“超個性的”なウイスキーが誕生、ブルックラディ蒸留所のシングルモルト「オクトモア 16シリーズ」が登場

  • 文・写真:石川博也
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「オクトモア 16シリーズ」。左から「オクトモア 16.1」¥22,550、「オクトモア 16.2」¥24,750、「オクトモア 16.3」¥29,920

ウイスキーの聖地として知られ、人気の銘柄を数多く世に送り出している場所がアイラ島だ。スコットランドの西部に位置するこの島には、個性豊かなウイスキーをつくり出す蒸留所が数多く存在する。

1881年に創設されたブルックラディ蒸留所もそのひとつ。島の西海岸に位置し、伝統的な蒸留設備と革新的なウイスキーづくりを融合させた蒸留所として、唯一無二の存在感を放っている。

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左から「ポートシャーロット10年」、「ザ・クラシック・ラディ」、「ザ・ボタニスト」。

ブルックラディ蒸留所で製造されているシングルモルトウイスキーは、ラディ・ブルーと呼ばれる美しいブルーのボトルが印象的な「ザ・クラシック・ラディ」を代表とする「ブルックラディ」をはじめ、「ポートシャーロット」、「オクトモア」の3タイプ。また、アイラ初のジンとなる「ザ・ボタニスト」も製造し、ウイスキー同様に人気を集めている。

実はブルックラディ蒸留所は1994年に閉鎖となり、その後、2001年に再稼働していまに至る。そのような経緯があるからこそ、ほかの蒸留所とは異なる挑戦ことが特徴であり、大きな魅力となっている。

それを象徴するのが「オクトモア」だ。ウイスキーの常識を覆す“超個性的”なキャラクターによって、世界中に熱狂的なファンを生み出している。

マスター・ブレンダーが語る、「オクトモア」の魅力

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ブルックラディ蒸留所マスター・ブレンダーのアダム・ハネット。

「2001年に再稼働した際、蒸留所を再建した立役者のひとりでマスター・ディスティラーのジム・マッキュワンが、すごくピートの強いスモーキーなウイスキーをつくってみようと考えました。それがオクトモアです」

そう話すのは、ブルックラディ蒸留所のマスター・ブレンダー、アダム・ハネットだ。

ウイスキーにはフェノール値(ppm)と呼ばれるピートレベルを表す数値があり、ピートが強いといわれるウイスキーでも40ppm程度が一般的だ。

「でも、ジムは必ずしもその数値ではなくてもいいのではないかと考え、製麦を行うモルティング会社にできるだけピートの強い麦芽を依頼しました。それを調整することで、2002年に80ppm以上のピートをまとったウイスキーが完成したのです」

その後、熟成期間を経て2008年に「オクトモア」として発売開始。名前の由来は、蒸留所からほど近く、かつて存在したオクトモアと呼ばれる農場で、小さな蒸留所がピートの強いウイスキーをつくっていたこと。さらに最初に完成したものが80ppm以上だったため、ゲール語で「大きな8」という意味でもあるオクトモアと命名された。

そして誕生後も熟成に使用する樽を毎年変えるなど、常に新しいことにトライ。飲む人の好奇心を刺激し続けている。

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メディアテイスティングイベントで「オクトモア 16シリーズ」について説明するアダム。

新作「オクトモア 16シリーズ」とは

そんなウイスキーファン待望の最新シリーズ「オクトモア 16シリーズ」が25年9月に発売された。ラインアップは「オクトモア 16.1」「オクトモア 16.2」「オクトモア 16.3」の3種類。

「オクトモア 16.1」は、スコットランド産大麦を100%使用し、ウイスキーに初めて使われるファーストフィルのバーボン樽で5年熟成させた、シリーズの原点となるエディションだ。

「ウイスキーは一般的に10年、15年、20年のように長期間熟成するほどおいしく、アルコール度数が40%を超えると飲みにくくなると考えられていますが、この『オクトモア 16.1』の熟成年数はわずか5年、アルコール度数は59.4%です。フェノール値は一般的なピート香のあるウイスキーの2倍以上となる101.4ppmもあります。なぜ、こうしたウイスキーをつくったのかといえば、そもそもオクトモアはあえてこれまでにないものをつくる挑戦的なプロジェクトであり、それでいてベストクオリティのものをつくっているという自信があるからです」

数値は強烈だが、実際に飲んでみると、アルコール度数が59.4%もあるとは思えないほど、やさしくやわらかなテクスチャーで、フェノール値101.4ppmも納得のスモーキーなフレーバーが実に味わい深く、フルーティーさも感じられる。まさにこれまでとは異なる特別かつ最高のウイスキー体験ができる銘柄なのである。

スピリッツをつくるところから原料にこだわり、「5年しか熟成していなくても芳醇で豊かな味わいに仕上げることができる」とアダムは話す。

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メディアテイスティングイベントは、オクトモアをはじめ、ブルックラディ蒸留所の5種類のウイスキーを試飲しながら行われた。

「オクトモア 16.2」は、16.1と熟成樽だけ異なるウイスキーだ。こちらはオロロソシェリー樽とボルドーワイン樽で熟成させた後に、マデイラ樽とモスカテルシェリー樽で仕上げている。これはオクトモア史上初の試み。アルコール度数は58.1%だ。

そして、アダムが「我々のウイスキーはすべて少量限定生産でスペシャルですが、中でも最も特別な存在です」と明かすのが「オクトモア 16.3」だ。オクトモア農場で育った大麦のみを使用し、フェノール値は16シリーズの中で最も高い189.5ppm。アルコール度数もシリーズ中最高の61.6%。熟成にはバーボン樽、ソーテルヌワイン樽、ペドロ・ヒメネスシェリー樽を使用している。

ウイスキーの常識を超越した異次元の数値ではあるが、実際に飲んでみると、口当たりはやさしく、さわやかなピートが印象的。個人的に海と青空をイメージさせるような味わいだと感じた。

ブルックラディ蒸留所の哲学を象徴するイベント

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豊洲エリアで行われたブルックラディ蒸留所プレゼンツ 「ROCK’NDAAL JAPAN FES 2025」。

「オクトモア」に代表されるように、革新的な試みを次々と行っているブルックラディ蒸留所だが、その志を象徴するようなイベント、ウイスキーと音楽の祭典 ブルックラディ蒸留所プレゼンツ 「ROCK’NDAAL JAPAN FES 2025」が、9月14日に豊洲エリアで行われた。

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野外でウイスキーを飲みながら音楽に身を委ねる最高の時間となった。

スコットランド・アイラ島で毎年開催されるウイスキーと音楽の祭典「アイラ・フェスティバル」をオマージュしたもので、今回が日本初開催となった。

会場ではブルックラディ蒸留所のウイスキーやジン、それらに合う料理を楽しみながら、バンドによるライブ演奏やDJプレイ、アダム・ハネットのトークショーなどステージイベントを楽しむことができた。

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ゲストバーテンダー。ブルガリ ギンザ バーのジャーチル・アラズ(左)、ヴェルテュ(フォーシーズンズ ホテル 東京大手町)の石井さくら。

ドリンクカウンターでは、人気と実力を兼ね備えた6名のゲストバーテンダーが登場。オリジナルカクテルを通して、ブルックラディ蒸留所が誇るウイスキーやジンのさまざまな楽しみ方を提案した。

ブルックラディ蒸留所について「単にウイスキーを造るのではなく、その念頭にあるのは、アイデンティティをもってコミュニティに貢献したいという思いです」と話すアダム。

「オクトモア」やそのほかのウイスキーやジンはもちろん、最近ではBSフジの番組「ウイスキペディア」とのコラボによる「ザ・ラディ・ハイボール」を発売して話題になったように、お酒を通して、日々の暮らしや人生を実りあるものにしてくれるのが、ブルックラディ蒸留所なのである。

レミー コアントロー ジャパン

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