アディダス「アディゼロ(ADIZERO)」シリーズは、走りのスピードを突き詰める選手が履く競技用ランニングシューズ。
アディダスのランシューにはほかに、“心地いい履きごこちで走る”「スーパーノバ(SUPERNOVA)」シリーズ、“ゆっくりと安定して走る”「アディスター(ADISTAR)」シリーズもあります。
アディゼロは“一秒でも早く走る”ことが目的の走りのフラッグシップ。
つまり!
わたしのように「走るのヤだ〜」と電車に乗り遅れそうでも足がモタついているボンクラが、街歩きのお供にするようなシューズではないのです。
しかし!
走りの最高峰なら、街歩きも超快適にアップグレードしてくれるはず。
このたびアディゼロがメルセデス・ベンツAMG(ベンツのスポーツ車ブランド)とコラボして、黒ボディに赤ラインの鮮烈なモデルをリリースしました。
ミニマルでスタイリッシュなデザインで、群を抜くファッション性の高さ。
そのうち2型を入手しましたので、ここに走り……いや街歩きでのパフォーマンスレビューをお届けします。
歩き疲れのなさ、前方への推進力、地面のグリップ力などの街履き機能に神経質な者による、アスリートじゃない方の目線の私的レビューです。
掲載写真はすべてわたしの私物。
2型とは「アディオス プロ 4 AMG(以下、アディオス)」と「EVO SL AMG(以下、エヴォ)」。
価格はアディオスが28,600円、エヴォが19,800円。
まずは各数時間試し履きして感じた共通項を挙げていきましょう。
2型共通のエッセンス
1. 優れたグラフィックと造形美。
2. 旅や出張に持っていきたい超絶軽量。
3. 厚底で別次元のシューズ体験。
4. 最先端のシューズテクノロジーを凝縮。
5. 超ソフトな靴底は摩耗が心配。
6. 合わせるファッションを選ぶ。
7. 体力のある人に向く。
両者はよく似ていますが、履いた感触はまったく別モノです。
ショップで足を入れて少し歩いたら、どちらが自身に合うか瞬時に判断できるでしょう。
それぞれの印象は、各モデル紹介の欄で述べますね。
2型に共通する個性は、厚底ランシュー独特の履き心地。
厚底で有名なホカを所有しているわたしでも、部屋でこの2型に足を入れて立ったとき思わず笑ってしまったほど。
「なんだこりゃ、おもしろっ」とニヤニヤしました。
深く沈み込んで反発する、アディダスのクッションフォーム「LightstrikePro」の技術の凄さでしょうか。
一方でスポンジ状のフォームはとても柔らかく、地面との擦れで摩耗しやすい不安があります。
着地面に固いラバーが貼られていますがごく薄く、一般的な外履きシューズと同様の耐久性を望むのは酷でしょう。
競技のとき使えれば問題ないアスリート向けですから当然の仕様です。
ともに両足で200gほどの驚異的な軽さ。
どこにでも持っていけます。
アッパーはペラッとしているのにホールド感もしっかりと。
ふだん2,000年代(Y2K)復刻ランシュー&トレイルランシューをよく履く者としては、先端テクノロジーを凝縮したつくりに惚れ惚れしてしまいます。
一方で街歩きファッションとして眺めたとき、コーディネートの難しさにも気づきました。
未来的でシャープな造形は現代のスポーツウエアとのバランスが計算されたもの。
黒×赤の主張も強いです。
温もりや味わいのある服、例えば古着、トラッド、天然素材などには馴染みにくい印象です。
服のうち1点は黒を採用して色を落ち着かせ、さらに服のどれかをテック系にすると整いそうです。
上写真のパンツはニート(NEAT)のメッシュ短パン。
こんな感じでボトムをまとめればイケるかな、と思っています。
黒のテック系パンツが一本あると便利です。
パンツがテック系なら、上半身は例えばバブアーなどの定番アウターでも馴染みそう。
実際にアスファルト道路を歩き、階段を駆け上り、小走りして気付いたのは、快適に過ごすにはそれなりの体力がいること。
体力というか筋力、やや鍛えた脚でしょうか。
大半の人は問題ないでしょうが、筋力が衰えたお年寄りの歩行をサポートするような存在ではないようです。
ソールが柔らかいだけに、横にぐにゃと曲がる感触もあります。
電車の車内のように横揺れがある場所で顕著です。
足首が弱い人だと支えきれなかったり、疲れやすいかもしれません。
アディゼロは鍛えられたアスリートが選ぶスピード目的のシューズ。
横方向の動きは想定されていません。
長時間散歩するウォーキング用、日常生活用ではないんですね。
それぞれの歩き心地については以下をご覧くださいませ。
EVO SL AMG
街での自然なファッション性を重視するなら、選ぶべきはこの型でしょう。
厚底の造形もフォルムも丸っこくて自然。
一般のスニーカー気分で足入れできます。
ヒールのホールドも固めでしっかりとしています。
厚底シューズ初体験の人にもお薦めできます。
着地したときヒールがグッと沈み込み、すぐに反発する楽しさを存分に味わえます。
本来の用途がトレーニングやジョギングのシューズです。
アディオス プロ 4 AMG
「今日は走るようにガンガン歩くぜ!」という日には、わたしならこちらを選びます。
前方に突き進むように足を押し出してくれるからです。
推進力が凄い一足。
ソールの前後がセパレートしており、つま先だけでぴょんぴょん飛び跳ねられます。
エヴォと比べると見た目のスポーツ感が強いこと、価格が約1万円高いことがネックでしょうか。
ただ圧倒的な歩きのパフォーマンス、ほかのシューズとの快適さの差別化を望むならアディオスでしょう。
汎用性の高さでエヴォ、機能特化でアディオスがひとつの基準になるかと。
アディオスの本来の用途は、タイムを競うレース用です。
実はこの2足は、アディダスの外部PRさんからモニター履きでご提供いただいたもの。
「履いてみてください」のノリで2足も渡されるなんて普通じゃあり得ないこと。
(1足のメディア関係者配布はよくあります)
両方試してその理由がよくわかりました。
かなり特性が異なる2足だったんですね。
どちらも履くシーンで使い分けできる。
2足持ってても一方に偏らずフル活用できる。
わたしのスニーカーライフに、めちゃめちゃ刺激を与えてくれたアディゼロです。

ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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