歴史的地区がそのまま大移動! 中国最大の移転プロジェクトが世界中で話題に

  • 文:山川真智子
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shutterstock_2635262893.jpg上海の張園 Photo:S-LISA/Shutterstock※写真はイメージです

地下に大型施設を建設するため、その上にある歴史的な建築群を丸ごと数百メートル移動させる大プロジェクトが上海で行われた。最新のロボティクス技術を活用していることに加え、歴史遺産の保存と都市開発のバランスを取る試みとして、国内外で注目を集めている。

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街区丸ごと移転、背景に地下開発

大移動が行われたのは、上海市静安区の張園歴史文化地区に位置する華晏里の集合住宅群だ。1920~1930年代に建てられ、煉瓦と木造建築からなる伝統的な石庫門(シクメン)様式が用いられている。総床面積4030平方メートル、重量約7500トンで、同じスタイルの建築物の中では上海最大。そして最も保存状態のよいものとされている。

オディティ・セントラルによれば、プロジェクトの背景にあるのは、地下開発計画だ。この歴史的建築群の下に、大型地下施設を建設するために、一時的に建物を移動させる必要があった。

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従来式では困難 ロボットで課題克服!

しかし、狭い路地が多い伝統的な中国の街並みに対応するには、従来のクレーンやレール方式では困難だったという。そこで採用されたのが、最新のロボティクス技術だ。チャイナ・デイリー紙によれば、課題を克服するため、建設チームは杭基礎の工事にミニロボットなどの先進技術を導入した。このロボットは遠隔操作で狭い出入り口や通路を通り抜けることができ、歴史的建造物内での基礎工事を可能にしたという。

地下を掘った後は、建築群全体を鉄筋フレームに吊り上げ、合計432台の小型歩行ロボットを使って1日10メートルのペースで移動させた。こちらも遠隔操作可能で、自立歩行、低クリアランスと有能。その小刻みなペースにも関わらず、建物や街区全体を安全に移動できたという。

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保存か開発か? 両立を実現

国営のテレビネットワーである中国国際電視台(CGTN)によれば、建築群の「歩行」は5月19日から開始され、6月7日に元の場所に戻されたということだ。この歴史的建築物群の下には、5万3000平方メートルを超える3層構造の地下空間に、文化・商業施設、駐車場、地下鉄への接続口も建設されるという。

ロボットの力を借りて、ビルを移動するのはこれが初めてではない。しかし今回のプロジェクトは、伝統を守りつつ都市機能を高めるという上海の都市戦略の一端が見れる、印象的な取り組みだと評価されている。

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ロボットで移動させる張園の建築群。 @shanghaidaily -Xより

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作業の様子。South China Morning Postより