【世界一長い爪】34年かけて6メートルに。ギネス認定男性の驚異の人生「雨に濡れると折れる」

  • 文:青葉やまと
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Shutterstock ※画像はイメージです

34年間爪を伸ばし続けた、ベトナムの男性。両手の指の爪を足し合わせたその長さは、キリンの身長を超えるまでに至る。長く折れやすい爪を大切に守り通した甲斐あって今年9月、ギネス世界記録に認定された。

キリンの身長を超える594.45cmの爪

ベトナム・ナムディン省に住む67歳の画家、ルー・コン・フエンさん。その爪は、もはや人間の身体とは思えない長さになっている。両手から垂れ下がり、複雑にねじれた10本の爪の合計は、594.45cm。キリンの成獣の背丈よりも長い。

壁画の制作で生計を立てるフエンさんは、作業中に何度もカラフルなペンキが飛び散り、長い爪に付着する。色とりどりの点で彩られた爪は、それ自体が一つの芸術作品のようだ。

 

ギネス世界記録はフエンさんの村を訪れ、彼の爪の正確な長さを測定した。不規則な螺旋状に垂れ下がる爪を正確に測るため、ギネスの認定員は柔らかい紐を使い、ねじれた爪の曲線に這わせて一本ずつ長さを写し取っていった。ギネス編集長のクレイグ・グレンデー氏は、「フエンさんの爪を測定するのは簡単ではなかった」と語る。

こうして明らかになった長さは、左手の爪だけで合計388.85cm。右手は205.6cmあった。特に長かったのは左手の親指の爪で、127.5cmという長さはそれだけで4歳の子供の身長ほどになる。

雨に濡れるだけで折れてしまう

6メートル近い爪と共に暮らすフエンさんの日々は、苦労の連続だ。フエンさんは生活の中で、爪を守ることを何よりも優先している。

中でも気をつけなければならないのが、雨だ。ギネス世界記録に対してフエンさんは、「雨が降ったら、爪が濡れないよう気をつけなければなりません。濡れると柔らかくなって、すぐに折れてしまうのです」と説明している。

人混みも危険だ。「誰かがぶつかったら、間違いなく折れます」と、繊細な爪と共に生きる苦労を語る。

着替えも一人ではできず、袖に手を通すだけでも、妻のティ・トゥアンさんの助けが欠かせない。ベトナムのニュースサイト「vgt.vn」によると、ボタンを留めることやボトルの蓋を開けることさえ難しく、生活のあらゆる場面で妻の手助けが必要だという。

フエンさんは「妻のように支えてくれる人がいなければ、決してここまで維持できませんでした。彼女は本当に頼もしい存在で、何でも手伝ってくれます」と感謝の言葉を述べている。一風変わった行為を理解し、支え続ける家族がいたからこそ、世界記録は生まれた。

シャーマンだった父への憧れがきっかけ

フエンさんが爪を伸ばし始めたのは、シャーマンだった父親への憧れがきっかけだった。単に見た目を真似したわけではなく、精神面で近づきたいとの願いがあったという。

その後、教師を目指した時にも、画家に方向転換した時にも、爪への愛着は変わらなかった。「より威厳のある姿になろうと、爪を伸ばし続けました」と語っている。

「それ以来ずっと伸ばし続けて、どんどん長くなりました。正直なところ、もし切ってしまったら、心も体も本当に落ち着かなくなり、気力を失ってしまうでしょう」という。爪は身体の一部であると同時に、欠かせない相棒のような存在だ。

 ギネスのグレンデー編集長はユーチューブの動画で、爪は精神と密接な関わりがあると指摘する。

「1960年のギネスブックに記録された最初の長爪記録の保持者は、名前の特定されていない中国の僧侶でした。爪には確実に精神世界との結びつきがあり、フエンさんもその伝統を受け継いでいるのです」

フエンさんの描く美しい絵と、長い爪を垂らしながら巧みに筆を扱う技術に人々は感心し、壁画の作業中にはよく人だかりができるという。

「否定的な反応をする人はありません。ただただ『どうやってそんな長い爪で上手に絵を描けるのか』と驚いてくれます」とフエンさん。

父への憧れから始まった長い爪は、今や彼のアートパフォーマンスの盛り上げ役となり、芸術家としての存在感をひときわ際立たせている。

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世界一長い爪の男。

 

 

https://www.youtube.com/watch?v=zrgETIp1nrA