ガザの食卓に息づく伝統料理。奪われゆく日常を伝える一冊【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】

  • 文:瀧 晴巳(フリーライター)
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【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】
『ガザ・キッチン パレスチナ料理をめぐる旅』

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ライラー・エル゠ハッダード/マギー・シュミット 著 藤井 光 翻訳監修 萩野聡子/島田 楓/玉田小雪 訳 岡 真理 監修 オレンジページ ¥4,950

ただの料理本ではない。初版が刊行されたのは2016年。ガザの料理人、農家、商人たちを取材し、美しい写真で料理とレシピを紹介したこの本は、ジェノサイドによってなにが奪われようとしているのかを明らかにする。カラフルなサラダ、スパイスを利かせた肉料理、主食でもあるヒヨコ豆をはじめとする豆料理、どれもおいしそうで、パレスチナの伝統料理が本来持っていたはずの豊かさに目を見張る。長く占領下にあったこの地で、食はアイデンティティそのもの。歴史、文化、生活、家族の愛、すべてが詰まっている。

※この記事はPen 2025年9月号より再編集した記事です。