サメが男性を襲う動画が拡散され、その残酷な様子にネットで戦慄が走る

  • 文:宮田華子
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TOP1.jpg@JNS_org - Xのキャプチャ画像

2025年4月21日午後、イスラエル北西部の港町ハデラの沖合で、泳いでいた男性がサメに襲われ死亡するという衝撃的な事件が発生した。場所は観光客に人気のあるオルガビーチ。事件の一部始終は浜辺からスマートフォンで撮影され、SNS上に投稿された映像は瞬く間に拡散された。

映像には、海上に頭を出したりもぐったりしながら格闘する男性の姿がはっきりと映し出されている。彼の近くを旋回するサメのヒレ、そしてみるみるうちに水が赤く染まっていく残酷な様子も記録されていた。

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「噛まれた!噛まれた!」と叫び、海に沈んだ男性

死亡したのはイスラエル中部ペタク・ティクバに住むバラク・ツァック(45歳)。4人の子を持つ父親であり、趣味で海洋生物の観察と映像記録を行っていた。当日もGoProカメラ、フィン、シュノーケルを装備して単独で海に入り、撮影を始めた。

亡くなったバラク・ツァック。@JNS_org – X

彼は泳いでいる最中にサメと遭遇し、突如襲撃されたとみられる。目撃者によれば、ツァックは「噛まれた!噛まれた!」と絶叫しながら両手を水面に叩きつけ、もがき続けていたという。その叫び声は海岸にいた人々にも届いた。周囲の海水はすぐに血で染まり、彼の姿は水中に引き込まれるようにして消えていった。

【視聴注意】サメに襲われたツァックをとらえた映像。海水が血で赤く染まる様子も分かる。@theinformant_X

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記録目的のダイビングだった

事件直後、一部の報道では「ツァックがサメをおびき寄せるために(餌用の)魚を持っていた」との情報が流れた。これに対し、妻のサリットはSNS上で「夫はただサメの姿を記録したかっただけであり、餌や魚など一切所持していなかった」と明確に否定している。

さらに、現場に居合わせた漁師からも、ツァックは距離を保ちながら撮影していたという証言が得られている。「彼はGoProのカメラ棒でサメを静かに払いのけていたが、執拗に近づかれた」「海岸に戻ろうとしていた矢先に襲われた」と証言している。

別アングルから撮影された映像。@GeopolitixM – X

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環境変化が引き寄せたサメの群れ

この地域では、近隣のハデラ川やアレクサンダー川で魚の大量死が報告されており、死魚や弱った魚を求めてサメが岸近くに集まりやすい状況となっていた。加えて、近隣の火力発電所から海に流れ込む温排水も、サメの滞留を促進する要因とされている。

現時点でサメの種類は特定できていないが、イスラエル沿岸の該当海域に生息するメジロザメもしくはマダラザメではないかと考えられている。通常この2種類のサメは人間を襲うことがないとされているものの、環境の変化、あるいは視覚的誤認によって攻撃に至る可能性があると、専門家たちは指摘している。

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浅瀬に現れたサメ─ 無防備な接近が引き起こした悲劇か

実はこの襲撃の直前、浅瀬にサメが出現していたことが複数の目撃者によって確認されている。ビーチにいた人々は、海岸線から数メートルの位置でサメのヒレが水面を切る様子を見て歓声を上げ、興味本位でスマートフォンを構えていた。

至近距離を泳ぐサメと人々。彼らが無事でよかったが、この後に悲劇が起こった。@incontextmedia – X

中には、サメに近づこうと水に入る者や、サメの尾を掴もうとしたり、オールで突こうとする者もいたとされる。これらの行動が、サメの警戒心や攻撃性を刺激した可能性もある。イスラエル自然保護協会は、「サメは保護種であり、接近や干渉は極めて危険で不合理な行為である」と強く警告している。

イスラエルにおいて、過去にサメによる致命的な襲撃はごく数例しか記録されていない。ハデラ市当局は事件後、オルガビーチを一時閉鎖し、安全対策と情報周知の強化に乗り出している。