
『奇想の系譜』で知られる美術史家、辻惟雄に師事し、日本美術への新たな視点を提示してきた山下裕二。彼が監修を務める展覧会が開かれる。タイトルは『日本美術の鉱脈展 未来の国宝を探せ!』。日本美術にはまだ“知られざる鉱脈”がある、という彼の思いから生まれた展覧会だ。
そのひとつが、昨年発見された伊藤若冲と円山応挙という江戸時代の二大スターの合作による屏風だ。若冲と応挙がそれぞれ一隻ずつを手掛けた二曲一隻屏風で若冲は竹に鶏、応挙は梅に鯉を描いている。若冲は2000年に京都国立博物館で開かれた『没後200年 特別展 若冲』で空前のブームとなった画家であり、応挙もたびたび展覧会が開かれる人気絵師だけれど、まだまだ未知の作品があるのだ。
このほかの出品作は縄文から現代までジャンルも多岐におよぶ。縄文土器は1990年代になってようやくいくつかが国宝に指定されたが、ほかにも国宝級の作品はたくさんある、と山下は言う。室町時代や江戸時代の絵画には若冲や応挙のほかにも見るべき逸品が多数ある。硬質な線で風景を描いた雪村周継(せっそんしゅうけい)や謎に満ちた生涯を送った式部輝忠(しきぶてるただ)らの室町水墨画はその一例だ。決してうまいとは言えないけれど味のある素朴絵も愛らしい。
陰影表現など西洋画の技法を取り入れつつも未消化ゆえに摩訶不思議な魅力を放つ絵画や、精密な超絶技巧による工芸は幕末・明治のもの。不染鉄(ふせんてつ)、牧島如鳩(まきしまにょきゅう)といった近代の画家の独特の表現も面白い。
かつては西洋美術に比べて見る人が少なかった日本美術もいまではブームともいうべき状況が続く。そこにはまだまだ宝の山が隠れている。そういった美の鉱脈を掘り起こし、「未来の国宝」を探してもらうのがこの展覧会の目的だ。日本美術への愛がまた一段と深くなる。
『日本美術の鉱脈展 未来の国宝を探せ!』
開催期間:6/21~8/31会場:大阪中之島美術館
TEL:06-4301-7285(大阪市総合コールセンター)
開館時間:10時~17時(7/18~8/30の金、土、祝前日は~19時) ※入場は閉場の30分前まで
休館日::月曜日(7/21、8/11は開館)、7/22
料金:一般¥1,800
https://koumyakuten2025.jp
※この記事はPen 2025年7月号より再編集した記事です。