車台はポルシェと共同開発、アウディ「Q6 e-tron」は新時代の電動SUVだ!

  • 文:小川フミオ
  • 写真:アウディジャパン
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アウディ「Q6 e-tron(イートロン)」が2025年4月に日本でも発売された。アウディが手掛ける最新のバッテリー駆動のSUV。ポルシェと共同開発したプラットフォーム(車台)を使う、初の市販モデルというのも大きな特徴だ。

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ポルシェと共同開発したBEVプラットフォームPPE(プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック)を使用。

張り感のあるボディが魅力的なモデルだ。アウディ車の魅力といえば、つくりの質感。そのことを改めて知らせてくれる。2895mmのホイールベースと全長4770mmの車体と、比較的余裕のあるサイズであるけれど、間延びしてみえない。

実際のディメンション(ボディサイズ)よりコンパクトに見えるのは、ボディデザインの妙。自動車のデザインにおいては、グッドデザインは凝縮感があるものとされる。Q6 e-tronはそれを実感させる。 

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PPEの採用により、長いホイールベースと非常に短いオーバーハングを特徴とする。

抑揚の付け方にも、アウディデザインの特長が表現されている。代表的なディテールは「クワトロ・ブリスター」とアウディが呼ぶ、前後フェンダーのアクセントライン。1980年に登場して、世界ラリー選手権で大活躍をみせた「ビッグクワトロ」で採用された、パネルごとふくらませて車輪を格納するオーバーフェンダーの解釈がブリスターだ。 

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1980年に登場してラリーでの大活躍とともにデザインでも大きな影響力のあったオリジナル「クワトロ」。

アウディはある種のスポーティさの表現として、その後もブリスターフェンダーにこだわってきた。アウディの言葉を借りると「テクノロジーの可視化」だそう。上手な表現だと思う。

今回のQ6 e-tronは、ラリーのために開発されたスポーツモデルではない。しかしテクノロジーの面では先進的だ。冒頭で触れた新しいBEV用プラットフォームをはじめ、高出力のパワートレイン(バッテリーやモーター)、凝ったサスペンションシステム、急速充電システム、デジタルインテリアなど、走りのための先進技術は数多い。

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大きなスライディングルーフも用意される。

私が乗ったモデルは「Q6 e-tron quattro advanced」。クワトロはやはりアウディの用語で、全輪駆動を意味し、BEVのQ6 e-tron quattroでは前後に駆動用モーターを1基ずつ搭載する。

「アドバンスト」は標準モデルに相当。足まわりなどがよりしっかりしたモデルを希望する人は、アドバンストの代わりに「S-line(エスライン)」が選べるようになっている。

一応書いておくと、「Q6 e-tron」というベーシックモデルも発売された。モーターをフロントにはもたない後輪駆動で、バッテリーの総電力量もやや抑えめ。 

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トランク容量は526リッターで、後席シートバックを3分割で倒せるうえ、最大容量は1529リッターとかなり機能的。

Q6 e-tron quattroが100kWhのバッテリーでトータル出力285kW、最大トルク580Nmであるのに対して、「RWD」(後輪駆動の意)と呼ばれるQ6 e-tronは185kWと450Nm。乗ってはいないけれど、数値的にはけっこういけそうだ。

Q6 e-tron quattroをドライブした印象をひとことで言うと、スムーズ。アウディではボディ構造を見直してステアリングホイール操作に対する動きをよくして「俊敏かつ安定した走行性能を実現」と謳っている。たしかにその通りで、快適な走行性で気持ちよく走る。

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12のモジュールと180のプリズムセルで構成され、総容量100kWhというリチウムイオンバッテリーを使う。

実際のサイズはコンパクトではないけれど、操舵性がよい。つまりステアリングホイールを動かしたときの車体の動きがよいので、操縦性がよくて運転しやすい。

速度が上がっていくと、このクルマの本領発揮なのだけれど、それは直線だけでなく、私が走った津久井湖周辺の屈曲路でも楽しさを感じさせてくれたので、ドライバーズカーとしてカバーする範囲は広い。

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日本国内アウディ販売店に設置されているChAdeMO方式の充電器(150kW)では約35分でを10%から80%まで充電。

問題があるとしたら、静かすぎること。それに速度が上がりやすいこと。要するにドライバーの自制心が試される。着実にアウディのBEVは進化しているのだ。

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デジタルOLEDリヤライトは車両周辺の状況に応じた専用のシグネチャー(警報シンボル)で道路使用者に注意喚起。

Q6 e-tron quattroには実は「可視化」されていない性能もある。5基の高性能コンピューターを使う「ハイパフォーマンス・コンピューティング・プラットフォーム」だ。インフォテインメントシステム、運転支援システム、さらに(将来の)部分的自動運転に至るまで、すべての車両機能を制御するという。

上記のような電子アーキテクチャーが、エンジン車、ハイブリッド車、BEVとパワートレインを問わず、これからの自動車の重要なカギとなってくる。トヨタが先ごろ発表した(発売はもうすこし先の)RAV4や、レクサスの新型ESなどでも、コンピューターによるネットワーク化が強調されているのと同様だ。 

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11.9インチのバーチャルコックピットプラスと14.5インチのMMIタッチディスプレイで構成されたダッシュボード。

もうひとつの特長が、コクピットのデジタル化。アウディでは「デジタルステージ」と名付けたMMIパノラマディスプレイとMMIパッセンジャーディスプレイで、大きなスクリーンがダッシュボードに据え付けられている。

画面をタッチすると搭載されているアプリのウィジェットが並ぶ。モニターでさまざまな機能を呼び出す。呼び出せる機能が多くて、ぱっと乗っただけでは到底覚えきれないほど。使いこなすのも、オーナーの楽しみになりそうだ。

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助手席にはアクティブプライバシーモード(ドライバーからは見えない)を備えた10.9インチMMIパッセンジャーディスプレイが用意される。

助手席には10.9インチのMMIパッセンジャーディスプレイを装備。これも先進的な雰囲気を醸し出している。雰囲気だけでなく機能性も高い。「アクティブプライバシーモード」によって、ドライバーの注意をひくことなく(見えない)、動画コンテンツのストリーミング再生、ナビゲーションルートの確認、充電ステーションの検索などができる。

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PPEの採用により広々としたスペース感覚と居住性が実現し、センタートンネルのないため、後席の快適性はとてもよい。

ベース価格は「Q6 e-tron」(シングルモーターの後輪駆動)が839万円、「Q6 e-tron quattro」(デュアルモーターの全輪駆動)が998万円。アダプティブエアサスペンション、スポーツサスペンションやスポーティな内外装の「S-lineパッケージ」、上質感がさらに高い「ラグジュアリーパッケージ」、MMIディスプレイや前席ヘッドレストレイント(ヘッドレスト)スピーカーなどを含めた「テクノロジーパッケージ」などオプションは多い。

アウディ Q6 e-tron クアトロ

全長×全幅×全高:4770×1940×1695mm
ホイールベース:2895mm
車重:2410kg
電気モーター×2 全輪駆動
駆動用バッテリー容量:100kWh
システム最高出力:285kW
最大トルク:F:275Nm、R:580Nm
一充電走行距離:526km(WLTC)
乗車定員:5名
価格: 998万円〜
問い合わせ: アウディジャパン
www.audi.co.jp/ja/