
チンパンジーが森の中で“お酒入りフルーツ”をみんなで分け合っている——?そんな驚きのシーンが西アフリカで激写され、科学者たちの間で話題になっている。「まさか…乾杯してる?」とつい想像してしまうが、実はこれ、人類の“飲みニケーション文化”に迫る深い謎を秘めた、進化学的にとっても重要な瞬間という。
その瞬間が捉えられたのは、ギニアビサウのカンタンヘス国立公園。研究チームが森の中に仕掛けたモーションセンサー付きカメラが、発酵してエタノール(お酒の成分)を含む果実を、チンパンジーたちが10回にわたって仲良く分け合う様子を捉えた。動画には、チンパンジー何匹かが果物をかじったり、仲間と分け合っている様子が映されている。
問題の果物は「アフリカン・パン・フルーツ」という見た目は地味だが発酵パワー抜群の果物で、自然に放っておくと“ほんのりアルコール入り”になることで知られているそうだ。
---fadeinPager---
そのアルコール度数、0.6%。でも油断できない…
研究チームによれば、このときの果実の最大アルコール度数は0.6%。人間のビールに比べると少ないように感じるが、チンパンジーの主食の6〜8割は果物。つまり、“ちょっとずつたくさん食べる”というパターンで摂取すれば、結構なアルコール量になる可能性もあるという。それでも研究者たちは「この程度の濃度では、チンパンジーが酔っぱらうことはなさそうだ」と見ている。
食べ物のシェア=進化のヒント?
この“果実パーティー”が注目される理由のひとつが、チンパンジーたちがこの発酵果実を分け合っていた点。エクセター大学のキンバリー・ホッキングス氏は、「チンパンジーは常に食べ物を共有するわけではない。だからこそ、この行動は非常に興味深い」と話す。
また、同大学の共著者アンナ・ボウランド氏も下記のように話している。
「人間がアルコールを摂取すると、ドーパミンやエンドルフィンが分泌されて幸福感やリラックス効果が得られることが知られています。そして、人間は伝統的に宴や乾杯などを通して、アルコールを“社会的に共有”してきました」
つまり今回の発見は、霊長類にも“ごちそうを分け合う”という社会的な振る舞いの起源が存在する可能性を示しており、まさにチンパンジー版“飲みニケーション”があるかもしれないと話している。
---fadeinPager---