まるで常勝クラブの哲学みたい !? 巧みな戦術を駆使した“負けない”電動SUV。ポルシェ「マカン ターボ エレクトリック」【第225回 東京車日記】

  • 写真&文:青木雄介
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プレミアムEVプラットフォームを採用した新型は、EVながらもポルシェの哲学を体現する。

ポルシェの「マカン ターボ エレクトリック」に乗った。稼ぎ頭であるマカンはエンジンモデルとEVモデルが併売されることになった。これだとパワートレインを選べるメリットはあるものの明快に違いが出るわけで、EVモデルの共存は危険な賭けとも言える。でもポルシェはやったね。この勝負に勝利した。

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インテリアはデジタル化とサステナビリティを重視。

まずガソリンモデルとのいちばん大きな違いは重量であり、回生ブレーキの使い方にある。ポルシェの回生ブレーキはオンにするとエンジンブレーキに似ているんだけど、デフォルトはオフ仕様なのね。それで走らせると、街乗りや高速でのブレーキ操作はブレーキペダルのみになる。定速走行に入ると、ほぼトルクがゼロのコースティング走行なので、まったく負荷を感じない、クルージングをしているような気持ちよさがある。

本領を発揮するのはやっぱりワインディング。ポルシェの回生ブレーキ・オフ仕様のメリットは、タイカンと同様にヒルクライムで発揮される。踏めば4輪でアスファルトを削らんばかりの猛烈な加速。それでいて坂を登っていくスピードがアクセルと完全にシンクロするので、ギンギンに思い通りのラインで登っていく。それこそ峠はずっと登っていたいぐらい最高なのね。

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ブラックとシルバーの“ターボ”専用エンブレム。

逆に下りは回生ブレーキをオンにしつつ、フットブレーキをきっちり踏む。ブレーキの効きがしっかりしている上に、どこで電力を回生しているのかわからないほど自然に回生ブレーキを馴染ませている。そして電費のよさにも驚かされるんだ。

ステアリングは後輪操舵とトルクベクタリングがあいまって、クイックな、やや食い気味のオーバーステアリング。コーナリングはエアサスによるツインバルブダンパーがロールを抑え、ステップを踏むようにリズミカルにクリアする。重心の低さをしっかり感じつつ、素早く、次のコーナーへ意識が向かう。

この走行特性が、日常の運転にも効いてくる。ブレーキペダルを踏む回数は増えるものの、回生ブレーキで重量感を感じさせない配慮になっているわけ。ワンペダルドライブとは真逆の解放感をもたらしてくれるし、同じEVでもワンペダルによる操作を積極的に利用させようとする一般的なメーカーとも真逆の考えなんだな。まぁ、この違いは宗派の違いみたいなものですよ(笑) 

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低重心と新型ツインバルブダンパーにより、2.4トンの車重を感じさせない俊敏な走行性能を実現。

ともかく、いまなら熟成が最高度に到達したエンジンモデルの第三世代マカンか、EVマカンかを選べる。どちらを選んでも後悔はしない。その違いは、まるで習熟された審美眼で構成されたアナログなサウンドシステムの感動に対する、高解像度音源による3Dサウンドの驚異というべきか。内外装も、これまで大きな変化を加えられなかったマカンを大胆にモダナイズしているのが象徴的だね。

結論。マカンEVの重量や回生ブレーキなどネガティブを漏れなく消しにくる姿勢は、サッカーでいえば常勝クラブの哲学みたいだった。戦術で勝つし、技術でも勝つ。さらには「ポルシェらしさ」に新鮮な感覚をももたらせた。そう。どちらのアクセルにも勝利があって、それは既に約束されているんだ。

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800Vテクノロジーによって、最大出力270kWの超急速充電が可能。残量10%から21分で80%まで回復する。

ポルシェ マカン ターボ エレクトリック

全長×全幅×全高:4,784×1,938×1,621㎜
モーター:永久磁石同期式モーター2基
バッテリー容量:100kWh
最高出力:639ps(オーバーブースト時)
システム最大トルク:1,130Nm(オーバーブースト時)
最大航続距離:591km(WLTP)
駆動方式: 4WD(4輪駆動)
車両価格:¥15,250,000
問い合わせ先/ポルシェ コンタクト
TEL:0120-846-911
www.porsche.co.jp

※この記事はPen 2025年8月号より再編集した記事です。