ミニとデウス・エクス・マキナがコラボ
ミニと「デウス・エクス・マキナ」がコラボレーションして、2台のジョン・クーパー・ワークスをつくりあげ、2025年9月5日にミュンヘンで発表した。

クルマのデザインの地平を拡げるようなコンセプトだ。ひとつはグラフィクス的な冒険。もうひとつは、従来自動車とは縁のなかった異素材との組合せ。
グラフィクスにはマット・ウィリーが関わっている。もと「ザ・ニューヨーク・タイムズ」のアートディレクターで、のちにデザイン会社「ペンタグラム」に移籍してから、デウス・エクス・マキナのカプスルコレクションを手掛けるなどしている。
異なるアプローチの2台が誕生
多彩な才能が集まってつくりあげられたのが、今回のコラボレーション。

1台は、ガソリンエンジンの3ドア、ジョン・クーパー・ワークス(JCW)をベースにしたモータースポーツイメージの車両。「ザ・マキナ」と名付けられている。
もう1台は、バッテリー駆動の「ジョン・クーパー・ワークスE」を、サーフィンをテーマに仕立てた仕様。こちらは「ザ・スケグ」。

発表イベントで語られたコラボの背景
「ミニはパッケージングにすぐれるとともにモータースポーツでの活躍により世界でもっとも成功したプレミアムスモールカーのブランドになりました」
ミュンヘン市内のミニディーラーで行われた発表イベントにおいて、ミニ・ブランドを統括するシュテファン・リヒマン氏は、今回の背景を説明してくれた。

「ミニは同時にさまざまな可能性を持っていて、私たちは一貫してそこに注目し、さまざまな提案をしてきました」
デウス・エクス・マキナとのコラボレーションの背景はそこにあるという。

「クラフツマンシップ、カルチャー、コミュニティが、ミニとは切って切り離せないもので、それを深掘りしたコンセプトです」
デウス・エクス・マキナとの関係性
デウス・エクス・マキナについては、読者のなかにもファンが多いのではないだろうか。
2006年にオーストラリアはニューサウスウェールズのキャンパータウンで創業されたブランド。

カスタムバイクをはじめ、スノーボードやサーフボードで人気を呼び、手掛けるファッションアイテムも数多い。
BMWグループとは、モトラード(二輪)のプロダクトを使ったスペシャルモデルでも話題を呼んでいる。
四輪でも同様。2025年のニュルブルクリング24時間レースに出走したブルドッグレーシングのミニの車体にも、「DEUS」のロゴが大きく載っていた。

今回のJCWは、前述のレースにおいてSP3Tクラスで2位に入賞したマシンのイメージも活かしている。
「ミニはつねにモータースポーツのヘリティッジを大事にしてきています。それを活かしました」
ミニのヘッド・オブ・デザインを務めるホルガー・ハンプ氏も、「もうひとつ、注目したのは、デウスがサーフカルチャーと切り話せない関係にある点です」と言葉を添える。
そのイメージでもう1台を一緒に仕立てよう、となったそうだ。
サーフカルチャーを基調にしたザ・スケグ

サーフカルチャーをベースコンセプトに据えて開発したザ・スケグ(サーフボードのフィン)は、半透明のファイバーグラスがいたるところに使われている。
ユニークなのは、フロントノーズもファイバーグラスで覆ってしまっていること。ミニが使うLEDによるグリルの輪郭が下に透けて見える。ちょっとユーモラスなデザインだ。

ルーフ後部には2本のゴムベルトが左右に渡されている。そこにサーフボードをはさんで運ぶ提案なんだそうだ。
ベルトは3ドアJCWにおいてステアリングホイールのスポークと、助手席前ダッシュボードのアクセントにも使われている。
ミニのファンが見たら「そこからの引用かな」と気づいてにやりとするかもしれない。
インテリアも凝ったデザインに

内装も凝りまくっている。ザ・マキナはレーシングミニがイメージだけあって、内装材をほぼすべてストリップダウン。
ラリーマシンで見られる長いシフターが目を惹く。合成樹脂製のレーシングバケット(シート)も備わり、そこにからだを落ち着けると、気分が昂揚してくる。
ザ・スケグの内装では、サーフボードをイメージしたファイバー素材が多く使われている。同時に、ブラックの内装色にイエローのアクセントがいい感じだ。

荷室には、濡れたままウェットスーツをほおりこめるよう、合成樹脂のトレイと、固定用のバンジーコードがそなわる。これもイエロー。
3社による“美しい協業”
ミニ本社のデザインチーム、BMWがカリフォルニアに持つサテライトスタジオのデザインワークス(過去にZ8などを企画)、そしてデウスエクスマキナの3社がこのプロジェクトを手掛けた。

そのなかで誰が主導権を握ったのか。
それを尋ねられて、デウスの創業者であるカービー・タックウェル氏は「誰ということもなく、美しい協業でしたよ」と控えめな声で答えた。
出来上がった2台において、どこが気に入っているか、という質問に対しては、「どの子がいちばん好きかって訊かれるぐらい難しい質問」と言い、会場のジャーナリストたちの笑いを誘った。
「たとえば、でいいなら、ザ・マキナのティーカップタイプのリアビューミラーとか、ザ・スケグの巨大なリアスポイラー。あれはいいですよね」

手掛けた本人たちが楽しそうに語る、ミニとデウス・エクス・マキナのコラボレーション。そのうち日本でも見られるかもしれない。