フィアット初のハイブリッドモデル「600 Hybrid」を試乗! 初代から70年を経た、イタリアの国民車の実力

  • 文:Pen編集部
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フィアット初のハイブリッドモデル「600 Hybrid」。 photo: Stellantis

フィアット初のハイブリッドモデル「600 Hybrid(セイチェント ハイブリッド)」が、ついに日本上陸だ。600 Hybridは、初代「600」から続く丸みのあるかわいいデザインながら、快適性とテクノロジーを詰め込んだコンパクトSUV。伝統を継承しつつも、新しい試みが備わったクルマだ。キャッチフレーズは「かわいい顔して、しっかりモノ」だが、日本では500が有名過ぎて、600の実力はあまり知られていない。フィアットの歴史を振り返りつつ、600 Hybridの魅力を紹介する。

美しき国「ベル・バエーゼ」のシンボルになるまで

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フィアットトポリーノ。 photo: Stellantis

激動の19世紀、イタリア。7カ国が群雄割拠し、そして近代統一国家としての道を歩む「イタリア統一運動」の時代だ。フィアット創業の地は、その中心となったイタリア北西部のサルデーニャ王国の首都トリノ。統一運動を主導したサルデーニャの本拠地のため、1865年のローマ遷都後も、イタリアを牽引する産業都市として発展していった。

1899年、元騎兵隊の士官であったジョヴァンニ・アニェッリが、トリノで貴族や企業家有志8人とともに設立した会社が「Fabbrica Italiana di Automobili-Torino(トリノ・イタリア自動車製造所)」。略してFIAT(フィアット)と呼ばれる会社の誕生である。

19世紀末といえば、ドイツのベンツやフランスのプジョーなど、各国でも自動車産業の勃興期。「イタリアにも本格的な自動車産業を興そう」というフィアット創立の構想は、イタリアの自動車産業の始まりの合図だった。

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フィアット Nuova 500。 photo: Stellantis

フィアットは2度の大戦を経て、イタリアを代表する自動車会社として成長を遂げていく。その背景にあったのは大衆車の開発だ。ぜいたく品であったクルマを一般所得層でも手が届く値段にし、“一家に一台”に貢献。“トポリーノ(イタリア語でハツカネズミ)”の愛称で知られる「500(チンクエチェント)」(1936年)、『ルパン三世』でお馴染の「Nuova 500(ヌオーヴァ チンクエチェント)」(1957年)など、数々の名大衆車を生み出していった。

しかし、フィアットの大衆車には、もう一台代表と言える存在がいた。それこそが「Nuova 500」より2年早く開発された初代「600(セイチェント)」(1955年)である。

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フィアット 600。 photo: Stellantis

初代600の特徴は、コンパクトながら大人4人が乗れる室内スペースを確保し、フィアット初のリアエンジンを採用した点だ。トポリーノ(500)からの正統な進化系とも言え、600という名前も「500に100の魅力を足した」という意味が込められている。その上、最高速度95km/hという優れた走行性能を持った初代600は、その信頼性の高さから、生産が終了する1969年までに267万台余が生産され、まさにイタリア国民に愛された国民車となった。

今回のモデル「600 Hybrid」は、2023年に小型SUVとして復活したもの。現代のスタイリッシュな雰囲気を取り入れつつ、取り回しがしやすいサイズとデザインは継承している。600はベル・バエーゼの新たな国民車として再出発を果たしたのである。

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ひと目でフィアットとわかるエクステリア

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エクステリアには、大きな瞳、茶目っ気のある眼差し、微笑んでいるかのような口元と「見た人に幸福感を感じてもらえるような顔にしたい」というデザイナーの想いが込められている。 photo: Stellantis

フィアットらしさが全開のデザインだが、エクステリアは初代600から着想を得ながらも、「500e」のかわいらしさを融合。ヘッドライトからサイドへのフォルムやリアナンバープレート上部の形状、リアゲートの角度(36°)など、初代600のエッセンスが息づいている。

フロントフェイスは「BIG SMILE」をコンセプトに、ヘッドライトを目に見立てた笑顔のようなデザインとのことだが、子どもの眠たそうな目と形容することもできる気がする。しかし、それこそが愛嬌とも言える。デイライトがえくぼのようで、“かわいい顔”という表現は頷ける。

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ラゲッジスペースは、385Lの大容量でベビーカーもゴルフバッグもラクに収納可能。しかもハンズフリーパワーリフトゲート機能付きだ。 photo: Stellantis

ボディの後方ラインはフィアット伝統の丸みを帯びたデザイン。現代風のスタイリッシュなデザインを採用しつつも、初代600の最も特徴的な部分を残している。ボディカラーは、地中海の太陽のように鮮やかな「サンセットオレンジ」「スカイブルー」「ホワイト」に加え、600 Hybrid専用色として海をイメージした「シーグリーン」を含めた4色展開だ。

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La Primaは、アイボリーのダッシュボードとエコレザーシート(FIATモノグラム入り)を採用している。 photo: Stellantis

インテリアも、2スポークステアリングホイール、円形のメータークラスター、楕円形のダッシュボードパネルなど、初代を彷彿させる。ベースモデルはボディと同色のダッシュボードとブラック色のファブリックシートを採用している。

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「かわいい顔して、しっかりモノ」は侮れない

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試乗会場であるリストランテ桜鏡からは、雄大な富士山を拝むことができる。

今回試乗したのは「600 Hybrid La Prima」。600 Hybridのフルカスタム版であり、充実した安全装備やコンフォート機能が備わっている。今回走る道は、御殿場から箱根に向かう国道138号。ここは、カーブが多い山道だが、こうした機能を試すのに最適なコースだ。スタート地点である御殿場のイタリアレストラン「リストランテ桜鏡(さくらかがみ)」から箱根へ向けて、いざスタート。

運転開始から数分、気づいたのはステアリング性能の高さだ。ステアリングは軽く小回りが利くため、山道のくねくねとしたカーブの連続もストレスなく自然に曲がることができる。

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タイヤは精緻なダイヤモンドカットを施した18インチ アルミホイールを使用している。※La Primaのみ photo: Stellantis

エンジンは軽快ながらパワフルさを感じた。600 Hybridのエンジンはステランティスの標準エンジンであるEB2型1.2L 3気筒ターボエンジン。電動モーターのアシストにより心地よく加速するため、アクセルを踏み込めば、ぐいぐいと山を登っていくのだ。高速でも安定した落ち着きのある走りをするため、どんな道でもストレスなく走ることができる。

回生ブレーキはやや強めだ。アクセルのオン・オフだけで走るワンペダル・ドライブが可能なくらい回生力が強い。慣れないうちは少しギクシャクするかもしれないが、慣れてしまえば楽なものである。ちなみに回生力が強いという事はエネルギー回収が積極的に行われている証拠、地球にやさしいという事だ。また、アダプティブクルーズコントロールも標準装備のため、安全性を考えれば頼もしいとも言える。

こうした快適かつ安全性抜群な機能のおかげで、ストレスなく箱根の仙石原まで到着することができた。キャッチフレーズである「かわいい顔して、しっかりモノ」も納得の走り心地だ。

フィアットの新たなページを刻む600 Hybrid。イタリアの国民車として始まった600からアイコニックなデザインを継承しつつ、ハイブリッドを実現させた新時代の国民車と言えるだろう。ぜひ一度、乗ってみてほしい。

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600のDNAを受け継いだ600 Hybridは、家族の頼れるクルマになるはずだ。 photo: Stellantis
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エンブレムもelectricの“e”と“600”を組み合わせた新しいデザインに。 photo: Stellantis

 

フィアット 600 Hybrid

全長×全幅×全高:4,200×1,780×1,595mm
排気量:1,199cc
エンジン:直列3気筒DOHC(ターボチャージャー付)+電気モーター
システム最高出力:145hp
駆動用バッテリー:48V 897.9Wh
駆動方式:FF(前輪駆動)
燃費:23.2 km/L(WLTC モード)
車両価格:¥3,650,000(La Primaは¥4,190,000)
問い合わせ先:Stellantis ジャパン
www.fiat-auto.co.jp