アイルランドのビーチで手紙入りのボトルを発見。「SOS」の文字に戦慄!

  • 文:宮田華子
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2025年7月19日、アイルランド・アラン諸島の最東端にあるイニシア島(Inis Oírr, Inisheer)の海岸でみつかったあるボトルが話題となっている。

発見したのは、観光で島を訪れていたマシュー・ラミングさんとクリス・ハーリーさんの2人。難破船近くの潮だまりを覗いていたとき、透明なガラス瓶が岩の間に漂着しているのを偶然目にしたのだ。

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photo courtesy: Matthew Laming
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マシュー・ラミングさん(右)とクリス・ハーリーさん(左)Photo courtesy: Matthew Laming

瓶は花の香りのする蝋で厳重に封印され、コルクごと固められていた。2人はその場で開封を試みたがうまくいかず、島にあるパブに入って開封した。そして中から折り畳まれた紙片を取り出した。

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コルクはなかなか抜けなかった。Photo courtesy: Matthew Laming

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助けを求める切迫した内容の手紙

紙片には黒い太字でメッセージが書かれていた。

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photo courtesy: Matthew Laming

「どうか助けてください!私たちは12月20日から行方不明です。ここには3人でいます。この島の名前がわかりません。負傷しています。助けてください ハロー SOS 李 永裕興18号(Yong Yu Sing No.18
(日本語訳/判明部分)

このメッセージのほとんどはインドネシア語で書かれていたが、署名のように「李」という漢字と、「Yong Yu Sing No.18(永裕興18号)」という船名が書き加えられていた。

しかしインドネシア語ネイティブからは「不自然な表現があり、機械翻訳を通したように見える」との指摘もあり、真偽をめぐる議論が続いている。

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台湾漁船「永裕興18号」とは

「永裕興18号」とは台湾宜蘭県蘇澳を母港とする総トン数29トン、全長約15メートルの延縄まぐろ漁船だ。2020年12月末から行方不明となり、2021年1月1日にミッドウェー環礁沖で乗組員不在の状態で漂流しているのが確認された。

乗っていたのは船長の李氏を含む台湾人1人と、インドネシア人9人の計10人。窓の破損や救命艇の不在が確認され、事故や遭難の可能性が指摘されたが、乗組員の行方は依然として不明のままだ。

台湾当局の調査では「悪天候による事故の可能性」とされたが、証拠は乏しく、家族らは今も真相解明を求め続けている。

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ネットでの反響と当局の反応

ラミングさんは発見の経緯を、掲示板サイト「Reddit」のコミュニティ「r/beachcombing」に投稿。すぐに世界中の利用者から注目を集め、「これは永裕興18号のSOSではないか」との推測が広がった。

彼はガルダアイルランド警察(Gardaí)にも通報したが、その後の調査内容は公表していない。

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手紙を持って警察に通報した。Photo courtesy: Matthew Laming

一方、台湾の蘇澳漁業協会は「信頼できる証拠であれば国際的な捜索協力を検討する」と表明し、行方不明者の家族にも情報が伝えられた。

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専門家の見解:漂流はあり得るのか?

海洋学者の間では、数年をかけてボトルが太平洋から大西洋へと漂着する可能性は否定できないとされる。過去にも漂流物が長距離を移動した記録は存在し、使用されていた瓶が2021年頃に製造中止となったブランドのものだったことも「時系列的には整合する」と指摘されている。

ただし、文面の不自然さや署名の曖昧さから「精巧ないたずらの可能性」も拭えない。真実か虚構か、現時点では判断はついていない。

今回の発見は、長らく忘れられつつあった遭難事件を再び世に呼び起こした。もし本物のSOSであれば、乗組員の命が長期間にわたり危機にさらされていたこと、また生存の可能性を示す重大な証拠となる。

早期の真相解明が待たれる。