メルセデス・ベンツ日本が「メルセデス・ベンツ GLC 220d 4MATIC」シリーズに「Core（コア）」なるモデルを追加設定し、2025年3月に発売した。

ベースになった「GLC 220d 4MATIC」と同クーペのコア（基本的）な部分はそのまま、装備を少しだけ簡略化して価格を抑えたモデルだ。乗ってみると、走りもよくクオリティ感も高く、よい出来映えだ。

昨今の自動車メーカーは「デザインでどう個性を出すかに苦労している」と思われるフシがある。特にテスラが登場し、中国の自動車メーカーが同様の、なめらかで有機的なボディデザインに追随してから、特に電気自動車の外観は似てきている。

一方で従来の自動車メーカーは、自社のデザイン・アイデンティティを守りながらも、グリル、ロゴ、シルエット、キャラクターラインと、新しい時代に適したデザインランゲージを探している。

なかでもとりわけ対照的な頑張りを見せているのが、メルセデス・ベンツとBMWだ。BMWがキドニーグリルの扱いをはじめ、印象的な強い表現を採っているのに対して、メルセデス・ベンツは、従来からの質感のある“かたまり感”で、消費者へのアピールを図っているように思える。

今回乗った「GLC」も同様だ。SUVながら、セダン群と共通性を感じさせるボリューム感を持つ面づくりが特徴的。高級ブランドのシューズや伝統的なバッグのように、この先も古びないと思わせるところに魅力が感じられる。

私が乗ったのは「GLC 220d 4MATIC Core」で、大きめの荷室を特徴とする。同じシャシーながらよりスポーティな雰囲気のクーペと区別するため「SUV」と呼ばれることもある。

ドライブして印象的なのは、エンジンのよさがひとつ。1,992ccのディーゼルエンジンはマイルドハイブリッド化されていて、発進時や急な加速時にモーターがトルクを上積みする。そのため、軽くアクセルペダルを踏んだだけで実にスムーズに加速していく。

加速していく時の好印象は、エンジン自体のなめらかな回転ぶりとサウンドで、よりよい方向に上書きされる。「これディーゼル？」と回転計を二度見してしまったぐらい、さっとエンジン回転は上がり、乾いたサウンドが耳に心地よい。

こんなエンジンをつくってしまうメルセデス・ベンツの技術力とBEVの時代の到来を前にしつつ、いまだにエンジンをあきらめていないと感じさせる情熱のようなものに感心してしまった。

エンジンがいいだけでなく、ステアリングホイールを操作したときのフィールのよさもセダン並み。敏感すぎず、かといって鈍でもなく、メルセデス・ベンツの「Cクラス」や「Eクラス」に乗ったことのあるひとならお馴染みの、いいかんじのフィーリングが「GLC」でも実現している。

当然、サスペンションシステムの設定や、シャシーの剛性感など、バランスがよくとられていて、「GLC」がもっとも売れているメルセデス・ベンツ車と聞いて納得してしまった。上には「GLE」や「GLS」があるものの、セダンと同様、ドライビングを中心にもっともよい部分は、ちゃんと盛り込まれているのだ。

サブネームの「Core」だが、ネーミングの意味は、格になる操縦性や安全性や利便性は省略されていない、ということだそうだ。日本法人の担当者はそう説明してくれた。

価格を抑えるための変更点としては、車体色を3色に限定、室内色をブラックに限定（ただし「AMGライン」を選ぶと2色）、ダッシュボードとドアのトリム材を変更、オーディオの簡略化、さらにオプション数の簡略化、といったものが挙げられる。 

パワートレインに変更はない。145kWの最高主力と440Nmの最大トルクを発生する1992cc4気筒ディーゼルエンジン、9段オートマチック変速機、前後輪で45対55のトルク配分をもつ全輪駆動システムは、標準モデルと同じ。運転支援システムや、オーディオ以外のインフォテイメントシステムも同様だ。

四輪駆動システムは、前輪45に対して後輪55の割合で駆動トルクを配分する。このあたりも、セダンに準じた気持ちよい操縦性を感じさせる理由なのだろう。ちなみにドライブモードにはオフロードモードも用意されている。スキーなどの時に使えるかもしれないが、本格的なオフロードにこのクルマで行く人はいないだろう。

燃費はリッターあたり19.1kmと良好。ディーゼルエンジンとマイルドハイブリッドの恩恵はここにも出ている。

標準の「GLC 220d 4MATIC」が876万円。今回のGLC220d 4MATIC  Coreは819万円。ちなみに、GLC220d 4MATICクーペは916万円で、同Coreは866万円。Coreで選べるオプションは2つ。ひとつは20インチの専用アルミホイールなどを持つ「AMGラインパッケージ」、もうひとつはパノラミック・スライディングルーフだ。