
世界初、そしておそらく唯一の野菜の楽器だけで音楽を奏でるオーケストラが、27年間で344回のコンサートを行い、「野菜オーケストラによる最多コンサート」というギネス世界記録を獲得。そのユニークな存在感を世界に示した。
野菜でつくった楽器だけで音楽を奏でるオーケストラ、その名も「ベジタブル・オーケストラ」。この異色の団体は、1999年にオーストリアのウィーンで結成され「すべては冗談から始まった」と創設メンバーのマティアス・マインハーターは2019年にBBCに語っている。
当時、音楽家たちがウィーンで開催されたパフォーマンス・アート・フェスティバルへの参加が決まっており、「音楽を演奏するのに一番難しいものは何だろう?」とブレインストーミングをしていた最中、彼らは同時にスープを作っていたという。そして、そのスープの材料である野菜に目をつけ、一つのアイデアが次々と生まれていったそう。
進化し続ける野菜楽器
現在、11人編成のベジタブル・オーケストラは、常に新しい楽器を発明し続けており、ニンジンのリコーダー、キュウリのフォン、大根のバスフルート、ナスのパーカッション、ネギのバイオリンなど、特別に作られた楽器で音楽を奏でている。
しかし、作った楽器は6時間程度しかもたず、演奏前に毎回新鮮な野菜を彫り直さなければならない。そのため、彼らは演奏のたびに楽器作りから始めるという、他のどのオーケストラにもないルーティンを持っている。
「私たちは、他の楽器では簡単に出せない音を出すことができると信じています。その違いがわかるでしょう。時には動物のように、時には抽象的な音のように聞こえます」とオーケストラはウェブサイトで説明。
実際に彼らの音楽を聴いた人は、そのユニークな音色に驚かされることが多く、野菜が奏でる音は、既存の楽器では再現できない不思議な響きを持ち、エレクトロニック、ロック、パンク、クラシックといった多様な音楽ジャンルをミックスした独自のスタイルを確立しているという。
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サステナブルな音楽活動
さらに彼らは環境に配慮した活動も行っている。コンサートの後には、楽器の準備で余った野菜を使ってスープを作り、観客に振る舞う。また、演奏を終えた楽器は有機ゴミとして処理され、無駄を出さないサステナブルな取り組みを続けているのだという。
彼らの音楽は、「どんなものからでも音楽は生み出せる」というメッセージを世界に伝えている。「ほとんどすべてのものから音楽を作ることができ、それぞれのものは非常に特殊な音響特性を持ち、複雑な音の世界を表現しています。ひとつひとつのものが、新たな視点を開くためのツールになり得るのです」と、語っている。
そんな彼らに、ギネス・ワールド・レコーズは「オーケストラのメンバーはベジタリアンなのか?」という質問を問いかけた。すると、「いいえ、そうではありません。二度と聞かないでください。この質問は300万回聞かれました」と答えたという。
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