【ミニ×デウス・エクス・マキナ】コラボによって個性的なジョン・クーパー・ワークスが誕生

  • 文:小川フミオ
  • 写真:MINI
Share:

ミニとデウス・エクス・マキナがコラボ

ミニと「デウス・エクス・マキナ」がコラボレーションして、2台のジョン・クーパー・ワークスをつくりあげ、2025年9月5日にミュンヘンで発表した。

P90613882_lowRes_mini-john-cooper-wor.jpg
ラリークロスマシンをイメージしたようなザ・マキナ。

クルマのデザインの地平を拡げるようなコンセプトだ。ひとつはグラフィクス的な冒険。もうひとつは、従来自動車とは縁のなかった異素材との組合せ。

グラフィクスにはマット・ウィリーが関わっている。もと「ザ・ニューヨーク・タイムズ」のアートディレクターで、のちにデザイン会社「ペンタグラム」に移籍してから、デウス・エクス・マキナのカプスルコレクションを手掛けるなどしている。

異なるアプローチの2台が誕生

多彩な才能が集まってつくりあげられたのが、今回のコラボレーション。

P90613876_lowRes_mini-john-cooper-wor.jpg
色の塗り分けとパターンとで見るひとが見るとデウスエクスマキナの雰囲気が醸し出されている。

1台は、ガソリンエンジンの3ドア、ジョン・クーパー・ワークス(JCW)をベースにしたモータースポーツイメージの車両。「ザ・マキナ」と名付けられている。

もう1台は、バッテリー駆動の「ジョン・クーパー・ワークスE」を、サーフィンをテーマに仕立てた仕様。こちらは「ザ・スケグ」。 

P90613887_lowRes_mini-john-cooper-wor.jpg
一目見たら忘れない強烈なグラフィクス。

発表イベントで語られたコラボの背景

 「ミニはパッケージングにすぐれるとともにモータースポーツでの活躍により世界でもっとも成功したプレミアムスモールカーのブランドになりました」

ミュンヘン市内のミニディーラーで行われた発表イベントにおいて、ミニ・ブランドを統括するシュテファン・リヒマン氏は、今回の背景を説明してくれた。

IMG_0560.jpeg
会場になったのはマキシミリアンシュプラッツそばのミニディーラー。写真:筆者

「ミニは同時にさまざまな可能性を持っていて、私たちは一貫してそこに注目し、さまざまな提案をしてきました」

デウス・エクス・マキナとのコラボレーションの背景はそこにあるという。

P90614109_lowRes_mini-john-cooper-wor.jpg
ライトをうまく使ったデザインが光る2台のスペシャル・ミニ3ドアJCW。

「クラフツマンシップ、カルチャー、コミュニティが、ミニとは切って切り離せないもので、それを深掘りしたコンセプトです」

デウス・エクス・マキナとの関係性

デウス・エクス・マキナについては、読者のなかにもファンが多いのではないだろうか。

2006年にオーストラリアはニューサウスウェールズのキャンパータウンで創業されたブランド。 

IMG_0564.jpeg
ミュンヘンのミニディーラーには、男性用理髪コーナーとともにデウスエクスマキナとのコラボレーション製品を扱う大きなコーナーがある。写真:筆者

カスタムバイクをはじめ、スノーボードやサーフボードで人気を呼び、手掛けるファッションアイテムも数多い。

BMWグループとは、モトラード(二輪)のプロダクトを使ったスペシャルモデルでも話題を呼んでいる。

四輪でも同様。2025年のニュルブルクリング24時間レースに出走したブルドッグレーシングのミニの車体にも、「DEUS」のロゴが大きく載っていた。

P90606028_lowRes_mini-jcw-x-deus-at-t.jpg
ニュルブルクリング24時間レースでも活躍したミニJCWにもデウスのロゴが入っている。

今回のJCWは、前述のレースにおいてSP3Tクラスで2位に入賞したマシンのイメージも活かしている。

「ミニはつねにモータースポーツのヘリティッジを大事にしてきています。それを活かしました」

ミニのヘッド・オブ・デザインを務めるホルガー・ハンプ氏も、「もうひとつ、注目したのは、デウスがサーフカルチャーと切り話せない関係にある点です」と言葉を添える。

そのイメージでもう1台を一緒に仕立てよう、となったそうだ。

サーフカルチャーを基調にしたザ・スケグ

P90613816_lowRes_mini-john-cooper-wor.jpg
ザ・スケグにはサーフボードを思わせる半透明の素材が多く使われていてグリルの輪郭が内側から透けて見えるのがユニーク。

サーフカルチャーをベースコンセプトに据えて開発したザ・スケグ(サーフボードのフィン)は、半透明のファイバーグラスがいたるところに使われている。

ユニークなのは、フロントノーズもファイバーグラスで覆ってしまっていること。ミニが使うLEDによるグリルの輪郭が下に透けて見える。ちょっとユーモラスなデザインだ。 

P90614090_lowRes_mini-john-cooper-wor.jpg
ザ・スケグのルーフは半透明の樹脂製とユニークなデザイン。

ルーフ後部には2本のゴムベルトが左右に渡されている。そこにサーフボードをはさんで運ぶ提案なんだそうだ。

ベルトは3ドアJCWにおいてステアリングホイールのスポークと、助手席前ダッシュボードのアクセントにも使われている。

ミニのファンが見たら「そこからの引用かな」と気づいてにやりとするかもしれない。 

インテリアも凝ったデザインに

P90613916_lowRes_mini-john-cooper-wor.jpg
ザ・マキナのまるでレースカー(ラリークロス)そのままという雰囲気の内装。

内装も凝りまくっている。ザ・マキナはレーシングミニがイメージだけあって、内装材をほぼすべてストリップダウン。

ラリーマシンで見られる長いシフターが目を惹く。合成樹脂製のレーシングバケット(シート)も備わり、そこにからだを落ち着けると、気分が昂揚してくる。

ザ・スケグの内装では、サーフボードをイメージしたファイバー素材が多く使われている。同時に、ブラックの内装色にイエローのアクセントがいい感じだ。

P90613866_lowRes_mini-john-cooper-wor.jpg
ザ・スケグでは濡れたままのウェットスーツをそのままほおりこめたり、サーファーのための機能が各所に盛り込まれている。

荷室には、濡れたままウェットスーツをほおりこめるよう、合成樹脂のトレイと、固定用のバンジーコードがそなわる。これもイエロー。

3社による“美しい協業”

ミニ本社のデザインチーム、BMWがカリフォルニアに持つサテライトスタジオのデザインワークス(過去にZ8などを企画)、そしてデウスエクスマキナの3社がこのプロジェクトを手掛けた。

P90613824_lowRes_mini-john-cooper-wor.jpg
ヘッドオブデザインのハンプ氏がとくに気に入っているのが、サーフボードを思わせる素材でできた、ザ・スケグのリアスポイラーだそう。

そのなかで誰が主導権を握ったのか。

それを尋ねられて、デウスの創業者であるカービー・タックウェル氏は「誰ということもなく、美しい協業でしたよ」と控えめな声で答えた。

出来上がった2台において、どこが気に入っているか、という質問に対しては、「どの子がいちばん好きかって訊かれるぐらい難しい質問」と言い、会場のジャーナリストたちの笑いを誘った。

「たとえば、でいいなら、ザ・マキナのティーカップタイプのリアビューミラーとか、ザ・スケグの巨大なリアスポイラー。あれはいいですよね」

IMG_0653.jpeg
右からミニ統括のリヒマン氏、デウスエクスマキナのタックウェル氏、ヘッドオブデザインのハンプ氏。写真:筆者

手掛けた本人たちが楽しそうに語る、ミニとデウス・エクス・マキナのコラボレーション。そのうち日本でも見られるかもしれない。

ミニ

www.mini.jp