フットボールシューズがファッションへとまだ広く浸透していなかった頃。ジル サンダーはいち早くその可能性に目を向け、プーマがその土台を担うことで、両者のコラボモデルは先駆け的な存在となった。そしていま、かつての熱を再び灯したコラボレーションが、洗練を纏って蘇る。

ここ数年、ファッションの流れはブロークコア(Blokecore)を発端に、次第に“足元”へと波及している。いまやファッショントレンドの最前線にはフットボールカルチャーが深く根付いており、カジュアルブランドのみならず名だたるハイブランドも次々と参入。いま最も注目されるスタイルといっても過言ではない。
その屋台骨を築いたとされるのが、ジル サンダー×プーマによるコラボレーションだ。1998年、まだスニーカーブランドとファッションブランドの協業が一般的でなかった時代。ジル サンダーはプーマのフットボールスパイクにいち早く目をつけ、自身のコレクションで、アッパーのデザインにランニングシューズのソールを組み合わせるという異色の発想で新たな美学を生み出した。そして約30年の時を経て、シモーネ・ベロッティ率いるジル サンダーのもと、その熱を再び宿したコラボモデルが本作だ。

ベースとなっているのは、プーマの名作「KING」。ペレやマラドーナといった名選手たちに愛されたことで知られるスパイクだ。特徴的なフラップはそのままに、素材にはしなやかで上質なプレミアムレザーを採用。ソールをランニング仕様へと変更したことで、ピッチからストリートへとシームレスに繋げている。さらに特別なディテールとして、ゴールドの箔押しでジル サンダーのロゴを刻印。ハイブランドならではの上質さと存在感を演出している。
一見、単なる復刻に思える本作には、ジル サンダーらしいミニマリズムの美学が息づく。過度な装飾を排したシンプルへの徹底した追求。完成されたものを尊重し、そこから引き算で磨き上げるデザイン哲学が、名作スパイクのフォルムに見事に融合している。
ネイビーブルーのカラーで展開されるユニセックスモデルは、10月14日よりジル サンダー銀座および公式オンラインストアにて数量限定で発売される。さらにこのコラボレーションは“始まり”にすぎない。第2弾は2026年3月にリリース予定だ。
トレンド、名作の復刻、そして希少性――ハットトリックが決まったこの一足で、街を駆け抜けたい。
