19世紀から続く老舗が手掛ける、柑橘をブレンドした爽快な白ビール【プロの自腹酒 vol.33】

  • 文:山内聖子
  • 写真:榊 水麗
  • イラスト:阿部伸二
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ラーデベルガー/シェッファーホッファー グレープフルーツ

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小麦が原料のヴァイツェン、つまり白ビールをドイツ全土に広めたという、19世紀に誕生した老舗のブルワーが手掛けた一本。白ビールをベースに、グレープフルーツをはじめとする柑橘系の果汁を絶妙にブレンドした爽快な味わい。甘みと苦味のバランスがよく、後味はすっきりと軽い。アルコール度数は2.5%なので、酒好きはもちろんのこと、酒が弱い人にもお薦めだ。暑い季節には、しっかり冷やして飲みたい。330mL ¥327/都光 TEL:03-3833-3541

幼少期から祖父・古谷三敏の作品『BARレモン・ハート』を自然に愛読していたという、筋金入りの酒のプロであり、愛好家である古谷陸さん。まだ若き34歳だが、古谷三敏仕込みの酒の経験値は豊富で、あらゆる酒への造詣が深い。

「小さい頃から(口にはしないが)酒に触れる機会が多く、古谷先生が酒を嗜んでいる場が身近にありました。読者のみなさんにはうらやましがられるほどの役得だと思いますが(笑)、こちらが求めなくても、いい酒は当たり前のように自分のそばにあるものでした」

そんな"いい酒”を知り尽くした陸さんが自腹で買いたいと教えてくれたのが、ドイツの“シェッファーホッファー グレープフルーツ”。小麦を原料としたヴァイツェン系のビールがベースの軽快な一本だ。

「実は最初にハマった酒がクラフトビールなのですが、このビールに出会ったのはまさに酒を飲み始めた20歳です。当時はベルギーのランビックと呼ばれる熟成系の酸味が強くて濃いフルーツビールが全盛だったので、ホッファーを飲んで、『軽くて美味い!』と驚きました。アルコール度数は低いですが、薄くなく満足感がある味わいで、自宅で1杯だけ飲みたい時にも最適。ほろ酔い加減が楽しめる幸福度が高いビールなので、普段飲む酒として気に入っています」 

さらに、昼夜問わずに飲みたくなるところや、合わせるつまみを選ばない柔軟性も魅力だというが、陸さんの酔いおともは“仲間”である。

「ひとりだと仕事モードになってしまうので、ホッファーのような幸福ビールは仲間と飲むほうがリラックスできておいしさも倍増します」

そして、酒を知り尽くしたからこそ、どこまでいっても酒は「娯楽であるべき」ときっぱり。陸さんにとってこの酒は、そんな世界観を体現してくれる最高に楽しい一本だ。

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リラックスして、仲間と飲む酒が美味い

どんなつまみよりも酒が進む“仲間”が酔いおとも。「酒の味を共有できる人がいたほうがよりおいしく飲める」と古谷さん。仲間との他愛もない会話が酒の満足度を上げてくれる。

古谷 陸

1990年、東京都生まれ。人気漫画『BARレモン・ハート』の作者である古谷三敏の孫であり、「BARレモン・ハート」二代目オーナーバーテンダー。

BARレモン・ハート

住所:東京都練馬区東大泉4-2-15 原田屋ビル B1
TEL:03-3867-1682

※この記事はPen 2025年8月号より再編集した記事です。