クルマ好きにとっての“明るい未来”を感じさせる、ベントレー「GTCスピード」の古くて新しい魅力

  • 文:小川フミオ
  • 写真:ベントレーモーターズ
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世界で最もぜいたくなオープンスポーツカーといえば、ベントレーの「コンチネンタルGTC」が思いつく。なかでもトップクラスの性能を持つGTCスピードに、2025年6月、米国で乗った。

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充電されていればまるで電気自動車のようにバッテリーで走行できてしまう。

オープンカーのよさは、いくつになってもカッコがつくこと。先日、テレビを観ていたら、モナコ大公のアルベール二世がフェラーリのオープンモデルに乗っていた。1958年生まれだが、よく似合っていた。もちろん若くてもオーケイ。日本でも同じことが言えると思う。

オープンモデルは、実はスタイルが多様。マツダ・ロードスターのような軽量化を追求したモデルから、BMWのZ4、究極はフェラーリSF90スパイダーまで、スポーツカーでもさまざまだ。

一方、4人乗りのオープンもよい。比較的ボディがコンパクトなミニクーパー・コンバーチブルにはじまり、メルセデス・ベンツCLEカブリオレ、BMW M4カブリオレなど、個性的なモデルが並ぶ。フォルクスワーゲンにもT-ROCカブリオレという魅力的なモデルがあるけれど、残念ながら日本には導入されていない。

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この仕様はリネンとクリケットボールというデュオトーンの仕上げで、オープンポア(木材の質感を残した塗装)のウッドパネルで雰囲気がある。

ベントレー・コンチネンタルGTCは、2003年に発表されたコンチネンタルGTのオープン仕様として、06年に追加された。コンチネンタルGTの企画段階からGTCも計画されていたのだろう。クーペのスタイルを活かしながら、美しいデザインが実現されている。

GTCスピードは、高性能モデルとして、09年に第1世代が設定された。現在の第4世代は24年に発表。先代はW12という狭角12気筒を搭載していたけれど、プラグインハイブリッド化されたV型8気筒に変更されたのが、大きな話題を呼んだ。

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新意匠のヘッドランプと大きなグリルの組み合わせで、あたらしくてかつ伝統的な衣装が特徴的。

変更点は多く、たとえばヘッドランプ。第3世代までは4灯式がトレードマークのようになっていたが、一気にLEDを使った新世代へとデザインが変更された。

一方で、ベントレー車といえばの大型グリルは継承されている。大きなエンジンを冷却するための大きな開口部。これが戦前からのベントレー車の特徴だった。最新モデルでもこういうところをパワーの象徴としており、従来からのクルマ好きは「いいなあ」と思うだろう。

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リアビューは低さが強調されていてスポーティな雰囲気が濃い。

私がコンチネンタルGTCスピードに乗ったのは、米モンタナ州のスキーリゾート(夏なのでガラガラ)。車幅は広いが、車高は低く抑えられ、いわゆるワイド・アンド・ローのスタンスがスポーティだ。

ソフトトップを開けると、凝った仕上げのインテリアが強い印象を与える。シートは「ダイヤモンド・イン・ダイヤモンド」とベントレーが呼ぶ立体的な刺繍が施されているし、ダッシュボードはウッドを使い、適度にクラシカルな雰囲気が、ほかにない特徴だ。

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ダイヤモンド・イン・ダイヤモンドとも呼ばれるキルティング仕上げの仕様も選べる。

パワートレインは、先に触れた通り、プラグインハイブリッドなので、けっして古典的ではない。バッテリーがフル充電の状態で、81kmのモーター走行が出来る。アメリカの道では、ほとんどエンジンがかかることがなかった。

バッテリーだけでもたっぷりとというかんじでトルクが出る。重量級の車体の走りをしっかり支えるサスペンションシステムと、シャープな切れ味のステアリングシステムと、たいへんバランスよく組み合わされている。 

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後輪操舵システムもそなえ、スポーツモードで走ると、かなり楽しい。

無音のまま、陽光を浴びてワインディングロードを気持ちよく疾走するという、異次元とでも言いたいドライブフィールが味わえる。幌を下ろしていると、ウインドシールドの前後長が短いので、ちょっと視線を上に上げただけで、前方の空が目に入る。これはオープンドライブの醍醐味。 

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スペースは限られるが後席にもりっぱな作りのシートがそなわるのが、コンチネンタルGTCの魅力。

車重が2.4トンあるが、モーターがトルクを積み増してくれるため、重さを感じる場面はなかった。重量のある車体ゆえの、どっしりとして落ち着いた乗り味は、コンチネンタルGTCスピードの持ち味のひとつといってもよいだろう。

プラグインハイブリッドシステムをうまく使った、最新のコンチネンタルGTCスピードは、この先もぜいたくなオープンドライビングが可能という、クルマ好きにとって明るい未来のシンボルのようだ。

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クロームパーツを多用しているのも、ベントレー車のおおきな魅力。

米国のトランプ大統領による英国車への関税措置は、年10万台まで10パーセントで、それ以上は追加課税の対象となるとされる。現状の輸出台数は10万台の範囲に収まるようだが、ベントレーモーターズでは、販売店にストック(即売できる車両)は置かず、オーダーで対応していくようだ。

コンチネンタルGTCのようなモデルは、カリフォルニアやフロリダのようなマーケットがあってこそ“成長”してきた側面があるので、状況が好転することを祈りたい(日本車はもっと深刻だけれど)。

ベントレー コンチネンタル GTC スピード

全長×全幅×全高:4895×1966×1392mm
ホイールベース:2848mm
車重:2636kg
エンジン:3996ccV型8気筒+プラグインハイブリッド 全輪駆動
変速機:8段デュアルクラッチ
システム最高出力:575kW
システム最大トルク:1000Nm
乗車定員:4名
価格:¥4,312,000
問い合わせ:ベントレーモーターズ ジャパン
www.bentleymotors.jp