひとつでしょう。
Onコラボに詳しい人は、PAFが2024年にOnと初めてコラボしたモデル(28,380円)と型がほぼ同じなことも二の足を踏む理由かもしれません。
(クッション力がややアップした程度の違い)
PAF側がつくったと思われるイメージビジュアルが、アジア(韓国?)の普通の中学生男子のような子どもが制服姿で履いてたり、主要ターゲットと外れているのも購買欲に影響を与えている気がします。
グラフィカルなOnのデザインに惹かれる人、高い価格でも買う人が好むイメージと乖離してるんですね。

それでも!
Cloudmonster Hyper PAFに、On初心者のわたしがノックアウトされた事実は変わりません。
皆さんも気になったなら公式オンラインストアを覗いてみましょう。
選ぶサイズはハーフサイズアップがお薦めです。
大きめを選んでおけばインソールを重ねたり調整できて安心ですから。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。