いま、“英国泡”がアツい! ロイヤルファミリー御用達「ナイティンバー」を徹底分析

  • 文:安齋喜美子
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「ティリントン・シングル・ヴィンヤード 2016」ピノ・ノワール73%、シャルドネ27%。レモンや青リンゴ、ラズベリーの香りとバラや芍薬などフローラルなアロマ。口に含むとフレッシュな酸味とオレンジピールのニュアンス。8年という熟成からくるビスケットの風味も印象的。魚や鶏肉などと好相性。750ml/¥33,000 ※6月より発売予定。

いま、ワイン通たちが注目するのがイングリッシュ・スパークリングワインだ。イギリストップとも評される「ナイティンバー」の醸造責任者が来日、その深い魅力とイギリス初の単一畑から生まれる新しいキュヴェについて語ってくれた。

エリザベス2世を魅了した”英国の泡”

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単一畑の「ティリントン・シングル・ヴィンヤード」。土壌は緑砂と石灰質。南向きの傾斜した畑では、ミネラル豊かなブドウが育つという。 

イングリッシュ・スパークリングワインが進化したのは、ここ20年ほどのこと。長年イギリスでは冷涼な気候がブドウ栽培に適さないとされてきたが、気候変動を受けてブドウが完熟するようになったのだ。主要産地であるウエスト・サセックス州やケント州などの南東部はフランス・シャンパーニュ地方と同じ白亜質土壌で、ミネラル豊かでピュアな酸味のブドウを生み出している。

そんなイングリッシュ・スパークリングワインを牽引するメゾンが、ナイティンバーだ。上品で深みのある味わいと洗練されたルックスでファンを増やし続けている。ロイヤルファミリーもしかりで、エリザベス2世の在位を祝賀する2002年のゴールデン・ジュビリー(在位50周年記念式典)、2012年のダイヤモンド・ジュビリー(在位60周年記念式典)にも用いられた。また、ホテル・サヴォイでも供されるなど、”キング・オブ・インクリュッシュ・スパークリングワイン”として存在感を放っている。最大の魅力は、シャンパーニュに引けを取らない味わいであること。ジェーン・バーキンやシャーロット・ランブリングのようなフランスのアリュールを纏うイギリス女優のようで、独特の個性を感じさせる。 

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“美しい田舎”を思わせるイギリス的な趣きのワイナリー。スプリッグス氏によれば、ここ10年で家族経営の生産者は毎年増えているが、”大手”と呼べるワイナリーはまだ15社ほどだという。

ワイナリーの歴史は、1988年にこの地にブドウが植樹されたことが始まり。1086年頃から木造家屋、あるいは小さな木材をプランテーションと言う意のナイティンバーと呼ばれるようになった。さらに16世紀には、ヘンリー8世が所有していたという由緒ある土地でもあるのだ。ワイナリーはこの歴史を大切に思い、名を冠したという。

醸造責任者のシェリー・スプリッグスは、ナイティンバーの造りについてこう語る。

「ナイティンバーの特異性は、シャンパーニュよりさらに手をかけた造りにあると、私たちは自負しています。ブドウの搾汁比率はシャンパーニュより収量を抑え、熟成はシャンパーニュのノン・ヴィンテージで最低15カ月のところを私たちは2年以上という時を費やします。シャンパーニュは素晴らしいお酒です。だからこそ、私たちはその上を目指さなくてはいけないと考えています」

イングリッシュ・スパークリングワインは、PDO(原産地保護)とPGI(地理的表示保護)に指定されいる。多くのワイン産地と比較すると、イギリスはまだ比較的歴史が浅いため、多くの国ほど厳しい規制が少ないのが現状。PDOに属するナインティンバーは、9カ月間の澱熟成が必要で、ピノ・ノワールやシャルドネをはじめとする特定ブドウ品種から厳選している。そのため、イギリスでは、ナイティンバーをはじめ、個々のワイナリーが高い基準の醸造規定を自ら課すことによって、高品質のワインをつくりだしているのだ。

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イギリス初! 単一畑のスパークリングワインが誕生

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醸造責任者のシェリー・スプリッグスはカナダ出身。「父がイギリス人なので、文化や習慣に不安はありませんでした。実は、ナイティンバーは父の英国土産で初めて飲んで、『イギリスでこんな美味しいワインが造れるの?』と驚きました」と笑顔を見せる。

今年6月頃に発売予定の「ティリントン・シングル・ヴィンヤード 2016」は、スプリッグス氏の高い理想から生まれたキュヴェだ。レモンや白い花の香りとローズウォーターのニュアンスを持つこの美しいワインは、イギリスで初めて単一畑から生まれた特別なもの。11カ所ある自社畑をスプリッグスが収穫前に観察していた時にティリントン・ヴィンヤードのピノ・ノワールが極めて秀逸であることに気づき、この区画のブドウのみで新たなキュヴェをつくることを決意したという。ふくよかな果実味と厚みのあるミネラル、そして清らかな酸が溶け込んだ心に残る1本だ。

飲んでいて楽しいのは、さまざまなシチュエーションが浮かんでくることだ。洗練されたレストランでガストロノミックな一皿と、ラグジュアリーホテルのアフタヌーンティーでゆったりと、あるいは、馴染みの鮨屋に持ち込むのも一案だ。イギリスは、産業革命に始まり、ファッション、音楽などで多様なトレンドを生み出してきた。ナイティンバーがワインの世界でどんな革命を起こすのか、これからが楽しみだ。

ナイティンバー

https://nyetimber.com/jp
TEL:0120-565-580(明治屋)