
ちょっと旧めのスポーツカーが好きな友人が、普段の足に「A4 アヴァント」に乗っている。記憶してる限り、ずっと乗っている。最新のアウディの名付け方でいうと、偶数はEV用のナンバーになったので、「A4」の新作は「A5」になるのね。
それはともかく、今回はその上位グレード「S5 アヴァント」の新型に乗ってみた。そしてなるほど、「やっぱりいいよね」と膝を叩いたんだ。

走った距離は1000kmで、走れば走るほどその実感は強まるばかり。
ワゴンなので、スポーツカーじゃ行けないキャンプや家族イベントに最適。それも選ぶ理由になるものの、アウディは旧車じゃ絶対に味わえないコンフォタブルゾーン(快適の域)が突出してるんですよ。静かで軽快で、移動するのになんのストレスも感じない。むしろ毎日乗りたくなる、身も心も軽くしてくれる乗り味が持ち味なんだ。

朝、家族を駅まで送るとか、気分転換にドライブスルーのスタバに行くとか、旧めのスポーツカーではイマイチやる気の出ないお出かけを、積極的にカバーしてくれる。
これ、ドイツ御三家で考えてみても、アウディが突出してフレンドリーなんだな。キャンプでスーパーへ買い出しに行かなければいけないとして、アウディならいつも答えは陽気に「Why not?(断る理由なんてないよ)」なんですよ。
それがメルセデスだと「Pardon?(もう一回言ってくれる?)」で、BMWだと「Really?(マジで俺?)」みたいな感じ(笑)。旧めのスポーツカーなら「What?(はぁ?)」ですよ。
つまり、そんな気軽さや身軽さとは縁遠い(笑)、旧めスポーツカーの持つガツガツとした内燃機関ならではの荒々しさや、カッチリ固められた足まわりみたいな“クルマらしさ”とは正反対のところにあるクルマなんだ。

なるほど。セカンドカーに「A4」を選んでた理由はそこですか。いや、まぁ知ってたけどね(笑)。ただ最近EVやらPHEVやら重いクルマばかり乗ってる自分にとっても、搭載された3LV6ターボは最高の解毒剤になった。
ターボで常用域のトルクをカバーし、自重を難なく扱える。これで充分。新型はだいぶ重くなったものの「エンジン車って軽いよね」と、いまさら実感したね(笑)。峠はもちろん、街中だってドライブモードは「ダイナミック」で快適至極。
足まわりはいつもゆらりゆらりとリラックスした体で、硬さを感じさせることはない。アダプティブダンパーの狙いどころは安定性であり、乗り心地を犠牲にはしないのね。7速デュアルクラッチだって、切れ味鋭くシフトするというより、ショックを感じさせず、じわっと滲むようにつながる。攻め込めばオーバーステアリング気味でも、ピーキーさとは無縁でずっとハンドルを握っていたくなる心地よさ。

さらに感覚や世界観の話をすると、たとえばサウンドシステムのイコライザーは高音と低音のみで中音がない。このサウンドデザインはエッジの効いたアウディらしさですよ。音楽の空気感を伝えてくるし、まずトラックワークが耳につく。
世界観でいえば、アウディって体験のひとつひとつが写真を観るのに似ていると思っていて、「S5 アヴァント」は特にそれを感じたのね。たとえば1970年代のアメリカン・ニューカラーの写真が、いつ観ても新鮮な感動を呼び起こすのに似ている。

見慣れた風景を特別に見せることもそうだけど、スティーブン・ショアの写真みたいに、もはやそれ自体が既知の視点のはずなのに、初めて観るような驚きが常に存在している。このアウディらしさは、VR体験のような解像度の高い経験に事欠かない現代でも、いまだに有効なんだと思った。
だからこそ、もう少し泳いでいたい真夏のプールに似て、エンジンモデルのアウディは抗いがたい魅力を放っているんだな。
アウディ S5 アヴァント
全長×全幅×全高:4,829×1,859×1,425mm
排気量:2,994cc
エンジン:3.0ℓ V型6気筒DOHC ガソリン ターボ
最高出力:367PS /5,500-6,300rpm
最大トルク:550Nm/1,700-4,000rpm
駆動方式:quattro(フロントエンジン4輪駆動)
車両価格:¥10,600,000
問い合わせ先/Audi コミュニケーションセンター
TEL:0120-598-106
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