レッサーパンダによる“お目覚めサービス”が受けられるホテルが人気沸騰…「絶滅の危機に瀕しているのに」と批判の声も

  • 文:大村朱里
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Shutterstock-aktarulislam068 ※写真はイメージです

「朝起きたらベッドの横にレッサーパンダが…?」そんな一風変わった“モーニングコール”を売りにしていた中国・重慶のホテルが、SNSで思わぬ非難を浴びている。

問題となったのは、重慶市南西部にある「レヘ・レドゥ・リャンジャン・ホリデー・ホテル」。このホテルは、絶滅危惧種に指定されているレッサーパンダをテーマにした宿泊プランを展開していた。

客が泊まる客室に、飼育されているレッサーパンダをスタッフが連れて行き、宿泊客の“目覚まし役”として動物とふれあえるという内容だ。部屋の中でレッサーパンダを撫でたり、餌をあげたり、ベッドを歩き回る姿を撮影したりする様子がSNSで拡散され、「かわいすぎる」と話題に。

レッサーパンダだけでなく、ホテルは別プランとして絶滅危惧種のワオキツネザルとも至近距離で触れ合えるヴィラも用意。宿泊料は1泊約2万円〜10万円超と幅広く、観光インフルエンサーの投稿で一気に人気が加速した。

しかし「かわいい!」の声と同時に、「絶滅危惧種を娯楽に使うのはどうなのか」と批判が噴出。中国の野生動物保護法では、こうした動物を人前に出す場合には“安全対策と動物の福祉確保”が義務付けられているが、詳細が曖昧なままSNSで拡散されたことで議論が拡大した。

過去には噛まれ事故も…専門家は警鐘

専門家からは「動物がストレスで予測不能な行動をするリスクが高い」との指摘あり、事実、今年2月には江蘇省の別の野生動物ホテルで、ゲストがレッサーパンダに腕を噛まれた事例も報告されている。

ホテル側は「動物にはワクチン接種をしている」と説明するが、専門家は「ワクチンでは問題は防げない」と話している。批判の高まりを受け、地元の林業局はホテル側にサービスの中止命令を出し、調査を開始。すでに両プランともオンラインでの予約受付は停止された。

ペット経済ブームが生む、かわいいけど危ないビジネス

近年の中国では、珍しい動物と一緒に過ごす“非日常体験”がブームに。ピクニックにアルパカを連れてきたり、キリンと一緒に朝食をとったり…。SNS映えは抜群だが、その裏で動物のストレスや安全面への懸念が取り沙汰され続けている。

「癒されたい」観光客と、「映えたい」SNS文化が生んだこのホテルの“動物お目覚めサービス”。あなたはどう思うだろうか。

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【動画】ホテルの宿泊客にサービスするレッサーパンダ。