若きリヒターが描いた幻の壁画、修復で公開へ。知られざる原点に驚きの声

  • 文:河内秀子
Share:

BERLIN ベルリン/ドイツ

1_DHMD_Richter_Lebensfreude_Restaurierung_Andreas_Rost.jpg
ドレスデンにあるドイツ衛生博物館のホワイエに設置されている壁画。上から塗りつぶした壁材の除去は2022年に計画され、いまも作業が進んでいる。  photo: Andreas Rost © Gerhard Richter 2025 (04072025)

93歳になったいまも精力的に制作を続ける巨匠、ゲルハルト・リヒター。今年発表したドローイング作品も、その新しさに高い評価が集まっている。そんななか、24歳だったリヒターが東ドイツで描いた壁画が姿を現し、話題を呼んでいる。

1956年にドレスデン美術アカデミーの卒業制作としてドイツ衛生博物館に描かれた壁画『人生の喜び』は、公共空間に現存するリヒター唯一の作品。完成後、上塗りされて90年代まで忘れられていたが、長い修復作業を経てその姿を現しつつある。本作品の完成から5年後に西ドイツに亡命し、現代アーティストとして歩み始めたリヒター。壁画家としての初期作品もファンには見逃せない。

2_DHMD_Richter_Lebensfreude_Totale_Andreas_Rost.jpg
社会主義社会の中で若い男女が人生の段階を経ていく様子を描いた『人生の喜び』。ドレスデン美術アカデミーの修了時に制作。総面積は63㎡にわたる。 photo: Andreas Rost © Gerhard Richter 2025 (04072025)

※この記事はPen 2025年8月号より再編集した記事です。