各国の伝統と知識を再解釈、世界的権威“ルレ・エ・シャトー”が目指す新たな取り組みとは

  • 文:Pen編集部
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「コミットメントランチ」で素晴らしい料理を披露した3人のシェフ。左から、髙木慎一朗、ギャリー・イン、加茂健。それぞれの出身、ホテルが持つ地域の食材を使用した、各国の季節を感じられるメニューが提供された。

厳格な審査をクリアしたホテル、レストランのみが加盟できる、世界的な権威として知られる非営利組織「ルレ・エ・シャトー」。1954年にフランスで発足し、現在では、加盟店は世界65カ国、580に及ぶ。そんなルレ・エ・シャトーが昨年11月、ユネスコとのパートナーシップを発表。「世界のホスピタリティと料理の伝統を守ること」「生物多様性の保護と発展に貢献すること」「より人間味のある世界のために日々行動すること」という3つのミッションを掲げている。

7月上旬、このパートナーシップを記念した「コミットメントランチ」が東京・永田町のザ・キタノホテル東京で開催。生物多様性の保全と、その持続可能な利用に貢献することをテーマに、銭屋の髙木慎一朗、King’s Joy(キングス・ジョイ)のギャリー・イン、ザ・キタノホテル東京の加茂健が、その腕を振るった。それぞれのホテルやレストランが所在するの地域の特徴やコミュニティ、生産者の価値をもとに、独創的なメニュー6品が提供された。

テロワールを深く再解釈した料理

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ギャリー・インによる「松茸のスクウォッシュ」。

今回のイベントのために来日したギャリーインは、中国版初のミシュランガイドで初の二つ星を獲得。翌年には、中国初の持続可能なガストロノミー賞であるミシュラングリーンスター賞を受賞。世界最年少でミシュランの三つ星を獲得したシェフとして知られている。そんな彼が提供したのは、中国の薬膳を意識したベジタブルメニューだ。

ギャリーシェフは、この料理について「日本で秋の風物詩として人気がある松茸ですが、中国では夏野菜として親しまれています。今日は、両国で親しまれている食材を主役にしました。ゲストの皆さんが日本の猛暑を乗り切れるよう、中国の薬膳スパイスとして用いられる、“花椒”をアクセントにしています。ぜひ、汗をかきながら食べてほしいです」とコメント。中国と日本、それぞれの食材や文化にリスペクトを込めた。

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髙木慎一朗による、「鱧 丸茄子 吉野仕立て」。

続いて魚料理は、髙木シェフが担当。肉厚な吉川ナスと鱧を、鰹と昆布、醤油をべっこう仕立てにしたソースで仕上げた上品かつ優しい味わいだ。

「カトラリーは、日本料理の枠に問われないような海外のお客様にも馴染み深いものを使っていますが、料理は日本料理の基本であるべっこうソースでシンプルに仕立てました。世界中の美食家のみなさんがたべつかれないように、“ほっとした味”に仕上げるよう、心掛けました」と髙木シェフ。まさに全世界のゲストへのおもてなしを感じる一皿だ。

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加茂健による「キャビア・米発酵・熟成蜂蜜」。

最後のデザート2品は加茂シェフが担当。特に印象的だったのが、「キャビア・米発酵・熟成蜂蜜」だ。

そら豆のアイスの下には、日本産の米を発酵させたものを和えて食べるデザートは、まるでフランスのデザートのリ・オレを思わせるエキゾチックな仕上がり。熟成した濃厚な蜂蜜が、日本米本来の甘味のポテンシャルを最大限に引き出した。我々日本人には新たな感覚を、そして海外ゲストには日本米の魅力を気づかせる驚きの一皿。

時代に合わせたグルメとおもてなしを提供し続けているルレ・エ・シャトーの取り組み。ルレ・エ・シャトーの加盟は、我が国では20軒とわずかだが、今後ますます日本でも発展していくことに期待したい。

ルレ・エ・シャトー

www.relaischateaux.jp