いま静かに、しかし着々と勢いを増している色がブラウンである。トレンドに敏感な女性たちの動きは男性より早く、多くのブランドが店頭のディスプレイでブラウンの服を打ち出している。「紅葉の秋に茶系が並ぶのはいつものこと」と思うかもしれないが、今年の勢いは少し事情が異なるようだ。
世界的な色の権威であるパントーン(PANTONE)社が、2024年に25年のトレンドカラーを「モカ・ムース」と発表した。明るめでやや赤みのブラウンが世界中で人気になると予想したのだ。欧米人とは色彩の趣味が異なる日本でも、確かにブラウンはフレッシュな色に感じられる。いまこそ毎日の装いに取り入れたい。
とはいえブラウンは穏やかなだけに、やや着こなしが難しい色。都会的に着るにはアイテム選びが鍵になる。そこで今回は装いに1点プラスで洒落見えするモダンなアイテムを探してきた。アウターからスニーカーまでのラインナップを前編、後編の2回にわけてお届けしよう。
ファッショニスタを魅了するサロモンがブラウンをまとった
ブラウンを楽しむ第一歩はシューズから。全身真っ黒な服装でも、足元を茶系にするだけで印象が柔らかくなる。革靴よりスニーカーのほうが洒落見えさせやすいかもしれない。茶系の革靴はクラシックな印象になりやすく、現代的な服装との合わせが難しいからだ。スニーカーなら着こなしの自由度が高まる。
上写真はエッジーな感性の人が好む大人気のサロモン。モデルは定番の「XT-4」で2025年冬バージョンだ。ブラウンカラーをまとい大人のシックな装いと調和する仕上がり。このシューズならトラッドなウールツイードのパンツにも合いそうだ。タンスの奥から引っ張り出したビンテージを新しい感性で着られるかもしれない。
深いブラウンのコーデュロイが大人のリラックス心に響くスリッポン。突起が並ぶラギッドなソールがモダンで、クールさも漂うシューズになっている。ソールが黒だから黒のパンツと組ませて色合わせして、ブラウンをチラ見せする着方も楽しめそうだ。
インソールがフェルトになった冬仕様で、サイドにネオプレンのゴムつき。スキー用品がルーツのフランスのサロモンらしく、起伏のある山間部でも歩ける構造だ。自宅周辺のワンマイルシューズにするだけではもったいない活動的なスリッポンである。
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アウターでもインナーでも自由自在なプルオーバー
ブラウンをモダンに着たいなら、化繊のアイテムを選ぶのが近道だ。天然素材だとクラシックに見えてしまう服でも、現代的な化繊に置き換えるとイキイキと輝いてくる。
ここに掲載したのは日本の実力派デザイナーズのクルニの一着。化繊のプルオーバーでシャツ、ライダーズ、ブルゾンのディテールをミックスさせた個性派だ。レザー調の黒パーツが服に艶っぽさを与え、レザー流行りの今年らしいニュアンスに結実している。
ポケットの機能力を活かしてアウターにするもよし、真冬のコートのインナーに用いるもよし。真夏を除く3シーズン着続けられ、合わせるパンツもスポーツからトラッドまでこなす万能選手である。
英国調のパンツをリメーク感覚でモダンに
ワードローブにブラウンを取り入れる手軽な方法は古着店に行くこと。英国の伝統的な織りや柄の生地の服が、値ごろな価格でところ狭しと並んでいる。思わずテンションが上がるが、そこで一歩踏み留まるのが現代の大人の新常識。クラシックな服が現代的なお洒落として通用するのかよく考えよう。どんな服でも我が物にできる着こなし自慢の人は別として、そこまで自信がないなら英国調に捻りを加えたモダンな服に目線を移すのがお薦めだ。
掲載のパンツはベテランデザイナーによる新ブランドのサルマンの一本。英国調生地でイージーパンツを仕立てている。光沢生地のサイドの切り返しラインが、スポーツのトラックパンツのラインのようであり、フォーマルパンツの側章のようでもあり。アディダスのサンバやプーマのスピードキャットなどの薄底ロープロシューズがよく似合う、古着リメーク感覚のパンツだ。
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ホカのリカバリーシューズで冬の足に温もりを
中綿入りで温かいスリッポンは、いまや冬のワードローブに定着したシューズ。ルームシューズのまま外出するような気楽さが心地いい。
ファットシューレースをアッパーに配したボリューミーなストリート感が評判を呼び、23年の初登場時に即完したホカ「オラプリモ」。同モデルが今季にブラウンカラーを搭載して新たな装いを見せた。野山でのランニング後のリカバリーシューズとして開発されたものだけに、足入れのふわふわな感触とクッション力はまさしくホカだ。流行中のワイドパンツを足元で受け止めるボリューム感だが、ジョガーパンツのような裾絞りパンツで目立たせるのもいいかもしれない。デザイン力が高いこのスリッポンを着こなしの主役にしてみよう。
ミリタリー&ダウンの贅沢ブルゾンで真冬を乗り切る
着こなし難易度がやや高いブラウンも、テック系ウェアなら都会的な装いに自然に馴染む。いつものカジュアルなファッション感覚のまま品よく印象を変えられるテック素材に目を向けたい。
ビンテージテイストが得意なヘリルが今季リリースしたミリタリージャケットが、アイテム選びの最適解のひとつになりそうだ。ベースモデルは往年の「G8」(通称WEPジャケット)。ミリタリー好きの間ではMA-1と双璧をなす人気のフライトジャケットだ。オリジナルに忠実なディテールに加えて、中綿がダウン90%、フェザー10%で防寒性も万全。着心地もふわりと軽い。色がボルドー系のブラウンだから、フライトジャケット+デニムの王道コーデでも大人っぽさを演出できる。ブルゾン自体の注目度も高まるなかで、今季ヘビロテしたい秀逸なテック系アウターだ。
Salomon/サロモン
ON TOKYO SHOWROOM/ジョン リー
TEL:03-6427-1640
cullni/クルニ
www.instagram.com/cullni/
salman_ecboutique/サルマン
www.instagram.com/salman_ecboutique/
【HOKA公式】オンラインストア/ホカ
herill_official/ヘリル

ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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