クマ避けには犬が効果敵だと実証される。 頼りになる番犬“ベアドッグ”とは?

  • 文:Rikako Takahashi
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photo: Erik Mandre/shutterstock※写真はイメージです。

北米に生息する大型のクマ、グリズリーベア(ハイイロクマ)。西部開拓や狩りで個体数が減少し、1975年から絶滅危惧種に指定されていたが、近年その数が増え、モンタナ州で人間の生活圏に出没する事態が頻繁に起きている。

特に食料が豊富で狙われやすい農場では、クマ避けのための犬、別名「ベアドッグ」の活躍に期待が寄せられている。

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危機感から保護解除の声も

モンタナ州の魚類野生生物局(FWP)によると、同州では今年に入ってからグリズリーベアの目撃情報が65件報告されており、うち20件ではグリズリーベアと人間が直接対峙しているという。

人間にとって危険なのは想像にたやすいが、これはグリズリーベアにとっても危うい事態だ。

人間との接触件数が増加するにつれ、絶滅危惧種法の保護対象からグリズリーベアを外すことを求める声が高まっている。ニューヨーク・タイムズ紙によると、イエローストーン国立公園周辺の南側に生息するグリズリーベアを対象に保護をとりやめる(つまり狩猟を許可する)法案も提出されているという。

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ネズミには猫、クマには…

そんななか、注目を浴びているのがベアドッグだ。ユタ州立大学の生物学者、ジュリー・ヤング氏が率いるチームは、番犬の「クマ避け効果」を調査した。

サイエンス誌掲載の研究によると、チームは4カ所の農場にトルコ原産の大型犬種の飼育を依頼。すると犬のいない農場と比較して、犬のいる農場の半径300メートル以内に近づいたグリズリーベアの数が88%減少したという。犬がいる農場にグリズリーベアが滞在した時間は、94%減少した。

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農家「子どもたちが外で遊べる」

FWPのウェスリー・サルメント氏はニューヨーク・タイムズ紙の取材に、「農場はグリズリーベアにとって有益な場所でしたが、危険な場所だという認識に変えるためベアドッグは存在します」と答えた。

かつて、ネイティブ・アメリカンたちは家畜を肉食獣から守るため、犬の助けを借りていた。「肉食獣がいなくなったことで、私たちは家畜護衛犬のことをすっかり忘れてしまいました。今、多くの肉食獣の個体数が回復し、長い間忘れられていた古代のやり方から再び学ぶ必要があります」と、同氏は語る。

犬を受け入れた家族は「農場でグリズリーベアを見かけなくなった」「おかげで子どもたちが家の外で遊べるようになった」「人間を守りながら、グリズリーベアも救っている」と、ベアドッグの力を評価している。

ローマ大学ラ・サピエンツァの保全生態学者パオロ・キウッチ氏はサイエンス誌に、さらに大規模な研究が必要だと話す。

「グリズリーベアが大胆になり、犬がさほど脅威でないことに気づけば、効果が変わるかもしれません」

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トルコ原産の大型犬、カンガール・ドッグ。@taylorth0ma– TikTokより

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ユタ大学のジュリー・ヤン博士による発表を報じるNBCニュース。@QCNRUSU– Xより