毎日乗れる「ポルシェ 911 カレラ」の黄金比を、名店のカレーにたとえるなら【第221回 東京車日記】

  • 写真&文:青木雄介
Share:

 

P蜀咏悄蜈・遞ソ_0428_p160-161_騾」霈会シソ霆頑律險・・・jpg.jpg
新型は乗り心地を損なうことなく、ボディコントロールを高める改良が中心になった。

ポルシェの新型「911 カレラ」に乗った。モデルは現行「992」型のバージョン2ですよ。このバージョン2では911初のハイブリッドであるGTSが話題だけど、まずは素の「カレラ」に乗りたかった。カレーでいえばルーそのもの。チーズを混ぜたり、トンカツやコロッケをのせたりしても、それは役付きという名のエクストラ。まずはベースとなる新味を確かめなければならない。

P蜀咏悄蜈・遞ソ_0428_p160-161_騾」霈会シソ霆頑律險・2.jpg
インテリアはスタータースイッチや、中央のレブカウンターなどデジタル化が進んだ。

そんなスパイシーなクルマづくりが売りの名店ポルシェ。新型「911」の味わいはやはり格別だった。これこそ、毎日食べられるカレーもといスポーツカー。「992」型は、革命的だった先代の乗り味を継承しつつハイブリッドシャシー構造によるこれ以上はない剛性感に、洗練さと習熟の手が加えられていた。バージョン2ではターボと足まわりにも手が入り、よりよいバランスを追求する求道精神に磨きをかけている。 

エンジンはよりパワフルになり、自然吸気エンジンのようによくまわる。路面の追従性はさらによくなり、ステアリングの解像度は増している。バージョン2はモデル後期型の例にもれず、見直された音や動的質感の高さをベースに、ぐっと原点回帰をしている。

P蜀咏悄蜈・遞ソ_0428_p160-161_騾」霈会シソ霆頑律險・3.jpg
オプションのエアロキットはスポーツデザインフロントバンパー、サイドシルパネル、軽量の固定式リアウイングの3点セット。

なぜ「911」を選ぶのか?その問いかけにだって直球で答えることができる。水平対向6気筒のソウルフルなサウンドに正確無比なステアリング、しっかりとした剛性感に、思わずドライバーを笑顔にしてくれるブレーキ。峠に行くと、あらゆる素材の黄金比みたいなバランスのよさに狂喜するよね。思いきりアクセルを踏めるし、車両が全身に情報を伝えてくるダイレクトな操作感が愉しい。そしてなにより、リアエンジンリア駆動(RR)のキャラクターが前面に押し出されているんだ。

PSM(横滑り防止機能)を切れば、ターンインで鋭くノーズを入れつつ、アクセルとリア荷重でコーナリングするようなRR独特の挙動を味わえる。この挙動がトリガーになって、過去のモデルたちを走馬灯のように思い出すこともできるだろう。

P蜀咏悄蜈・遞ソ_0428_p160-161_騾」霈会シソ霆頑律險・・・jpg 2.jpg
ホイールはオプションの21インチ。標準ブレーキも大型化。 

先代の「991」型はもちろん、「ナローポルシェ」や「930」「964」といった名モデルがフレームに息づいていて、当時にはなかったパワーや動的質感、安定感に結実している。その連綿としたDNAの記憶は60年分。そして「俺が答えだ」と当代当主の新型「カレラ」は胸を張る。こんなスポーツカーが他にあるだろうか?

嗚呼、「このカレーを毎日食べたい」って思ったね。差しの入った高級和牛入りのターボや、激辛最高レベルな「GT3 RS」は毎日食べるのはキツいかもしれないけれど、素の「カレラ」はスポーツカー好きにとってはもはや飲み物ですよ(笑)。そしていちばん重要なことなんだけど、このクルマは911という現代のインダストリアル・プロダクトの傑作を、最もフラットに語っているんだ。

フライラインのなだらかに下るルーフや、美しいカーブを描くリアフェンダーに偉大なレガシーが刻み込まれている。そして流行りのカラーを纏い、いつものように街の中に溶け込むことができる。よく見ると、それは2025年の「911 カレラ」。この距離感が最高なんだよね。

P蜀咏悄蜈・遞ソ_0428_p160-161_騾」霈会シソ霆頑律險・5.jpg
標準は格納式スポイラーを装備。ナンバープレートの位置を高めにし、すっきりとした構造のリアバンパーを採用。

ポルシェ 911 カレラ

全長×全幅×全高:4,545×1,850×1,300㎜
排気量:2,981cc
エンジン:水平対向6気筒DOHCツインターボ
最高出力:394ps/ 6,500rpm
最大トルク:450Nm/ 2,000-5,000rpm
駆動方式:RR(リアエンジン後輪駆動)
車両価格:¥16,940,000~
問い合わせ先/ポルシェ コンタクト
TEL:0120-846-911
www.porsche.co.jp

※この記事はPen 2025年6月号より再編集した記事です。