【戦争みたいな味がする】“食の記憶”が語る、母の過酷な運命とコリアの悲劇

  • 文:瀧 晴巳(フリーライター)
Share:

【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】
『戦争みたいな味がする』

FB-03.jpg

グレイス・M・チョー 著  石山徳子 訳 集英社  ¥3,080

母親がたどった過酷な運命をコリア系アメリカ人社会学者の娘が紐解いた回想録。精神を病んだ母親は、脱脂粉乳には決して手をつけようとしなかった。彼女にとってそれは戦争に翻弄された人生を思い起こさせるものだったのだ。日本で生まれたのに日本を追われ、分断された故国コリアでアメリカ人と恋に落ちて故国も追われ、渡米するがアメリカもまた安息の地ではなかった。ヤン・ヨンヒ監督の映画『スープとイデオロギー』を思い起こす。ひとりの女性の言葉にならぬ想いを食の記憶が物語っていく。