【ノーベル文学賞作家ハン・ガン】“泣けない大人”に贈る、魂を潤す童話

  • 文:瀧 晴巳(フリーライター)
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【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】
『涙の箱』

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ハン・ガン 著 きむ ふな 訳 評論社 ¥1,650

昔、それほどでもない昔、ある村に「涙つぼ」と呼ばれる子どもがいた。予想もつかないところで涙がこぼれる理由をその子自身も説明できなかった。そこにある日、ありとあらゆる涙を集めているという男が訪ねてくる。そうして、ふたりはこの世で最も美しくすべての人の心を濡らす純粋な涙を探す旅に出る。junaidaの挿画も美しいこの本は、ノーベル文学賞作家のハン・ガンが紡いだ大人のための童話。本当は泣きたかったのに泣けなかったことが大人なら誰しもあるはずで、そんないまだからこそしみてくる。