今年発表された2026年度のミシュラン東京「セレクテッドレストラン」に選ばれ、3年連続で掲載された和食料理店「赤坂 渡なべ」にて、今年で発売40周年を迎えた「久保田」のスペシャルペアリングイベントが開催された。
銘酒「久保田」と同じ新潟県生まれの「赤坂 渡なべ」店主兼料理長渡邊雄二郎は、「食欲の秋」をテーマに、新潟で取れた旬の食材をふんだんに使用した会席仕立ての特別コースと、「久保田」の代表銘柄「久保田 千寿」「久保田 萬寿」シリーズを提供した。
新潟の地酒を代表する銘柄である「久保田」は、1985年の発売以降、良質な酒造りとともに“淡麗辛口”というスタイルを確立。食事とともに愉しむ酒として、幅広い年代に愛され続けてきた。
会席ディナーの席では、日本ガストロノミー協会の理事であり酒匠の佐藤厚一郎が、料理と酒のペアリングを解説。ペアリングでは特にワインとは合せづらい苦みや酸味、そして日本食の旨味に焦点を当て、料理の幅広い表現に寄り添う「久保田」の底力を見せつけた。
現在「久保田」で展開している全17種類の商品の中から、会席ディナーでは「久保田 千寿」と「久保田 萬寿」のラインナップをそれぞれの食事と合わせ、冷酒、熱燗、燗冷ましと、様々な温度帯で提供した。
渡邊は佐藤から出された「旨味」「苦み」「酸味」「ヨード香」といったテーマをもとに、柿、子持ち鮎、スッポン、鱧、秋刀魚、牡蠣、松茸など、新潟を中心に日本各地から取り寄せた色とりどりの旬の食材を用いて、全14品の献立を用意。鱧のアラから出汁を引いたうしお汁の一献から始まり、葡萄のゼリー寄せ、栗むしようかん、珈琲プリンを並べた甘味まで、ひと皿ひと皿、趣向を凝らした料理でゲストをもてなした。
久保田 特別会席コース 食欲の秋
一献:本日のうしお汁(久保田 萬寿 自社酵母仕込)
先附:柿膾 蟹と大根みつば 酢味噌 土佐酢ゼリー(久保田 萬寿 自社酵母仕込)
酒肴:子持ち鮎有馬煮 新いくら からすみ餅 秋鯖小袖鮨 絹かつぎ 子持ち昆布糸かつお(久保田 千寿 秋あがり【熱燗】)
後肴:ごま和へ いちじく胡麻あん 木の芽(久保田 千寿)
椀:月とすっぽん 人参うさぎ 三度豆 生姜(久保田 萬寿)
造里:1. 真鯛昆布〆 山葵 昆布紫(久保田 千寿) 2. 名残りはも 温いおとし 梅肉 柚子(久保田 千寿 純米吟醸) 3. 戻りかつお 酒盗たれ 薬味(久保田 千寿)
焼肴:秋刀魚 肝焼き 卸し 酢橘 骨せんべい(久保田 千寿 秋あがり【燗冷まし】)
揚肴:かきふらい 海苔佃煮(久保田 千寿)
相肴:焼き松茸 ぽん酢和へ 春菊と菊花のひたし 輪すだち(久保田 萬寿)
煮物:煮穴子 秋茄子 銀杏 柚子 生姜(久保田 萬寿)
食事:新米コシヒカリ 香の物 和牛しぐれ煮 松茸玉子とじ(久保田 萬寿)
甘未:季の果ゼリー寄せ 栗むしようかん 白い珈琲プリン(久保田 萬寿)
繊細な味わいと香りを愉しむうしお汁や焼き松茸には、華やかな香りと重厚な味わいの「久保田 萬寿」を合わせ、風味の強い魚卵には「久保田 千寿 秋あがり」の熱燗を合わせて、舌にまとわりつく濃厚な旨味をふんわりと包み込む。それぞれのペアリングは見事な相乗効果をもたらし、新しい味覚体験とともにゲストを存分に楽しませた。
その中でも特に印象的で、改めて「久保田」という酒の真価を見直すきっかけを与えてくれたのが、造里で出された真鯛の昆布〆と「久保田 千寿」のペアリングだ。さまざまな味覚や香りの組み合わせと、「久保田」の表現力の豊かさに関心させられている最中、突如出されたこの定番の組み合わせが、「久保田」が長年幅広く愛され、食中酒として選ばれてきた理由を力強く物語っていた。久保田特約店だけでなく量販店やスーパーでも購入できて、庶民にとって身近な存在である「久保田 千寿」と、晩酌の王道である鯛の刺身とのペアリング。そこにはなにひとつ足すべきものも、引くべきものもない。誰もがシンプルに「うまい」と言えるペアリングは、どんなに時代を経ても、決して色あせることはない。