ランボルギーニ「フェノメノ」が全貌を現した! 生産台数は29台、ごくわずかな人のために開発された

  • 文:小川フミオ
  • 写真:Automobili Lamborghini
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ランボルギーニが2025年8月に「フェノメノFenomeno」というスポーツモデルを発表した。

米カリフォルニア州での「モンタレー・カーウィーク2025」でお披露目された12気筒プラグインハイブリッド。

注目点は「フューオフ(Few Off)」と同社が呼ぶ、ごくごく少量生産のスペシャルモデルであることだ。

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ドアのデザインにも、気流をエアインテークへと導くエアロダイナミクス上の役割が組み込まれている。

 生産予定台数はわずか29台。これまでにもランボルギーニは、フューオフを送り出してきた。

「レヴェントン」(2007年)にはじまり、「セストエレメント」(10年)、「ヴェネノ」(13年)、「チェンタリオ」(16年)、「シアン」(19年)、そして「クンタッチ」(21年)。

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ランボルギーニ・デザインの方向づけとなったレヴェントン(2019年)。

そして、25年のフェノメノ。車名は「2002 年にメキシコのモレリアで勇敢に闘った有名な闘牛に由来」と、ランボルギーニでは説明する。

ちなみにフェノメノは、アリーナで命を落としていないとされる(よかった)。加えて、イタリア語とスペイン語で「驚異的な」という意味もあるとのこと。

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エストリル・サーキットでランボルギーニ・デザインの説明をするボルケルト氏。

デザインについては、「ランボルギーニの新たなデザインマニフェスト」と、ディレクター・オブ・デザインのミティア・ボルケルト氏(ミチャとも)は述べる。

「意外性を持ったエレガントな宇宙船」というのが、デザイン部を統括するボルケルト氏による表現だ。

ボルケルト氏にインタビューする機会が、東京のランボルギーニ・ジャパン(オンライン)とポルトガルで設けられた。

ポルトガルは、新型スポーツカー「テメラリオ」のテストドライブの舞台であるエストリルサーキットでだ。 

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デザインの意図を説明するためのボルケルト氏による書き込み。

私の第1問は、「フェノメノは、未来への一歩か。過去のデザインの集大成か」だった。

「人によっては、ミウラやガヤルドを思い出すという感想があるかもしれません。包括的なアプローチを取りつつも、常に未来を向いています」

包括的なアプローチを別の言葉でいうと、“ランボルギーニ車のDNAをデザインに活かすこと”となる。

「ただし、過去のデザインを繰り返しても意味はありません。私としては、常に新しいデザインランゲージを求めています」 

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手前がステファン・ヴィンケルマンCEO、左端が技術のトップのロウフェン・モア氏、右にボルケルト氏。

フードにはウラカンGT3をはじめとするランボルギーニのレーシングモデルにインスピレーションを得た2つの大きなエアインテーク。

ライトシグネチャーはランボルギーニの猛牛の角へのオマージュ。

カーボンファイバー製のフロントスプリッターを視覚的にまとめる「Y」の形。 

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前輪は2基のモーターで、後輪はモーターが組み込まれたエンジンにより駆動される。

側面では、フロントフードの先端からリアまでが、1本のラインで描かれたようなモノフォルム。 

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「Feel Like A Pilot」というデザインテーマによるコクピットには炭素樹脂など軽量素材がふんだんに使用されている。

これらのようなものがフェノメノのデザインを特徴づけている。

それだけではない。6.5リッターV12プラグインハイブリッドシステムの1080CV(約794kW)のシステム最高出力と725Nmの最大トルクを活かすのが重要。

そのため、各所に、空気(の流れ)を効果的に使う工夫が施されている。

車体の浮き上がりを防ぎ、空気抵抗を減らし、エンジンやブレーキの冷却効率を高めるなど、技術者は徹底的な煮詰めを行ったという。

ボルケルト氏は「12気筒エンジンの熱対策や、空力特性も考える必要がありました」と言い、こう続ける。

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3 軸(左右、前後、上下)の加速度と角速度(ピッチ、ロール、ヨー)をリアルタイムに測定する6Dセンサーが採用された。

「なにを優先するかによって、そこでカタチが決まってくる部分があります。スケッチから始めたほうがもちろん楽なんですけども、現実的にはクルマが担うミッションによって、デザインが決まってくる部分があります」

デザインを始めるとき「このクルマの目的はなんだろうということを考えます」とボルケルト氏。ただし、とこうつけ加える。

「コンクールデレガンスに出るような。本当に美しいクルマ。さらにいえば、地球上で一番美しいクルマにしたいと考えました。フェノメノは、2025年だけ美しいのではなく、2030年になっても40年になっても美しい、タイムレスなデザインだと思います」

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アイコニックな「Y」字型を使ったライトシグネチャーと、ボディパネルとリア部を塗り分けているデザインが特徴的。

プレスリリースにも、面白い表現が使われている。

「フェノメノはランボルギーニ独自のデザインDNAを奏でていますが、変調し、リズムを変えて、お客さまやコレクターの皆さまの最も高い期待を超える」デザインを実現したという。

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3Dプリンターで造型された炭素樹脂製のインストルメントクラスターには空気吹き出し口や未来感のあるアンビエントライトが採用されている。

「乗った時に鳥肌が立つようなモーショナルな感覚を、とても大事にしたいと思っています」とはボルケルト氏の言。

すばらしいコンセプトだ。

ランボルギーニ フェノメノ

全長×全幅×全高:5014×2076×1161mm
ホイールベース:2779mm
6498cc V型12気筒プラグインハイブリッド 全輪駆動
変速機:8段デュアルクラッチ
システム最高出力:1080CV(約794kW)@9250rpm
最大トルク:725Nm@6750rpm
0-100kph加速:2.4秒
乗車定員:2名
価格:未発表