
北米に生息する大型のクマ、グリズリーベア(ハイイロクマ)。西部開拓や狩りで個体数が減少し、1975年から絶滅危惧種に指定されていたが、近年その数が増え、モンタナ州で人間の生活圏に出没する事態が頻繁に起きている。
特に食料が豊富で狙われやすい農場では、クマ避けのための犬、別名「ベアドッグ」の活躍に期待が寄せられている。
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危機感から保護解除の声も
モンタナ州の魚類野生生物局(FWP)によると、同州では今年に入ってからグリズリーベアの目撃情報が65件報告されており、うち20件ではグリズリーベアと人間が直接対峙しているという。
人間にとって危険なのは想像にたやすいが、これはグリズリーベアにとっても危うい事態だ。
人間との接触件数が増加するにつれ、絶滅危惧種法の保護対象からグリズリーベアを外すことを求める声が高まっている。ニューヨーク・タイムズ紙によると、イエローストーン国立公園周辺の南側に生息するグリズリーベアを対象に保護をとりやめる(つまり狩猟を許可する)法案も提出されているという。
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ネズミには猫、クマには…
そんななか、注目を浴びているのがベアドッグだ。ユタ州立大学の生物学者、ジュリー・ヤング氏が率いるチームは、番犬の「クマ避け効果」を調査した。
サイエンス誌掲載の研究によると、チームは4カ所の農場にトルコ原産の大型犬種の飼育を依頼。すると犬のいない農場と比較して、犬のいる農場の半径300メートル以内に近づいたグリズリーベアの数が88%減少したという。犬がいる農場にグリズリーベアが滞在した時間は、94%減少した。
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農家「子どもたちが外で遊べる」
FWPのウェスリー・サルメント氏はニューヨーク・タイムズ紙の取材に、「農場はグリズリーベアにとって有益な場所でしたが、危険な場所だという認識に変えるためベアドッグは存在します」と答えた。
かつて、ネイティブ・アメリカンたちは家畜を肉食獣から守るため、犬の助けを借りていた。「肉食獣がいなくなったことで、私たちは家畜護衛犬のことをすっかり忘れてしまいました。今、多くの肉食獣の個体数が回復し、長い間忘れられていた古代のやり方から再び学ぶ必要があります」と、同氏は語る。
犬を受け入れた家族は「農場でグリズリーベアを見かけなくなった」「おかげで子どもたちが家の外で遊べるようになった」「人間を守りながら、グリズリーベアも救っている」と、ベアドッグの力を評価している。
ローマ大学ラ・サピエンツァの保全生態学者パオロ・キウッチ氏はサイエンス誌に、さらに大規模な研究が必要だと話す。
「グリズリーベアが大胆になり、犬がさほど脅威でないことに気づけば、効果が変わるかもしれません」
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Researchers test whether guard dogs could keep a growing number of bears off Montana farms. https://t.co/fer2AtK9v0
— News from Science (@NewsfromScience) May 3, 2024
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A study by Utah State University research professor Julie Young, Ph.D., in collaboration with Montana Fish, Wildlife and Parks bear biologist Wesley Sarmento found livestock guardian dogs could be effective at deterring grizzly bears.https://t.co/YppkREt0KP
— QCNR at USU (@QCNRUSU) June 14, 2024