【シネマティック・ソウルの新境地】リオン・マイケルズが描く、多国籍な音の旅

  • 文:山澤健治(エディター)
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【Penが選んだ、今月の音楽】
『24 HR SPORTS』

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1982年に生まれ、NYブルックリンを拠点に90年代後半から活動を続けるリオン・マイケルズ率いるシネマティック・ソウル・グループ。2005年のデビュー以来、インストゥルメンタル・ファンク&ソウル・ムーヴメントの先頭に立ち活躍。9月5日に5作目となる『24 HR SPORTS』を発表した。

アメリカは国防総省を1949年までの名である戦争省に改称する気満々だ。戦争を美化する傾向はここ日本でも高まりつつあるが、もう一度過去と向き合い、正しい歴史観を身につけるべき時が訪れた警鐘と捉えたい。

過去の学びを現代、未来に活かす。そんな真っ当なことを音楽の世界で積み重ねてきたのが、昨今のヴィンテージ・サウンド・ブームを牽引する絶好調男リオン・マイケルズだ。ニューヨーク市で育った彼は、幼い頃からジャズやソウル、ヒップホップの洗礼を受け16歳でプロデビューを果たした早熟の人。ヴィンテージ・ソウルの重要レーベル、ビッグ・クラウン・レコーズ主宰者にしてマルチ楽器奏者、ソングライターであり、ノラ・ジョーンズ作品でのプロデュース業ではグラミー賞の栄誉に輝くなど、まさに世界中の音楽ファンが注目する才能である。

敬愛する60〜70年代のサウンドを現代の音楽として表現する、そんな彼のこだわりが凝縮したグループがエル・マイケルズ・アフェアーだ。これまでも作品ごとにヴィンテージ・ソウル、ターキッシュ・ファンク、ザ・ルーツのラッパー、ブラック・ソートとのヒップホップなどに挑戦してきた彼だが、新作『24 HR SPORTS』では、従来のインスト中心の構成より歌モノを増やし、国際色豊かなゲストとともにサイケやアフロも取り込む、モダンでローファイな“シネマティック・ソウル”を描いている。

プロデュースした縁のあるノラやクレイロのほか、ガーナ人のフローレンス・アドーニ、ブラジル人のホジェー、坂本慎太郎などが個性と母国語を持ち寄った歌曲は万博のような楽しさで心に届くものばかり。杉並児童合唱団の歌声をフィーチャーした曲など、インスト曲も映像的で歌心があふれる。時代も国境も超え、世界が共鳴する傑作だ。

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