セダンの未来を切り拓く。レクサス新型「ES」上海で世界初公開!

  • 文:小川フミオ
  • 写真:Lexus International
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レクサスが新型「ES」を2025年4月に発表。舞台として選ばれた自動車ショー「オート上海」において「セダンの概念をアップグレードする」という言葉とともに、ベールを脱いだ。

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手前が米国仕様の「ES500e」で、奥が中国仕様の「ES350e」。

SUV流行りは中国でも同様だが、同国におけるレクサス車の販売において半数以上を占めるベストセラー、レクサス「ES」のフルモデルチェンジ。

実車を目にしてまず印象的だったのは、車体のサイズ感と、大胆な造型美。全長は5,140mmと、レクサスのフラッグシップ「LS」に迫る。ボディは前と後ろをふたつのかたまりと考え、それが嵌合(かんごう=噛み合う)しているデザインテーマが採用されている。

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フロントドアのあたりで前と後ろのかたまりが噛み合うイメージ。

ボディ側面に視覚的アクセントを与えているピアノブラックのドアモールの採用も、大胆に見える。レクサスのデザイナーとしては、「バッテリー駆動のEV仕様も設定され駆動用バッテリーを床下に搭載したため全高が100mm高くなったが、そこでバランスを崩さずプロポーションの美しさを追求した点に注目してほしい」と語った。

しかし、自動車のデザインとは、単にデザイナーの美意識でカタチを決められるものではない。駐車場や取りまわしなどユーザーの使い勝手をはじめ、法規、社内のアセット、つまり流用できる部品など多くの要件がある。

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プレスカンファレンスで報道陣に挨拶する千足チーフエンジニア(右)と熊井プロジェクトチーフデザイナー(手前)。

「開発陣は『セダンっていいよね』と言ってもらいたくて、ぎりぎりまで努力しました」。デザインを統括したレクサスインターナショナルの熊井弥彦プロジェクトチーフデザイナーはこう語る。(話は逸れるがこの方、私が最高のデザインの1台だと思っている2〜4人乗りのコンパクト「トヨタiQ」(2008年発表)も手掛けている)

「車体全幅は従来型プラス55mmの1,920mmまで拡大。前後いずれかから見たときに、しっかりしたスタンスを感じてもらえるようにしたところが、こだわりです」と続けた。

ホイールベースはプラス80mmの2,950mmにして、全長はプラス165mmの5,140mm。ルーフは前後長は長めでトランク部分は短く見える、いわゆるファストバックスタイル。だが、ルーフのラインは後ろにいくにしたがって、なだらかに下降しているように見せることで、後席の存在感をやや薄めているのも特徴だ。

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独立したトランクを持つファストバックスタイルで、リアから見ると左右輪が大きく拡がっているスタンスがわかる。

「ホイールベースを延ばすなどしてパッケージングを見直したことで、LSより広い後席空間を実現できましたが、基本的にはドライバーズカーとして運転を楽しんでもらうことが前提です」

そう語るのは、新型「ES」の開発を指揮したレクサスインターナショナルの千足浩平チーフエンジニア。

キャラクターをスポーティに振ることもできたが、レクサスではあえて新型「ES」を“ゆとりをもって操縦できる”クルマとして完成させたそうだ。

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物理的なスイッチを見えないようにした斬新の意匠(写真は米国仕様)。

「中国ではセダンは”皇帝の乗りもの”という意味。SUV需要が多いといっても大きな市場を持っています。新型ESは室内空間を広くしてファミリーカーとして使っていただきたいので、ドライバーが余裕をもって運転できる操縦性があれば、同乗者も安心して快適に乗っていられると考えています」

とは、千足チーフエンジニアの言葉だ。

セダンはカタチだけでなく、低重心、操縦安定性、静粛性など、優れた点が多い。それを踏まえて「新型ESでセダンのよさを見直してほしい」という開発陣の言葉から、日本で“再会”するのが楽しみになった。

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レクサスのフルラインナップとさまざまなデジタルアートを組み合わせたレクサスブース。