バッテリー駆動車のひとつの頂点ともいえるのが、「メルセデス・マイバッハEQS680 SUV」。2024年10月に日本発売となったこのクルマには、先進技術、操縦性能、そしてぜいたく装備が満載だ。

全長5135mm、全高1725mmと堂々たるサイズ感。メルセデス・マイバッハのデザイン・アイデンティティのひとつである縦バーグリルがさらに存在感を強調している。一方、プロファイル(側面)を見ると、室内が広くて快適そうな居心地のよさを感じさせる。
メルセデス・マイバッハとメルセデス・ベンツは違うブランドなのか。そう思う人もいるかも。メルセデス・ベンツのひとつのブランドピラーがメルセデス・マイバッハで、より上質なリムジンのブランドだ。

メルセデス・マイバッハ「S580」の全長は5470mm、ホイールベースは3395mm。メルセデス・ベンツの「S580」は全長5210mm、ホイールベース3105mm。3982ccV型8気筒エンジン(最高出力370kW、最大トルク700Nm)は同一ながら、特に後席のスペースや装備で、メルセデス・マイバッハは上をいく。
今回のメルセデス・マイバッハEQS680 SUV(以下・EQS680)は、やはりぜいたく装備が多い。特に後席には専用センターコンソール、マルチコントロールシート機能、格納式テーブル、ウインドウシェイドなどを備えている。

全高がやや高めなぶん、室内の天井高も高い。空間的な余裕があり、グロスブラック仕上げのパネルにフローイングラインというシルバーの細いラインが入っているのも、アールデコのような精緻な仕上げを感じさせ、気分が盛り上がる。

EQS680は、ただし、後席ばかりが“居場所”ではない。たしかに後席は広くて豪華な上、乗り心地がいい。一方でドライバーズシートも、いい場所なのだ。つまり、運転が意外なほど楽しめる。

ごく低速で最大トルクが出るのはバッテリー駆動車の特長。余裕のあるサイズの車体だが、発進からずっと加速していくまで、重さはまったく感じさせない。ステアリングホイールを操舵した時の車体のすばやい反応ぶりも、軽快さを印象づける。

実際は5mを超える全長の、ちょっと迫力あるボディなのだけれど、操縦しているぶんには、ひと回りふた回りどころか、もっとコンパクトなスポーツSUV(この言い方、重複しているけれど)を操っている気になる。電子制御によるサスペンションシステムとステアリングシステム、それにモーターとブレーキなど、すべてが緻密にバランスされているのだ。
マイバッハとは、20世紀前半に存在したドイツの高級車ならびにエンジン製造会社。1909年にドイツで創業され、第二次大戦前までは“超がつく”高級車の分野で、メルセデス・ベンツと競合する一社だった。

創業者のウィルヘルム・マイバッハは、メルセデス・ベンツと縁も深い。メルセデス・ベンツは1998年までダイムラー・ベンツという社名だが、社名の一部である(ゴットリープ・)ダイムラーのために、19世紀後半に働いていたエンジニアがマイバッハだ。
マイバッハがクルマづくりを辞めた後も、ダイムラー・ベンツ社はマイバッハの商標権を保持。1997年に、Sクラスの上をいくモデルとして、全長6165mmの「マイバッハ62」と、5723mmの「マイバッハ57」のプロトタイプを、東京モーターショーで公開。2002年に市販に踏み切った。

いまのメルセデス・マイバッハは、いわば仕切り直しとして企画されたブランドで、2014年に後席スペースを延長したSクラスを発表。以降、先に述べたように、上級ブランドとしてラインナップを拡充している。
価格は2790万円。近い価格帯にあるバッテリー駆動のプレミアムSUVというと、BMWの「iX M60」(1788万円)、アウディ「SQ8 スポーツバックe-tron」(1492万円)、ポルシェ「マカン・ターボ・エレクトリック」(1525万円〜)などがある。ぜいたくさでいうと、EQS680が頭ひとつぶん抜け出ている感がある。

メルセデス・マイバッハ EQS680 SUV
全長×全幅×全高:5135×2035×1725mm
ホイールベース:3210mm
電気モーター×2 全輪駆動
システム最高出力:484kW
最大トルク:955Nm
乗車定員:5名
価格:2790万円
問い合わせ:メルセデス・ベンツ日本
www.mercedes-benz.co.jp