トヨタ自動車はSUV「RAV4」の新型を2025年5月21日、メディアに公開した。ランドクルーザーに連なるようなラギッドな外観とともに、より高効率になった新開発のハイブリッドシステム、それに「SDV」化が図られるなど、話題満載だ。

「この1台がまさかクルマの未来を大きく変えるとは」
発表会の壇上に登場したトヨタ自動車でデザインを統括するサイモン・ハンフリーズ取締役執行役員は、舞台の袖に並べられた歴代のRAV4を振り返り、1994年発表の初代について、上記のように語った。

たしかに初代の注目度はすごかった。コマーシャルのキャラクターに起用された若き木村拓哉のイメージとぴったりハマったこともあり、当時、筆者がトヨタから借りたRAV4で東京の街を走っていると、信号待ちで「RAV4ですね!」としょっちゅう声をかけられた。
「最初はニッチな商品でした。でも2代目、3代目が登場する頃には、世界中の人たちがRAV4を受け入れてくれたのです。(ところが)あらたなジャンルを切り拓いたが、それがメインストリームになってしまい埋もれてしまった」

チーフブランディングオフィサー(CBO)/デザイン領域統括部長の肩書きも持つハンフリーズ氏はそう前置きしつつ、「大胆で力強く、かつ、ワクワクしちゃう楽しさを表現した」と、第6世代になる新型RAV4のデザインを語った。
「SUVハンマーヘッド」とトヨタが名付けたコの字型のLEDランプを備えたフロントマスク、バンパー一体型グリル、大きく張り出したリアフェンダーなどが新型RAV4の特徴。

いま、さらにコンパクトなランドクルーザーの計画が自動車好きの話題を呼んでいるけれど、今回のRAV4をランドクルーザー350や同250と並べて置いてみても、ファミリーアイデンティティのようなものを感じる。見劣りもしない。

パワートレインは、ハイブリッドとプラグインハイブリッドの2本立て。プラグインハイブリッドシステムは新世代となり、バッテリーでの航行距離は150kmという。ハイブリッドもパワーが上がるとともに燃費の向上がうたわれる。
オフロード性能についても、トルクが太く、かつドライバーが制御しやすいモーターの特性を活かして、電動車だからこそ満足をしてもらうことを目指している、とはトヨタの弁。電動のクロスオーバーSUVの性能の高さは、すでにメルセデス・ベンツ G580 with EQ Technnologyが実証している。

さらにもうひとつ、今回のRAV4の注目点は、トヨタ初の“SDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)”として開発されたこと。グループ企業のウーブン・バイ・トヨタがデジタルプラットフォーム「アリーン Arene」を開発した。
RAV4では、音声認識システムがスマートフォンの使い勝手に近づいたなど、アリーンのメリットがあげられている。「速い・きれい・正確に」が目標だったと、開発者が教えてくれた。

もっとも重要なのは「安心・安全と、その先の交通事故ゼロをめざすこと」と、ウーブン・バイ・トヨタ代表取締役、隈部肇CEOが語る。
性能向上したカメラとレーダー、処理能力を上げたCPUとECU、それとデータ収集システムを組み合わせているのが、アリーンを使った安全技術。たとえば、近年ニュースで話題になることが多い追突事故でも、ユーザーの走行データを収集して、より深く分析。それををもとにソフトウェアをアップデートし、クルマでできる安全対策を実現していくという。

要するに、常に進化していくクルマ。それがSDVなのだという。RAV4をまず選んだのは「世界180の国と地域で販売されてる大きな市場をもっているクルマなので」と先の隈部CEO。大きな宣伝効果が得られるとともに、データ収集にも役立つ、ということだろうか。

日本では「コア」というベースモデルをはじめ、専用グリルやルーフレールなどでオフロード感を強めた「アドベンチャー」、それにパワーアップやシャシーや足回りを強化したスポーツ仕様「GR SPORT」の3モデルが予定されている。販売は2025年内に開始とのことで、価格は未発表だ。