初夏とは思えぬ暑さだった、2025年6月。今年も長野県茅野市にある高原、蓼科にて、TVR Car Club Japan主催のイベント「TVR DAY」が開催された。かつては英国を代表するスポーツカーメーカーだったTVRだが、再建の動きがありながらも結局かなわず、現在に至っている。そうした背景もあり、今回集まったクルマたちは非常に希少な存在だ。早速、このイベントに集ったクルマを紹介しよう。
グランチュラMK2

まず最も目を引いたのは、オールドTVRを代表する1961年式「グランチュラMK2」。オーナーは横浜在住の夫婦で、今年で2回目の参加となる。コ・ドライバーを務める夫人は、エアコンなしという厳しい環境でも、完璧なナビゲーションをこなして会場に到着。車重はわずか700kg、レース用にチューニングされたMGA 1600ccエンジンを搭載。今回参加したTVRの中でも最もスパルタンな一台だ。
タスカン

近年のTVRを象徴するモデルとして真っ先に思い浮かぶのが、この「タスカン」だろう。その特徴は、なんといっても多彩なボディカラーと独創的なデザイン。搭載されるのは、自社開発の直列6気筒「Speed Six」エンジン。1,100kgのボディに対し、390PSという強力なパワーを発揮。カタログ上の最高速度は305km/h。TVRらしさを凝縮したモデルといえる。
サーブラウ

地獄の番犬ケルベロスの名を冠した「サーブラウ」。TVRとして唯一の2+2GT仕様でありながら、エンジンはAJP8とSpeed Sixの2タイプが存在する。写真はより過激なほうのAJP8を搭載したモデルであり、その運転の難しさから「最も危険なTVR」とも呼ばれる存在だ。しかし、なぜこんな暴れん坊エンジンを搭載したのか? そう思い、オーナーに話を聞くと仕事はエアラインの機長とのこと。なるほど。
キミーラ

筆者が以前乗っていたキミーラ。TVRの中では比較的乗りやすいモデルだ。古典的なスポーツカーデザインが美しい。搭載されるのはローバーベースのV8エンジンながら、TVR流のチューニングにより吹け上がりは非常に鋭い。脱着可能なルーフも、このモデルの大きな魅力のひとつである。
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TVRに求められる、主体性のあるオーナー達
「TVR DAY」は前夜祭と総会を含む2日間にわたって開催される。初日には恒例のチャリティオークションが行われ、収益金は石川県の震災復興機関へ寄付された。2日目は“走り”が中心のプログラム。午前中は蓼科のワインディングを楽しみ、昼食を兼ねた総会後は、近くの牧場へ移動して記念撮影。それぞれが来年の再会を誓い、散会となった。

TVRは、鋼管スペースフレームのシャーシにFRP製の軽量ボディ、大排気量エンジンを組み合わせた、スパルタンなスポーツカーである。ABSや車両制御システムといった電子的な運転支援機能は一切持たない、ある意味で"究極のドライバーズカー"と言える存在だ。「乗せられるクルマ」ではなく、あくまで「自分が主体となって操る」スポーツカー。その本質的な魅力が、いま改めて見直されつつある。
クラブ自体は非常にフレンドリーな雰囲気で、近年は若いメンバーの入会も増えてきている。若手がこうしたクルマを苦労して入手し、心から楽しんでいる姿を見るのは、実に嬉しいことだ。今後もTVRCCJの活動がさらに盛り上がり、この希少なTVRが元気に走り続けることを願ってやまない。