【次世代電気自動車 ノイエ・クラッセ】史上もっともBMWらしいモデル、新型iX3には新しさが詰まっている

  • 文:小川フミオ
  • 写真:BMW AG
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次世代電気自動車「ノイエ・クラッセ」シリーズ第1弾

BMWが「次世代電気自動車」をうたう「ノイエ・クラッセ」シリーズの第1弾「iX3」を、2025年9月4日にミュンヘンで発表した。 

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ノイエ・クラッセの第1弾として発表されたiX3は印象的なフロントマスクを持つ。

低公害と高性能の両立とともに、従来のBMW車とは一線を画すデザイン。さらにデジタル技術を駆使したインテリアと、見るべきところの多いモデルだ。

「いまままでいちばんBMWらしいクルマ」と、BMW取締役会のツィプセ会長(CEOにあたる)が評しているのも、注目点といえる。

注目すべきフロントマスクのデザイン

ぱっと見で目を惹くのは、従来とは一線を画したフロントマスクのデザインだ。 

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初代ノイエ・クラッセにインスパイアされたという新意匠のキドニーグリル。

ひとつは、細くなった「キドニーグリル」。もうひとつはヘッドランプに組み込まれた2本のシグネチャーライト。

実は細いキドニーグリルは、BMWがこのクルマを「ノイエ・クラッセ」と呼ぶことと関連している。

救世主と評されたノイエ・クラッセ

ノイエ・クラッセとは、そもそも1962年に発表されたBMW「1500」にはじまる新世代のセダンを指していた。経営的に行き詰まっていたBMWの救世主と言われる。

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ミュンヘンの発表会場に展示されていた初代ノイエ・クラッセは、エンジンとデザインと動力性能で群を抜いていた。写真:筆者

スポーティかつエレガントなスタイルと、航空機のエンジンメーカーとしてスタートしたBMWならではの素晴らしいエンジンフィール。そしてレースなどでの活躍。

マーケットでも競合が存在しないセグメントであり、いまの言葉でいうプレミアムミドルクラスというノイエ・クラッセ(あたらしいクラス)をつくりあげた。

モデルチェンジして5シリーズや3シリーズとなり、いまに続くBMWの礎をつくったのが、最初のノイエ・クラッセなのだ。

日本でもっとも知られているのは2ドアの「2002」。いまでも魅力的に見えるボディデザインと高性能とで、日本をはじめ世界中にファンを生んだ。 

未来を見据えた、新世代のノイエ・クラッセ

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発表会場におけるツィプセ取締役会会長(右)とデザイン統括のファン・ホイドンク氏(左)。

新世代のノイエ・クラッセのお披露目の舞台は、ミュンヘンで9月9日から14日にかけて開催の「IAAモビリティ2025」なる国際自動車ショー。

先立つ9月4日に、特設会場にメディアを招待して世界初公開された。会場に掲げられたのは「A New Era」。あたらしい時代(のはじまり)という意味だ。

「ノイエ・クラッセは、未来を見据えた当社史上最も大規模なプロジェクト」と、BMW取締役会のオリバー・ツィプセ会長(一般的にいうとCEOの立場)はコメントしている。

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800V直流急速充電ステーションを利用すれば350km以上走行可能なエネルギーを10分で充電できる。

「私はBMWに籍を置いて34年になり、その間に数多くの新車、感心するようなコンセプト、それに大胆な技術革新を見てきました」

当日、ツィプセ会長は、メディアの前で語った。

「でも今回のノイエ・クラッセの発表は、“人生でたった一度きり”としか言いようのない体験です」

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ボンネットの切れ込みをBMWデザイン部は「バリー(谷)」と表現する。

凝ったインテリアが演出する車内体験

前後にモーターを搭載したバッテリー駆動の4輪駆動車であるiX3。

BMWが設計開発した円筒型バッテリーセルをひとつのパックにしてシャシーに組み込んだ方式を採用。コンピューターは機能別に4つに集約している。 

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ウインドシールド下部に設けられたのがBMWオペレーティング・システムXで動く「BMWパノラミックiDrive」。

インテリアでの注目点は、「BMWパノラミックiDrive」の採用。ウインドシールドの下、ダッシュボードの左右幅ほぼいっぱいに液晶モニターが配された。

ここにナビゲーションやオーディオなどの表示がされ、さらにA1エージェントが顔のアイコン(リトルグレイをかわいくした印象)としてそこに登場する。 

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デジタル技術は巧妙に隠され、居心地のよさが強調されたインテリアデザイン。

照明に凝りまくっているのもインテリアの特徴で、乗ってもいないうちに断言はできないけれど、乗員との密なコミュニケーションが追求されている印象だ。

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広々とした後席ではクライメートコンフォートガラス採用のパノラマ・ガラスサンルーフ」(オプション)の恩恵が受けられる。

ブランド確立に貢献するエコシステム

もうひとつ、BMWが重視しているのはエコシステム。リサイクル素材の積極的利用と、CO2削減のため高効率化と軽量化を進めている。

驚くのは、プレスリリースであげられている欧州の事例。

「走行距離が2万1500kmに達した時点で同等の性能をもつ内燃エンジンモデルより(ライフサイクル全体にわたる)CO2排出量が少なくなる」(BMW)

ノイエ・クラッセ全体の大きな特徴が、新世代のエンジンを搭載していたことだ。高効率と高性能、それにすばらしいフィールを持っていて、これもBMWのブランド確立に大きく貢献している。

「いまままで一番BMWらしいクルマ」と、前出のツィプセ会長が新世代のノイエ・クラッセについて言うのは、ここで述べた事実を含んでいるのかもしれない。 

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同じ名前を持つ先代モデルから飛躍を遂げ、従来のモデルチェンジの枠組みをはるかに凌駕、とされる。

新しい時代を象徴する存在として

BMWでは、iX3の発表会場に「NEW ERA」(新しい時代)という文字を配していた。

フロントマスクの意匠は新しいが、全体のデザインは、昨今のBMW車ほどアバンギャルドではない。

iX3のデザインにおける肝腎な点とはなにか。BMWグループ全体のデザインを統括するアドリアン・ファン・ホイドンク氏は下記のように説明してくれた。

「新しい意匠を組み込んでいますが、誰もが見てすぐにBMW車だとわかることが大事で、もうひとつ意識したのは、デザインからBMW車の歴史を思い出してもらうことでした」 

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デザインの要点を説明するファン・ホイドンク氏。写真:筆者

BMW車の歴史とは、冒頭で説明した初代のノイエ・クラッセを意味しているはずだ。

次世代のリーダーを担うモデル「i3」

発表会では終盤にもう1台、次世代のリーダーになるモデルとして「i3」が登場した。

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プレゼンテーションの終盤「i3」が紹介された。写真:筆者

「現段階では擬装を外せませんが、均整のとれたプロポーションをもったセダンだということがおわかりでしょう」

新しい3シリーズの最初の一台として、2026年に発表されると付け加えられた。

BMWではこれからの新型車の命名方式も変更。頭に「i」がつくようになるとか。新しい時代がいま始まったのだ。 

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ノイエ・クラッセはまずiX3(左」)とi3で展開される。

BMW iX3

全長×全幅×全高:4782×1895×1635mm
ホイールベース:2897mm
車重:2285kg
電気モーター 前後各1基 全輪駆動
システム最高出力:345kW
システム最大トルク:645Nm
一充電走行距離:679〜805km
乗車定員:5名
0-100km/h加速:4.9秒
価格:未定
問い合わせ:BMWジャパン
www.bmw.com