
タトゥーといえば文字やイラストが一般的だ。だが、米ニューヨークのタトゥーアーティスト、ファリド・ハデチニさん(40歳)のもとにやってきた男性客のリクエストはとても意外な内容だった。それは先端を失った指にリアルな爪のタトゥーを描いてほしいというもので、ファリドさんも初めての挑戦だった。
「とても特別な依頼」
「本物そっくりの爪のタトゥーを入れてほしい」ファリドさんにそう依頼したのは、トッドという中年男性だった。彼は15年ほど前に右手の中指と人差し指の先端部分をケガで失っており、爪もなくなっていた。トッドさんは短くなった二本の指の先端にリアルな爪のタトゥーを入れてほしいと、ファリドさんの店を訪れたのである。
このリクエストを受けたときのことについて、ファリドさんは米ピープルに次のように語っている。「指のタトゥーは何回も入れたことがあるし、その作業の複雑さは理解しています。でも今回は、体の装飾ではなくて修復に重きを置いています。とても意味深いし、とても特別な依頼でした」これまでに経験のない依頼だったが、ファリドさんはこの注文を引き受けることにした。
自分の爪だと感じられるタトゥーを
指先のタトゥーは体の他の部位に比べて強い痛みを伴う可能性がある。ファリドさんはトッドさんに十分に説明した後、細心の注意を払いつつタトゥーを入れた。
「その人の体をよく見れば、その人がどんな人なのか、どんな毎日を送っているか多くのことを知ることができる」と語るファリドさんは、トッドさんが自分の爪らしく感じられるように細かい部分まで気を配ったという。施術は3時間にも及んだが、タトゥーの完成した指先を見たトッドさんは「本当に気に入った」と喜び、写真を撮って家族に送ったそうだ。
その出来映えはSNSでも大きな反響を呼んだ。ファリドさんが店の公式Instagramにトッドさんのタトゥーの画像や動画を投稿すると、「この爪がタトゥーなんて思えない」「魔法みたい」「キャプションを読むまでわからなかった」など、多くの人々からも賞賛の声が寄せられた。
「自分の作品を通して様々な人々とつながれることは、本当に素晴らしいことです」ファリドさんにとっても、この仕事は特別なものになったようだ。
---fadeinPager---