『他人の顔 ~ヴァイオリン&ピアノ作品集』

引き立て役というニュアンスの強い“伴奏”にピアノが徹することなく、ヴァイオリンと対等に絡み合うことでしか生まれ得ない音楽がある。アルバムの前半で明確にふたつの楽器が拮抗したり、まるでひとつの楽器のように重なったりするので、ピアノが伴奏になりがちなマヌエル・デ・ファリャより後の楽曲もまた聴こえ方が変わってくるのが、めっぽう面白い。普通はどうやってもヴァイオリンが中心になってしまうフリッツ・クライスラーでさえ、ピアノがどれほど大事な役割を担っているのかを痛感させてくれるのだ。