旅多きファッション人3名が語る、夏旅に「これだけは持っていく服」<前篇>【着る/知る Vol.198】

  • 写真・文・編集:一史
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パンツブランドのニートのデザイナー、古着バイヤー、にしのや代表の西野大士さん。アメリカ出張に行く直前の彼をキャッチしてリアルタイムな旅アイテムを教えてもらった。

旅に持っていく選び抜いた服は、自身に本当に必要な最小限のワードローブでもある。その目線は周囲へのお洒落アピールか、快適な着やすさか、身体を守るギアの機能性か……。旅をキーワードに2025年の大人のクローゼットを見つめ直してみたい。
ここでは国内外の出張が多いファッションを仕事にする3名に、「夏旅にこれだけは持っていく服」を見せてもらった。7月にパリ・ファッション・ウィークから帰国したばかりの2名と、これからアメリカに渡る1名。古着派、モード派、ノンジャンル派と趣味も立場も異なるハイセンスなプロたち。今回の前編はマルチなファッションクリエイター西野大士さんの登場だ。

古着好き、アメカジ好きの西野大士。1週間のアメリカ出張のミニマルなセレクト

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西野さんが最小限に絞り込んだ旅の持参ワードローブ。

西野大士さんはパンツブランドのニートのデザイナーであり、自身のショップに置く古着のバイヤーでもある。多数のブランドやショップとのコラボ企画もひっきりなしに舞い込む大忙しの人気クリエイターだ。ブルックス ブラザーズ ジャパンのPR部署で長く働いた経験を持つ西野さんのファッションの基軸はアメリカとイギリス。クラシックなドレスウェアと古着をミックスした気取りのない服装を好む。
その西野さんが「これだけは」というより、「これさえあれば」のミニマルな旅の荷物を披露。ニューヨークとロサンゼルスの工場と店を訪れる1週間旅の基本ワードローブだ。
「荷物いつも少ないんです。理由は買付けも仕事なので、現地でどんどん増えていくから。ニートハウス(ニートの直営店)の海外店がある韓国に行くときは数日の滞在をトートバッグ1個で済ませちゃいます。ほかに必要になったらそこで買えば間に合いますから。長年の経験を経てこういう旅スタイルに行き着きました」
今回古着が多くカジュアルな服装なのは、アメリカ出張だからだそう。
「パリの展示会に出展するときはドレッシーなニートのパンツや革靴を持っていきます。ヨーロッパには『格のある場には格のある服装』という考え方があり、どんな服でも許される土地柄ではありません。アメリカはだいぶ緩いので、ラフな服装でもだいたい問題ないですね」

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左から時計回りに、アヤメの跳ね上げ式サングラス。「度を入れて使ってます。サングラス部分が不用意にずり落ちてこない優れものです」。ナイキの2,000年代のデジタル腕時計は、「なくしてもダメージが少なくGショックなどもよく使います」。パタゴニアのウエストバッグは大のお気に入り(詳細は本文を参照)。軽快なルナサンダルは、「夏らしいサンダルを履きたくて。いざというとき走れる機能性が旅に欠かせませんのでこれを選びました」

そんな西野さんが「とにかくこれがマスト!」と言い切る最重要アイテムが写真上段のウエストバッグ。古着で購入したパタゴニアのもので、同型を見かけては何色も買い足している。
「生活のライフライン、例えばスマホ、財布、パスポート、モバイルバッテリーなどをすべてここに収めてます。いろんなウエストバッグを使ってきましたが、このパタゴニアが自分には一番便利です。ほかの荷物を全部失ったとしても、これさえあれば生き残れます」
スリが多い都市ではサコッシュでさえ財布を抜き取られることがあるそうだ。でもこのバッグならその心配なし。西野さんがもっとも頼りにしている旅のパートナーだ。

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右はアークテリクスのゴアテックス搭載ジャケット。傘をささずレインウェアでまかなうのが西野流の雨の日の過ごし方。左は飛行機内などでの防寒用フリースジャケット。

夏旅でもクーラーの効いた室内での防寒対策は欠かせない。「絶対に必要とはいえませんが」と言いつつ今回はパタゴニアのフリースジャケットを持っていく予定。さらに重要なのが雨降り対策の防水ジャケットだ。これはアークテリクスのもの。
「イギリス人やアメリカ人への憧れがあるからでしょうか、傘をささずに雨の中を歩くのが好きなんです。でも今年1月のパリ出張では天気予報に反して5日間も雨が降り続きまして。反省して旅先にはレインウェアを持っていくことに決めました。このアークテリクスは本格登山に対応する高スペックのアルファシリーズのもの。これほどの防水性は今回必要ない気がしますが、着たい服を持っていくことにしました」

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ブルックス ブラザーズのトラディショナルフィットのシャツ。ビジネス対応の服も仕事旅では持っていく。

もう一着、あると便利な厳選ワードローブが、ブルックス ブラザーズのキャンディストライプの上品なボタンダウンシャツ。
「仕事旅のとき現地で急に、『え、取引先の社長に会うの!?』なんてハプニングがあります。そんなとき品格のあるシャツが1枚あると役立ちます。青いキャンディストライプを今回選びました。これだとカジュアルな羽織ものにも使えます」
ドレスシーンでも普段着にも着やすく汎用性の高いシャツの選択が西野さんらしいセンスだ。

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まさに日本の空港に向かうときの服装と旅行トランク。現地で着る服をなるべく身につけて荷物を軽く。壁に並んでいる黒カートバッグは、服の商品やサンプルを国内外に運ぶときに持ち出す道具。今回の旅では出番なし。

最後に「とっておきのがあります!実は旅行トランクにもこだわりがあって」と笑顔で見せてくれたのが、今回の運搬のメインに使う予定の一品。鮮やかなブルーがポップ……と思いきや、
「アメリカのスーパーで買った新品です。なんと値段が日本円で約18,000円の安さでした(笑)。
お金を掛ける人が多い旅行トランクを、チープシックにするのが西野さんのセンス。サムソナイトが製造しているこのアメリカンツーリスターは以前からほしかったトランクとのこと。
「気になっていた品をアメリカ旅で発見。荷物が多く必要に迫られて購入しました。慌てて入ったスーパーでこれ一個だけが在庫にあって、すかさず買いました」
お金を掛ける=洒落た装い、でないことを教えてくれる西野さん。一方で普段の日常では高級なドレスウェアやイギリス最高峰の革靴もさらりと身につける。いいモノを深く知ると、「やっぱりこれが好き」と自分らしい装いに還っていくのかもしれない。

information

ブルックス ブラザーズ × ニートの新作が近日発売!インディゴ糸のデニム風ヘリンボーン生地で、シャツ、ロングパンツ、ショーツ、キャップの4型を揃えたフルセットアップ対応コレクションだ(9,900〜38,500円)。東京「ユナイテッドアローズ&サンズ 渋谷」と同オンラインにて7月18日(金)に先行発売され、26日(土)より「ブルックス ブラザーズ」の一部直営店で一斉発売される。 ブランドを深く知る西野さんならではのレトロモダンなデザインをお見逃しなく!

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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